Cinema No. 344

April 2006

看上去很美

littleredflowers.jpg中国映画、張元監督作品、「看上去很美(英題:Little Red Flowers)を観た。映画館で見たのだけども、子供と見る映画なのかやたら館内がうるさかった。上映中に携帯電話が鳴っても平気で出るし。しかしそれ以上に集中することが難しい内容だった。この映画、ストーリーというものが無い。中国のちょっと昔の幼稚園の日常を、主演の男の子視点でただ延々と描いていくスタイルなんだけども、物語に「展開」というものがない。園児ならではの可愛さや憎たらしさを描いているので、それなりにほほえましく、笑えるのだけど、そして僕の中国語理解力を差引いても、それ以上を得るのが難しかった映画。主演の男の子がかなりいい演技をしているんだけど、泣いているシーンなんて迫真の演技かと思っていたら、あとで人に聞いたら、台本通りに泣かない場合は監督がひっぱたいてリアルに泣かしていたらしい。

好み評価:☆

Memoirs of a Geisha

sayuri.jpgチャン・ツィイー、渡辺謙主演、ロブ・マーシャル監督作品、「Memoirs of a Geisha(邦題:Sayuri)」を見た。色々と物議をかもした作品だけど、個人的にはかなり高得点です。舞台は第二次世界大戦頃の京都、登場人物は殆ど日本人なので、ハリウッドのトップスター達をふんだんに使って集客する、という類のプロモーションが出来ない。そういうわけで、主演女優にチャン・ツィイーを置いたってのはかなり妥当なキャスティングと言える。残念ながら日本には彼女に匹敵するスター性を持った国際女優はいない(小雪や栗山千明も頑張ってはいるがスターとは言えない)。ヒーロー役のKen Watanabeはその資格有り、というわけだ。

でもそれにしたって豪華な製作陣だ。製作はスピルバーグ、監督と美術はアカデミー賞受賞経験あり(シカゴ)、劇中のバイオリンソロはイツァーク・パールマン、チェロはヨーヨー・マ。日本映画界からも、謙さんの他に役所広司、桃井かおり、工藤夕貴等が参加。小百合を妬む先輩舞妓(というか劇中では花魁にしか見えない)にはチャン・イーモウ作品でお馴染みのコン・リー、そして小百合の師匠役にかつてのボンドガール、ミシェル・ヨー。ハリウッドのトップスターは出なくとも、アジア勢的には最強の布陣である。これキャストしたのは、ラストサムライでもキャスティングを担当した奈良橋陽子という人らしいが、相当なりふり構ってない感じがして好感を持てる。コン・リーなんて、チャン・ツィイーよりちょっと年上のお姉さん舞妓という役で、実際本当に艶やかで綺麗なんで一瞬年齢を忘れさせられるが、この人40歳過ぎてるはずです。何年か前に見たチャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」では田舎のおばちゃん役をやってるが、あれだって10年以上前の映画。それがこんな妖悦な芸者さんの役ができるなんて、女優業恐ろしすぎる。でも、ミシェル・ヨーしかり、ちょっと年齢に無理があっても、大女優を持ってきたかったんだろう。メインキャストに新人を使ってないように、絶対はずしたくなかったんだろうな。主演に中国人を持ってきたおかげで中国では上映禁止になってしまったのは誤算だっただろうけど(興行的には失敗だけど、海賊版で相当流通してるので、観て貰うという観点では全く問題なし)。ただ、小百合の幼少時代の役を演じた大後寿々花。この子の演技は光ってたな。英語、ってのがきつかったけど。英語と言えば、桃井かおりの英語が何言ってるか全然わからなかった・・・字幕が必要です。舞台は日本で周りもみんな日本人で、挨拶とかは「こんにちは」なのに、なぜみんな拙い英語で話すのか違和感ありまくりで慣れるまで見辛い。カタカナ発音で「ウェアイズマイシスター!」とか叫ぶんだけど無理がありすぎ・・。それから、工藤夕貴。あまりにぶっちゃいくな役なんで(その名も"Pumpkin")、エンドロールで名前見るまで分からなかった(笑。最後にスクリーンで見たのは「ヒマラヤ杉に降る雪」だったけども、英語上手くなったなー。

sayuri2.jpg内容に関しては、非常に日本の美意識に対する愛情を感じます。アメリカ人が中国人を主演において撮った映画、というだけで嫌に思う日本人の方もいるかと思うけど、せいいっぱい日本の美しさを描こうとした印象を受ける。舞妓と花魁がごっちゃになっていたり、舞いが歌舞伎っぽかったりとか、日本人からしたら指摘したくなる細かいつっこみはいろいろとあるのだろうけど、映画としての完成度が高い。映像は、ホントにもう、初めから最後のワンシーンまで、とにかく美しい。チャン・ツィイーも、相当訓練したんだろう、まさに芸者=動く芸術という美しさです。ちょっと代わりが務まる日本人女優が思いつきません。原作は実在の人物の伝記的な作品らしいけど、物語としての脚色を経て、結構切ない内容に仕上がってます。最後は恋愛モノとしてもジーンときた。だけど、やっぱりこれはストーリーよりも芸者の美しさと誇りと悲しさ、そして京都の風景の美しさを見る映画です。是非、世界中の人に見てもらって、日本にこんな文化があったことを知ってもらいたい。2時間半の長さに耐えられる人には、かなりお勧め。

好み評価:☆☆☆☆

The Human Stain

humanstain.jpgアンソニー・ホプキンズ、二コール・キッドマン主演、ロバート・ベントン監督作品、「The Human Stain(邦題:白いカラス)」を見た。プレビューで見たときから気になっていた一作。期待通りの重厚な人間ドラマだった。見終わってから知ったのだけど、原作はピューリッツァー賞を受賞しているらしく、読んだ人に言わせるとやはり小説版のほうが厚みがある話になっているとか。でもこの映画も十分見せてくれた。ホプキンズは見ての通り白人なんだけど、劇中の設定では彼は実は黒人の家庭に生まれていて、どういうわけか彼一人だけが白い肌を持って生まれてきたということになっている。その彼の苦悩を、養父の性的虐待、夫の暴力、自らの過失による子供との死別、というこれまた大変な苦悩を背負った女性(キッドマン)との出会いと生活から描いていくというプロット。キッドマンは34歳のジャニターという役柄で、みずぼらしい格好の粗野な女性を演じている。にも関わらず、その美貌がほとんど色褪せていないのが凄い(そしてちょっとリアルじゃない)。
原題は「The Human Stain」、劇中の直訳では「人間の瑕」とされているが、邦題の「白いカラス」ってのはちょっと俗っぽいけども主人公達の苦悩を端的に表していてなかなか秀逸だと思う。

それにしても役者の演技レベルがなんて高い作品だったろう。日本の俳優もこれくらいの演技見せてくれたらもっと邦画が面白くなるのにな・

好み評価:☆☆☆

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