Cinema No. 344

中国

看上去很美

littleredflowers.jpg中国映画、張元監督作品、「看上去很美(英題:Little Red Flowers)を観た。映画館で見たのだけども、子供と見る映画なのかやたら館内がうるさかった。上映中に携帯電話が鳴っても平気で出るし。しかしそれ以上に集中することが難しい内容だった。この映画、ストーリーというものが無い。中国のちょっと昔の幼稚園の日常を、主演の男の子視点でただ延々と描いていくスタイルなんだけども、物語に「展開」というものがない。園児ならではの可愛さや憎たらしさを描いているので、それなりにほほえましく、笑えるのだけど、そして僕の中国語理解力を差引いても、それ以上を得るのが難しかった映画。主演の男の子がかなりいい演技をしているんだけど、泣いているシーンなんて迫真の演技かと思っていたら、あとで人に聞いたら、台本通りに泣かない場合は監督がひっぱたいてリアルに泣かしていたらしい。

好み評価:☆

童夢奇縁

tongmeng.jpgアンディー・ラウ(劉徳華)主演の香港映画、「童夢」を見た。義理の母と暮らすのが嫌で、何かあるたびに家出をしては父に連れ戻される12歳の少年が、ある日成長を速める薬を開発した怪しい科学者と出会い、その薬を使って完全な家出を試みる。大人の姿になった少年が、普段は見れない視線で人と接し、成長していくファンタジー。大人の姿だけど中身は12歳のあどけない少年という役をあの渋いアンディー・ラウがこなす。演出も斬新ではないが結構凝っていて、映像もとても綺麗。アンディー・ラウの特殊メイクもかなりよかった。ストーリーの流れも、寓話としての王道を抑えていて好感が持てる。全体的にバランスのよく取れたファミリー映画だった。

好み評価:☆☆☆

日本でこの映画がリリースされるのか不明だけど、一応以下ネタバレの感想。

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頭文字D

initiald.jpg香港映画、「頭文字D」を観た。周傑倫主演。この映画、日本の同名漫画の実写版で、映画の舞台も日本なんだけど、メインの役者はヒロインの鈴木杏以外皆中華圏の人々。主演の周傑倫は台湾のトップシンガー、脇を固める俳優陣は香港映画界のトップスター達。監督、準主役達を含め、制作スタッフの多くが、「インファナルアフェア」とかぶっている。映画は大連市内にあるモールの最上階にある映画館で観た。本当は、バットマンビギンズを観るつもりで行ったのだけど、上映が始まったら、期待していた「英語音声、中国語字幕」ではなく、「中国語吹き替え、字幕無し」だったので、さっぱり分からなくて困った。最初の五分であきらめて受付に泣きついた。「字幕あるほうに変えて!」と頼んだけど、その映画館は字幕表示の作品は一つも無い、とのこと。ならどうせ字幕無いならせめてもともと中国語の作品を、ということで、「頭文字D」にしたわけだ。けど、頭文字Dは香港映画。ということは広東語でやっていた可能性が高く、どうも僕らが見たやつは共通語吹き替えだった可能性が高い。

中国情報局によると、オープニング四日間の興行成績が「スターウォーズエピソードIII」を超えてダントツ1位とか言っているが、要はこの映画、キャストの豪華さ「だけ」で集客するタイプの映画。(中国の若者達がマニアックなスポーツカーの走りやドライビングテクに餓えているとは思えない。)

この映画を見に行った、というイベント自体はとても楽しいものだったのだが、映画自体はひどいデキだったといわざるを得ない。特に主演の周傑倫の演技・・・今後も映画に出演していくんだろうか。

初めての中国の映画館。驚いたのが、映画本編が終わってスタッフロールに入った瞬間館内が明るくなって、観客は一斉に退場し、スタッフロールも一分も流さないうちにブチっと切られてしまった。たまにスタッフロールの後におまけがある作品あるけど、そういうのは一切中国市場では試さないほうがいいんだろうな・・・

好み評価:☆☆

Fighting Tiger

afu.jpgファイティング・タイガー、原題「阿虎(アーフー)」を観た。主演、アンディー・ラウ、常盤貴子。この映画は内容よりも観た場所が思いで深い。中国は大連より北に数百キロのところにある瓦房点市万家嶺というところにある、友人の実家で、その友人の14歳の弟と二人で観賞した。
内容は、かつての香港のキックボクシングのヒーローが、あるタイ人の記者と恋に落ちるが、殺人の罪を犯してしまい投獄される。15年後、出所してタイ人記者を探しに行くが、その人はもうすでに死んでいると判明。実は娘が出来ていたとしり、その娘に会いにタイのキリスト教系の孤児院に会いに行く。その孤児院を仕切っているシスターが、なぜか日本からやってきてる常盤貴子。初めて会った娘はすっかりぐれていて、常盤貴子に見守られながら親子の絆を深め、父親として、男としての誇りを取り戻していくという話。なんだか悲しいお話。

中国の映画界や音楽界で難しいのは、中国国内での名前と、海外での通称が異なるため、異文化コミュニケーションに非常に使い辛いということだ。香港はそんなことないと思うが、本土で「アンディー・ラウ」と言っても絶対通じない。劉徳華(リウ・ダーフア)で通っているから。同じく、ジャッキー・チェンも成龍(チャン・ロン)だし、ブルース・リーでさえ中国人に通じないのは辛かった。(ブルース・リーは李小龍と書いてリー・シャオロン)
この映画でも面白いことに、役者が英語を話すシーンになると、それまでアンディー・ラウの声だったのが突然全く別人の高い声になって中国語で話し続けるという強引な事態になっていた。中国では一般的だという。いかに中国人が外来語や外国語を苦手としているというか、避けているかが伝わってきた。

好み評価:☆☆☆1/2

Warriors of Heaven and Earth

heavenandearth.jpg中国映画、「ヘヴン・アンド・アース」を観た。中井貴一とヴィッキー・チャオが主演で出ているというのと、なんだか壮大なお話というので気になってみてみた。中井が日本からの遣唐使で、日本へ帰るための最後の任務に赴くという設定が面白い。けど、なんかその面白い設定を活かせていないのでは、という内容。中井と、もう一人の主演俳優、姜文の演技がかなり渋くて、風景の美しさもこの映画のいいところだけど、脚本と演出が大味すぎかなぁ、とやはり思いました。細かいところがね、気になってしまうのです。中井と姜文、二人の主人公が主人公らしく描かれていない点や、二人の人間関係、まわりの人物描写の薄さなんかが気になる。ヴィッキーチャオも、非常に美しく映ってるんですが、役どころに必然性を感じない。問題のラストシーンなど、なんだかとっても惜しい映画、というのが最終的な感想。

好み評価:☆☆☆

玉観音

中国映画、「玉観音」を見た。英題、「JADE GODDESS OF MERCY」

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最近中国の映画を見るのが好きです、と中国語の先生に話したら、次の授業の時に中国映画のDVD貸してくれた。しかも、少林サッカーを見てヴィッキーチャオは綺麗ですね、って話をしたので、ヴィッキーチャオ主演の最新作のDVDを持ってきてくれたのだ。嬉しかったなぁ。ありがとう、マー老師。

で、肝心の内容なのだけど、もしかして、と思っていたけど、やはり英語字幕とかはつかないわけで、中国語のセリフに、中国語の字幕。(中国では、多くの言語を話す人が混在するので、TVや映画には大抵中国語の字幕がつく。例えば広東語と北京語のように、発話を聞くと完全に違う言葉でも、字にすると全く同じなのだ。)まぁいっかーと思いそのまま鑑賞。当然細かい内容は分からないのだが、終わってみると結構分かった気がする。わりと感情移入できたし。

せっかく借りたありがたい作品だったけれど、話はちょっとつまらなかった。つまらない、というより、後味が悪すぎる・・・ 

一目ぼれをした相手が、実は昔麻薬捜査官で、過去に悲しい事件があり、一旦くっついたと思った男の元から置手紙を残して去っていく。物語は、その過去の事件の回想がメインで、最後にちょこっと元の時代に戻ってきて、過去の因縁がからんだ復習劇が繰り返される・・・というどろどろの悲劇です。話のテンポはいいんだけど、暗い。

ヴィッキーチャオが相当目の保養になったのでよかったですが。

好み評価:☆☆

北京バイオリン

陳凱歌(チェンカイコ−)監督の北京バイオリンを観た。

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バイオリンの天才である少年と、その少年の成功に自らの夢を重ねる父親の物語。
よくある題材でよくある展開をする映画だけど、それを本当に綺麗にドラマとして纏め上げた、傑作。映像も綺麗で、涙を流さずには見ていられない感動作でした。

主題は父と子の絆、お金より大事なモノ、というところだろうか。
どんなに辛くても明るい父と、些細なことで揺れる少年の心の描写が絶妙。
劇中何度となくお金のやりとりがスクリーンに映るが、貧しい父親は決して受け取らない。無邪気な春少年はもらえるものは受け取ってしまうけど。

途中、陳凱歌監督自ら扮するユィ教授が弟子に「金のための演奏はするな」と叱り付けるシーンがあるが、これなんかは彼の前作品で「キリングミ−ソフトリー」という話題性だけは十分だが内容の薄い三流サスペンスハリウッド映画を撮ってしまった陳凱歌が自分自身に言ってるのでは、と思ってしまった。(映像はあの作品もとても綺麗だったけどね)

音楽映画としても「海の上のピアニスト」に匹敵するくらい気に入った。
主人公の奏でるバイオリンもとても綺麗で、主にチャイコフスキーなどのクラシックの名曲が披露されるわけだけども、中にはテレサテンの「月亮代表我的心」なんかも出てきて楽しませてくれる。

ちなみに原題は「和イ尓在一起」(あなたと一緒にいる、の意)
英題は「Together」(そのまんま。どちらもなんとなく作品の雰囲気を掴んでいる)

で、邦題が「北京バイオリン」って、なにそれって感じしない?すっごく分かり易いんだけどさ。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

フランス映画、「小さな中国のお針子」を観た。原題:Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

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監督も中国人なら、メインキャストも皆中国人で、舞台も中国だけど、雰囲気はもう完全にフランス映画。ダイ・シージェ監督の自伝的小説が原作になっているらしく、その原作からフランス語で書かれているらしい。ダイ・シージェは長いことフランスで活動している。

映画の舞台は中国の山村。文革の頃に、反革命分子の子ということで「再教育」のため山村に送り込まれた2人の青年が、そこで出会う「お針子」という村で一番美しい娘と恋に落ちるという話。ストーリーは、恋愛を語るものではなく、2人がいかにして無知な田舎の娘を禁じられた西洋文学によって目覚めさせるかということに奔走する様や、村での生活、村人との関わりをコミカルに描く。バイオリンの演奏を披露するとき、モーツァルトのソナタを奏でながら「毛沢東を想って、という曲です」なんていう具合に。

この作品で印象的なのは、ほぼ全てのシーンに登場する中国の山村の絶景と、文学に対する人々の憧れだ。設定では、この映画の舞台は、今はもう三峡ダムのために沈んでしまったエリア。三峡下りといえば、中国で観られる最も美しい景色の一つとして知られる。そんな景色の中でこのほろ苦くも綺麗な物語が進むのだから、ただボーっと眺めているだけでも飽きない。全編を通して流れるバイオリンや胡弓の調べがこの景色と相俟って本当に心地がいい。

もう一つは人々がいかに文学というモノに飢えているか、この時代の人々を動かす力に驚かされた。ここでは小説が、中世ヨーロッパの胡椒さながら、この世の秘宝のように扱われている。そして、一冊のバルザックが3人の人生を変えてしまう。知への欲求と、本の力というものを考えさせられる。

自分にとって大切な本を改めて掘り起こしてみようかな。

好み評価:☆☆☆1/2

無間道

トニーレオン、アンディーラウ主演、「インファナルアフェア

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原題は「無間道」。仏教用語の無間地獄から来てる。無間地獄は確か一番最下層の地獄で、作中のメッセージにもあるけど、ずっと続く苦しみを味わうところ。infernal affairsは直訳すれば地獄の出来事、でちょっとタイトルと内容を結びつかせ辛いけど、英題のほうが響きはいいな。

とにかく脚本が凄い。警察とマフィアの対決モノなのに、アクションシーンが殆ど無い。それなのに物凄い緊張感。演出と脚本と複線の使い方が巧いからだろう。そして役者が渋い。ケリー・チャンとか主人公周りに何人か女優出てくるけど、はっきり言っていらない。この作品で初めてケリー・チャンちょっとかわいいと思ったけど。

プレビューで出てた次回作にも期待。

と思って今調べたらこれ三部作なのね。流行ってるのかな三部作・・・
一応三部で完結して、無間道3も香港では上映されたみたいなのであとは日本での公開を待つだけ。あー続き物は全部出てから一気に観るのが好きだったのに・・また吹き替え版借りてきてしまったし。

いずれにしろ、香港映画が久しぶりにやってくれました。

好み評価:☆☆☆☆

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