Cinema No. 344

ラブロマンス・恋愛

Memoirs of a Geisha

sayuri.jpgチャン・ツィイー、渡辺謙主演、ロブ・マーシャル監督作品、「Memoirs of a Geisha(邦題:Sayuri)」を見た。色々と物議をかもした作品だけど、個人的にはかなり高得点です。舞台は第二次世界大戦頃の京都、登場人物は殆ど日本人なので、ハリウッドのトップスター達をふんだんに使って集客する、という類のプロモーションが出来ない。そういうわけで、主演女優にチャン・ツィイーを置いたってのはかなり妥当なキャスティングと言える。残念ながら日本には彼女に匹敵するスター性を持った国際女優はいない(小雪や栗山千明も頑張ってはいるがスターとは言えない)。ヒーロー役のKen Watanabeはその資格有り、というわけだ。

でもそれにしたって豪華な製作陣だ。製作はスピルバーグ、監督と美術はアカデミー賞受賞経験あり(シカゴ)、劇中のバイオリンソロはイツァーク・パールマン、チェロはヨーヨー・マ。日本映画界からも、謙さんの他に役所広司、桃井かおり、工藤夕貴等が参加。小百合を妬む先輩舞妓(というか劇中では花魁にしか見えない)にはチャン・イーモウ作品でお馴染みのコン・リー、そして小百合の師匠役にかつてのボンドガール、ミシェル・ヨー。ハリウッドのトップスターは出なくとも、アジア勢的には最強の布陣である。これキャストしたのは、ラストサムライでもキャスティングを担当した奈良橋陽子という人らしいが、相当なりふり構ってない感じがして好感を持てる。コン・リーなんて、チャン・ツィイーよりちょっと年上のお姉さん舞妓という役で、実際本当に艶やかで綺麗なんで一瞬年齢を忘れさせられるが、この人40歳過ぎてるはずです。何年か前に見たチャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」では田舎のおばちゃん役をやってるが、あれだって10年以上前の映画。それがこんな妖悦な芸者さんの役ができるなんて、女優業恐ろしすぎる。でも、ミシェル・ヨーしかり、ちょっと年齢に無理があっても、大女優を持ってきたかったんだろう。メインキャストに新人を使ってないように、絶対はずしたくなかったんだろうな。主演に中国人を持ってきたおかげで中国では上映禁止になってしまったのは誤算だっただろうけど(興行的には失敗だけど、海賊版で相当流通してるので、観て貰うという観点では全く問題なし)。ただ、小百合の幼少時代の役を演じた大後寿々花。この子の演技は光ってたな。英語、ってのがきつかったけど。英語と言えば、桃井かおりの英語が何言ってるか全然わからなかった・・・字幕が必要です。舞台は日本で周りもみんな日本人で、挨拶とかは「こんにちは」なのに、なぜみんな拙い英語で話すのか違和感ありまくりで慣れるまで見辛い。カタカナ発音で「ウェアイズマイシスター!」とか叫ぶんだけど無理がありすぎ・・。それから、工藤夕貴。あまりにぶっちゃいくな役なんで(その名も"Pumpkin")、エンドロールで名前見るまで分からなかった(笑。最後にスクリーンで見たのは「ヒマラヤ杉に降る雪」だったけども、英語上手くなったなー。

sayuri2.jpg内容に関しては、非常に日本の美意識に対する愛情を感じます。アメリカ人が中国人を主演において撮った映画、というだけで嫌に思う日本人の方もいるかと思うけど、せいいっぱい日本の美しさを描こうとした印象を受ける。舞妓と花魁がごっちゃになっていたり、舞いが歌舞伎っぽかったりとか、日本人からしたら指摘したくなる細かいつっこみはいろいろとあるのだろうけど、映画としての完成度が高い。映像は、ホントにもう、初めから最後のワンシーンまで、とにかく美しい。チャン・ツィイーも、相当訓練したんだろう、まさに芸者=動く芸術という美しさです。ちょっと代わりが務まる日本人女優が思いつきません。原作は実在の人物の伝記的な作品らしいけど、物語としての脚色を経て、結構切ない内容に仕上がってます。最後は恋愛モノとしてもジーンときた。だけど、やっぱりこれはストーリーよりも芸者の美しさと誇りと悲しさ、そして京都の風景の美しさを見る映画です。是非、世界中の人に見てもらって、日本にこんな文化があったことを知ってもらいたい。2時間半の長さに耐えられる人には、かなりお勧め。

好み評価:☆☆☆☆

フランスの女

エマニュエル・ベアール主演、「フランスの女(原題:Une Femme Francoise)」を見た。

フランスを舞台に、第二次大戦から植民地戦争までの激動の時代を生きた、一人の女性の愛と苦悩の軌跡を描いたドラマ。夫と子供がありながら、ある男性を愛したジャンヌは一途に愛を貫こうとするが、家族はもちろん自分自身の人生までも狂わせていく。 -「DVD NAVIGATOR」データベースより-

france.jpgエマニュエル・ベアールが主演ということで手に取ってみた。この「フランスの女」というのは以前小説版を読んだことがあったはずなのだが、内容をさっぱり忘れていたので気持ちよく見れた。監督が自分の少年期に見た母親の思い出をベースに脚本を書いたらしく、「女の強さ」というのを見せ付けるような内容。とにかくエマニュエル・ベアールが美しい。もう全編通して感想はほとんどそれだけ。エマニュエル・ベアール好きなら必見です。

好み評価:☆☆☆1/2

ほしのこえ

hoshi.jpg新海誠監督、「ほしのこえ」を見た。9月に見た彼の作品に感銘を受けて、その時から見たいと思っていた短編映像作品。彼に関する前回のエントリーでさんざん褒めたけど、今回ももう何と言ったらよいか・・・
とにかく異様なほどのクオリティの高さ。映像の美しさ、カメラワークの巧みさ、演出のセンス、どれをとってもその辺の映画にはなかなか見られない。カメラワークのセンスで言うならホントハリウッドにも見習って欲しいくらい。脚本の、というかdictionのセンスも個人的に大好きで、ストーリーも30分にも満たないこの短さで、ラストにはぐわぁーっと感動させられた。この作品を人に勧めるにあたって、これが「マック1台でほぼ一人で制作された」ということなんて全く持ち出す必要は無いということがわかった。映像特典に収録されている、「彼女と彼女の猫」という5分程度の短編も凄くいい。アニメアレルギーが無い人ならば、新海作品は必ずチェックするべきです。

それから、この作品を配給や流通にこぎつけさせたComix Waveという会社に興味が湧く。こういうクリエイターを世に出す、ということはそれだけで凄いことだけど、悪く言えば「アマチュア」なわけで、それでビジネスを回そうと思ったら大変なリスクだろう。どうやってクオリティコントロールしてるのかな・・

今も何か凄い企画をまわしているみたいだ

才能を世に送りだす、って素敵な仕事だよなぁ。

好み評価:☆☆☆☆

Windstruck

windstruck.jpg韓国映画、「僕の彼女を紹介します」、英題「Windstruck」を観た。監督:クァク・ジョヨン、主演:チョン・ジヒョン、チャン・ヒョク。待ちに待った公開。6月に韓国、香港、中国とアジア各国で同時公開されて、日本だけは12月までおあずけを食らっていた。ようやく来たよ。チョン・ジヒョンファンな自分は内容はともかく、クァク・ジョヨン監督とチョン・ジヒョンというだけで観ることを決定していたのだけど、やはり大した作品でした。まだ公開初日なので多くは書きませんが、かなり泣かされた。涙をこらえようと顔が歪みまくった。クァク・ジョヨン監督、物凄いストーリーテラーです。けど、万人にお勧めできるかは微妙な作品。僕はこういう作品本来は苦手なんです。ただ、ジヒョンファンの人には満足できるつくりであることは保証。

観ようと思う人は、先に「猟奇的な彼女」を観ておくといいと思います。あと、エンドロールは監督作詞の歌が流れるので、聞くとよいと思います。以上。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Who are you?

whoareyou.jpg韓国映画、「フー・アー・ユー?」を観た。チョ・スンウ、イ・ナヨン主演。経営状況の芳しくないベンチャー企業で、新型のバーチャルコミュニティアプリの開発に勤しむ主人公。ヒロインは同じビルに入っている水族館で働く女性。二人は現実世界ではただの知り合いか友達未満という関係になるが、主人公は彼女をネット上で見つけ、知らないふりをして仲良くなり始める。やがて主人公は彼女に惹かれていくが、彼女はネット上の主人公がなりすました人物に惹かれて行く、という話。

正直、初めて韓国映画で「はずした」と思った。いや、いい話なんだが、ちょっと盛り上がらない。ストーリーにやや不満があったが、でも、収穫もある。まず主演二人。主人公のチョ・スンウだが、彼はクァク・ジョヨン監督の「ラブストーリー」でも主演で出ていたが、ホントに素晴らしい演技をする。その演技はこの映画でも健在。ヒロインのイ・ナヨンは元来女優ではなかったらしいがとてもいい役者さんだと思った。綺麗だし。綺麗というか、カッコイイ女性だ。それと、この映画はアバターを使ったバーチャルコミュニティーでのチャットから芽生える恋をテーマにしてるように、韓国の若者文化をかなり前面に押し出して描いているだけあって、韓国の若者の生活が覗けてとても面白い。韓国ならではの部分も多いが、ほとんど日本と変わらない部分も多い気がする。何も言わずに吹き替え版を見せれば日本の映画と疑わずに観る人もいるかも知れない。映画の中での欧米の若者文化はたびたび目にすることがあるが、どうも親近感がないというか、リアルに感じられないことが多い(米在住歴が長い自分でもそう感じるのだから日本に住み続けていた人なら尚更そうなのでは)。けど、韓国のそれは非常にリアルに感ぜられる。この違いは大きいんじゃないかと思う。韓国の映画をハリウッドが高額でリメイク権を取得しているが、逆にハリウッドのいい映画を韓国にリメイクして欲しくなってきた。

好み評価:☆☆1/2

Punch-drunk love

punchdrunklove.jpgアダム・サンドラー主演、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品、「パンチドランク・ラヴ」を観た。この作品、やたらと世間の評判が高いんだけど、僕はちょっと楽しめませんでした。マグノリア(同PTA監督作品)の時とほぼ全く同じ印象と感想。「なんだかなぁ。」という感じなのです。物語全体を通して覆っている空気も、マグノリアのそれと驚くほど似ている。ストーリーは分かりやすいといえば分かりやすいのだけど、この映画を作り上げる要素要素が好みに合わなかったということかな。サンドラーはいい演技するけど、あのすぐキレるキャラクターに共感はできないし、彼に限らず、登場人物がみんなどこかオカシイ。なんか変な人達の変な話、というようにどうしても一歩引いてしまうところがある。奇怪な劇を見ている感覚だ。随所に会話を阻害するように流れるチクタクいうBGMにもイライラします。効果とか演出は綺麗なんだけどね、特にパッケージにも使われているシルエットのシーン、劇中はパッケージの何倍も素晴らしいシーンなんだけど、その辺はやはり監督の力量というところなんだろうか。他に一つ気に入ったのが、マグノリアにも出演していて、パッチアダムス等にも出演していたフィリップ・シーモア・ホフマンが凄くいい味だしていたこと。この役者、脇役でしか見たことないけど、ホントいい演技する。最高です。好きになりました。

好み評価:☆☆

The Village

village.jpgM.ナイト.シャマラン監督、「ヴィレッジ」を観た。ホアキン・フェニックス、ブライス・ダラス・ハワード主演。この作品は完全に宣伝の仕方を間違った。シックスセンス、サイン等を製作したシャマラン監督作品で、「あの驚きが再び・・・」みたいに言われていたが、それを期待して来た観客は肩透かしを食らうことだろう。この映画は、ホラーでもなく、サスペンスでもなく、ラブストーリーだったからだ。しかも、ホントにグッとくる、いい物語だ。もしこれが、シャマラン監督作品と知らされず、シックスセンス系だよと宣伝されずにいたら、何倍も評価は高かったように思う。ストーリーや物語の展開は正に民話と呼ぶに相応しく、そこまで斬新というわけではないのだが、映像美や脚本、演出の質の高さ、そして出演陣の全体的な演技水準の高さから本当に丁寧に作りこまれた、良い作品であるということが分かる。監督が作り出した全体の緊張感ある雰囲気の中、役者の演技が見るものを引き込んでいくのだが、特にそれを引き立てる演出が素晴らしい。前半のルシアス(ホアキン)がアイビー(ブライス)の手を取るシーンなんかは涙出そうでした。この映画のいいところは、物語の展開の核となる人間関係を非常に丁寧にバランスよく描いたために、後半中核キャストと脇役達に感情移入させることに大きく成功しているところだ。話のメイン筋だけでなく、背後に横たわるテーマや見守る人々のことにも想いを巡らせながら観ていられる。あまり評価されていない作品のようだけれども、僕はこの作品を大いに評価したい。

bryce.jpgこの映画を観て一番の収穫は、主演のBryce Dallas Howardに出会えたこと。まともに映画出演するのは初めてというが、彼女の存在がこの映画の評価を一段と高めている。この映画が気に入らなかった人も、彼女の演技には目を奪われていたはずと思う。物凄い悲壮感を漂わせたあの演技には脱帽です。とても美人というわけではないけれど、ヒロインとしてこれ以上ないキャストだったように思います。(その点がスパイダーマンのキルステン・ダンストと違うところか笑)ちなみに彼女、ロン・ハワード監督(バックドラフト、アポロ13)の娘さんらしい。
ファンになりそうです。

好み評価:☆☆☆☆

Original Sin

poison.jpgポワゾン、原題「Original Sin」を観た。アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー主演(濃い)。邦題のセンスは巷で言われているほど悪くないと思った。舞台は19世紀末のキューバ。大富豪の主人公が、特に愛は要らないけど妻と子供は欲しいということで、身分を隠して新聞で妻を募集し、文通の末一人のアメリカ人女性と結婚することに決まった。しかしキューバにやってきたその女性は文通相手の写真とは全くの別人だった、という出だし。仰々しく成人指定、ということだったけれども、そんな大げさなものではなく、サスペンスとしてもラブストーリーとしてもいい映画でした。ジョリーがいかにもファムファタールという感じで宣伝されていたけれども、観終わった後はどちらかというと悲劇のヒロインという印象。前半の展開はありがちで、映像やキューバを再現した風景や衣装の美しさくらいが見所だけれども、後半は一気に展開のスピードが上がり引き込む。割と満足できた作品でした。

好み評価:☆☆☆

リメンバー・ミー

リメンバーミー」、原題「同感」 
韓国映画が最近好きな理由の一つに、韓国の女の子が韓国語で話す時の感じというか、韓国語の音というか、イントネーションというか、なんかそういうのがいいんです。しかしなんか巷でもドラマの影響かなんか知らないけど韓国ブームなようで。これに乗っかってまだ日本未公開の名作が沢山ビデオ屋に並ぶといいなぁ。少ないんだよなぁ、韓国映画スペース・・

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ケースの裏面にあるあらすじやプレビューを見る限り、ラブストーリーのようなんだが・・・ラブストーリーではない気が・・・。でもべたべたなラブストーリーにしなかったおかげでいい話に仕上がってたように思う。1979年と2000年をアマチュア無線機が繋ぐっていう、結構ありそうなネタだけど、それを軸にしっとりとした人間ドラマがよくできてる。前半ストーリーが転がり出すまで長いけど。全編に流れるピアノ曲と、時々流れるクラシックの使われ方が好印象。主演俳優ユ・ジテの演技が特に良い!

やっぱりはずれない韓国映画

(ちょいネタばれかな)
印象的なシーンは過去にいるソウン(ヒロイン)が、未来のイン(ユ・ジテ)に未来の様子を聞いて、インが実に楽しそうにそれに答えるシーン。中でも印象的な質問が、基本的な質問を一通り終えた後、それじゃあ、と一番肝心のことを聴くように声を落として、「統一は・・?」と尋ねるシーン。韓国の人々がいかに長い間南北の統一を願っているのかが少し伝わってくきて、少し感動した。他にも未来の様子を語るシーンがあるけど、こういう風に過去の人に未来がどう変わったかを教えたりしたいなぁといつも思っていたので楽しかった。

好み評価:☆☆☆☆

以下さらにちょっとネタばれ

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The Classic

韓国映画、「ラブストーリー」を観た。原題、「The Classic」
監督は、「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督。

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胸から絞られるように涙が出た。

まさに原題通りの、古典的な純愛物語。けど、古典的であろうと、展開がありきたりであろうと、やらしさを全く感じさせない、計算されつくした絶妙な作りは、「猟奇的な彼女」と同様、本当に素晴らしいものがある。脚本というかストーリーテリングというか、その方面だけでもこの監督は凄い。こんなに湿ったストーリーなのに、笑いを取ることもしっかり忘れてないし。こう立て続けにその手腕を見せ付けられると、次回作もはずれそうにないと思わざるを得ない。

友達の好きな人を好きになってしまったことに悩む主人公ジヘがある日開いたのは、母の初恋を綴った日記と手紙。そこから母ジュヒの初恋の物語が語られ始め、重なるように現代の娘の恋も進行していく。母も三角関係に悩んでいたが、母の場合は2人の男の間で苦しんでいた。物語のメインは母の恋と母の初恋の相手ジュナの恋なのだが、この恋と、男同士の友情がこれでもかってくらい切ない。けど、切ないだけじゃないのが、この映画のいいところ。

たとえば、いいシーンの一つに、主人公が相手の気持ちを知って、雨の中踊り出すように駆けるシーンがある。好きな人の自分に対する気持ちを知った瞬間の感動って、ホントこんな感じだよなーって思わされる、とてもいいシーン。

それから、ジュナ役の人の演技が素晴らしい。あの笑顔が焼きつくから、ストーリーの仕掛けが生きてくるんだと想う。最後はジュナの運命を思って涙しました。

悲しい話は好きじゃないけど、救われた気分にもなれるからこの映画は好きだ。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

フランス映画、「小さな中国のお針子」を観た。原題:Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

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監督も中国人なら、メインキャストも皆中国人で、舞台も中国だけど、雰囲気はもう完全にフランス映画。ダイ・シージェ監督の自伝的小説が原作になっているらしく、その原作からフランス語で書かれているらしい。ダイ・シージェは長いことフランスで活動している。

映画の舞台は中国の山村。文革の頃に、反革命分子の子ということで「再教育」のため山村に送り込まれた2人の青年が、そこで出会う「お針子」という村で一番美しい娘と恋に落ちるという話。ストーリーは、恋愛を語るものではなく、2人がいかにして無知な田舎の娘を禁じられた西洋文学によって目覚めさせるかということに奔走する様や、村での生活、村人との関わりをコミカルに描く。バイオリンの演奏を披露するとき、モーツァルトのソナタを奏でながら「毛沢東を想って、という曲です」なんていう具合に。

この作品で印象的なのは、ほぼ全てのシーンに登場する中国の山村の絶景と、文学に対する人々の憧れだ。設定では、この映画の舞台は、今はもう三峡ダムのために沈んでしまったエリア。三峡下りといえば、中国で観られる最も美しい景色の一つとして知られる。そんな景色の中でこのほろ苦くも綺麗な物語が進むのだから、ただボーっと眺めているだけでも飽きない。全編を通して流れるバイオリンや胡弓の調べがこの景色と相俟って本当に心地がいい。

もう一つは人々がいかに文学というモノに飢えているか、この時代の人々を動かす力に驚かされた。ここでは小説が、中世ヨーロッパの胡椒さながら、この世の秘宝のように扱われている。そして、一冊のバルザックが3人の人生を変えてしまう。知への欲求と、本の力というものを考えさせられる。

自分にとって大切な本を改めて掘り起こしてみようかな。

好み評価:☆☆☆1/2

八月のクリスマス

自分の中で韓国映画がブームになりつつある。韓国映画関連のサイトを眺めているとよく目にするタイトル、「八月のクリスマス」を借りてきて見た。

ホ・ジノ監督、ハン・ソッキュ、シム・ウナ主演。英題「Christmas in August」

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あらすじ等を特に見ないで借りてきたため、観始めてしばらくして、あ、失敗したかな、と思った。いわゆる難病モノだったからだ。主人公が死んだりする悲しい話はあまり好きではない。「ラスト・プレゼント」のようなこれでもかってくらいハイテンションで激しい悲劇が展開されるのだろうか、と思ってしまった。

けど、観終わってみると、これほど爽やかな映画もないんじゃないかと思えてしまった。

98年の映画なんだけど、時代設定からくる人々の服装や景色と映像の色などの感じから、見終わって調べるまで80年代の映画かと思っていた。
セリフが少なく、北野武っぽいなと思った長い「間」の取り方、落ち着いた主人公のキャラクター、抑えられた表現、全てが予想していた「悲劇」の在り方ではなかった。全体的な印象は、小津安二郎監督の「東京物語」を彷彿とさせる。

色使いから古そうな印象を受けるけど本当に綺麗な映像とシーンの連続で、主人公二人の映画だということを忘れそうなくらい自然な演技が素晴らしい。映画的に盛り上がるところをあえて避けていくようなストーリー展開のためあっけなくもあるのだが、観終わってから数分、数十分と経って感動が増してくるタイプの映画だ。

傑作。

好み評価:☆☆☆☆

猟奇的な彼女

韓国映画、「猟奇的な彼女」 英題「My Sassy Girl」

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最近これしか言ってない気がするけど、マジ感動した!最高最高。
コメディーとしてもラブロマンスとしても一級。こんなに面白い映画は暫く見てない。原作はネット上に書き込まれたほぼ実話って話だけど、映画はエンターテイメントとして非常に上手く脚色されたものだと思う、笑いとか伏線とか絶妙。

なんといっても主演のチョン・ジヒョンが素晴らしく可愛い。惚れる。怒ってる顔はそうでもないけど(劇中は怒ってばっかなわけだけど)。
個人的に「彼女」がキョヌ(主人公)をぶん殴るときに、割と体重乗ってそうないいパンチを繰り出してるとこがツボにはまってました。すんげぇ痛そうなの。

映画を見終わって、レビューサイトを見に行ったら、彼女は「イルマーレ」にも主演で出ていたと知る。イルマーレは見たし、凄く気に入った映画だったんだけど、なぜか主演女優の顔は印象に残っていなかった。言われてもピンとこない。けどサイトで確認するとやっぱ同じ顔だ。不覚。他の出演作も要チェック。

それにしても今思うと、今まで見た韓国映画でハズレは一つもない。と言ってもいくつかしか見たことないけど。(シュリ、イルマーレ、ラストプレゼント、など)
恐るべし韓国映画。はまりそうな予感。


返す前に、もう一度最初から通して見てしまった。二日連続で。生まれて初めて。あーあ。


「偶然とは、努力した人に運命が与えてくれる橋」 いいセリフだね。

好み評価:☆☆☆☆☆

千年女優

千年女優。英語版は「Millenium Actress」

今敏監督作品。

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いやー感動した。

前半は正に「映画」を感じさせる娯楽作品という感じ。後半は一気にこれでもかというくらい切ない。映像と音楽が綺麗で、登場する様々な時代風景(中世、幕末、明治大正、戦前戦中戦後、現代、近未来)やその時々の衣装も美しい。スピーディーに切り替わるリアルと虚構、現在と過去の混合、と構成が面白い。
おばあちゃんになっても素敵な女性が、初恋を語るってだけで良いよね。

映画が終わる頃、もう終わっちゃうの?と名残惜しくなる。

ラストは、一瞬びっくりするけど、考えると、やっぱあれでいいのかも、と思う。

2002年にドリームワークスから世界配給もされてたみたい。
英語版オフィシャルサイト「Millenium Actress

好み評価:☆☆☆☆1/2

黄泉がえり

黄泉がえり。

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草薙剛、竹内結子主演。
柴咲コウが劇中に歌手「RUI」として歌った「月のしずく」が凄くヒットしていたのを思い出す。結構好きな歌だったな。
舞台は阿蘇。死者がそのときのままの姿で次々と生き返ってくるという現象が起こる。自分よりかなり年下の「兄」が生き返ってきたり、出産と同時に死んだ母が成長した娘と同じくらいの年頃で再会したり、生き返ってくる場面だけでかなり泣ける。
けどやっぱりただ生き返ってくるだけ、ってわけはなく。
一瞬ホラーなのかと思ったけど、そんな要素は全然なくて、とても切なくて悲しい話だった。

好み評価:☆☆☆

感動したけど、☆三つな理由はちょっとネタバレなので下に。

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恋は舞い降りた

恋は舞い降りた
唐沢寿昭、江角マキコ主演。
天使の手違いで死んでしまった男が生き返る条件として一人の人を幸せにする、という話。笑えるし、見た後に気持ちがよくなる作品だった。映画のタイトルと同じ歌と、Bzの「いつかのメリークリスマス」がこの映画の主題歌。

好み評価:☆☆☆1/2

The Thomas Crown Affair

The Thomas Crown Affair, 邦題「トーマスクラウンアフェア」
ピアス・ブロスナン主演

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モネを盗む、という設定に興味を持って借りてきた。ブロスナンは、007というよりMrs.Doubtfireに出てくるあの印象なんでどんなだろ、と思ってたら、やっぱり007だった!物凄くかっこいいですよ、この作品でのすかしっぷりは。モネを盗むシーンとクライマックスのシーンはもう完全にジェームスボンドの身のこなしです。娯楽作品として、文句なしに楽しめる傑作。お勧め。

好み評価:☆☆☆☆

Shakespeare in Love

Shakespeare in Love、邦題「恋におちたシェイクスピア」
グウィネス・パルトロウ、ジョセフ・ファインズ主演。98年アカデミー賞作品賞。
若き日のシェイクスピアがお姫様に恋したり、お姫様は男装してシェイクスピアの劇団で役者をやっていたり、という話。
初めて観たときは飛行機の中だったんだけど、途中お姫様が男装して劇団に入る、というシーンを見逃していて、クライマックスでシェイクスピアが少年の正体が姫様だと気づくシーンまで少年と姫様が同一人物だと気づかなかったりした。作中でシェイクスピアが気づくシーンで一緒になってびっくりした。後で思い直すとかなりありえない。
しかし何度見てもいい。大のお気に入りです。

好み評価:☆☆☆☆☆

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