Cinema No. 344

史劇・時代

Memoirs of a Geisha

sayuri.jpgチャン・ツィイー、渡辺謙主演、ロブ・マーシャル監督作品、「Memoirs of a Geisha(邦題:Sayuri)」を見た。色々と物議をかもした作品だけど、個人的にはかなり高得点です。舞台は第二次世界大戦頃の京都、登場人物は殆ど日本人なので、ハリウッドのトップスター達をふんだんに使って集客する、という類のプロモーションが出来ない。そういうわけで、主演女優にチャン・ツィイーを置いたってのはかなり妥当なキャスティングと言える。残念ながら日本には彼女に匹敵するスター性を持った国際女優はいない(小雪や栗山千明も頑張ってはいるがスターとは言えない)。ヒーロー役のKen Watanabeはその資格有り、というわけだ。

でもそれにしたって豪華な製作陣だ。製作はスピルバーグ、監督と美術はアカデミー賞受賞経験あり(シカゴ)、劇中のバイオリンソロはイツァーク・パールマン、チェロはヨーヨー・マ。日本映画界からも、謙さんの他に役所広司、桃井かおり、工藤夕貴等が参加。小百合を妬む先輩舞妓(というか劇中では花魁にしか見えない)にはチャン・イーモウ作品でお馴染みのコン・リー、そして小百合の師匠役にかつてのボンドガール、ミシェル・ヨー。ハリウッドのトップスターは出なくとも、アジア勢的には最強の布陣である。これキャストしたのは、ラストサムライでもキャスティングを担当した奈良橋陽子という人らしいが、相当なりふり構ってない感じがして好感を持てる。コン・リーなんて、チャン・ツィイーよりちょっと年上のお姉さん舞妓という役で、実際本当に艶やかで綺麗なんで一瞬年齢を忘れさせられるが、この人40歳過ぎてるはずです。何年か前に見たチャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」では田舎のおばちゃん役をやってるが、あれだって10年以上前の映画。それがこんな妖悦な芸者さんの役ができるなんて、女優業恐ろしすぎる。でも、ミシェル・ヨーしかり、ちょっと年齢に無理があっても、大女優を持ってきたかったんだろう。メインキャストに新人を使ってないように、絶対はずしたくなかったんだろうな。主演に中国人を持ってきたおかげで中国では上映禁止になってしまったのは誤算だっただろうけど(興行的には失敗だけど、海賊版で相当流通してるので、観て貰うという観点では全く問題なし)。ただ、小百合の幼少時代の役を演じた大後寿々花。この子の演技は光ってたな。英語、ってのがきつかったけど。英語と言えば、桃井かおりの英語が何言ってるか全然わからなかった・・・字幕が必要です。舞台は日本で周りもみんな日本人で、挨拶とかは「こんにちは」なのに、なぜみんな拙い英語で話すのか違和感ありまくりで慣れるまで見辛い。カタカナ発音で「ウェアイズマイシスター!」とか叫ぶんだけど無理がありすぎ・・。それから、工藤夕貴。あまりにぶっちゃいくな役なんで(その名も"Pumpkin")、エンドロールで名前見るまで分からなかった(笑。最後にスクリーンで見たのは「ヒマラヤ杉に降る雪」だったけども、英語上手くなったなー。

sayuri2.jpg内容に関しては、非常に日本の美意識に対する愛情を感じます。アメリカ人が中国人を主演において撮った映画、というだけで嫌に思う日本人の方もいるかと思うけど、せいいっぱい日本の美しさを描こうとした印象を受ける。舞妓と花魁がごっちゃになっていたり、舞いが歌舞伎っぽかったりとか、日本人からしたら指摘したくなる細かいつっこみはいろいろとあるのだろうけど、映画としての完成度が高い。映像は、ホントにもう、初めから最後のワンシーンまで、とにかく美しい。チャン・ツィイーも、相当訓練したんだろう、まさに芸者=動く芸術という美しさです。ちょっと代わりが務まる日本人女優が思いつきません。原作は実在の人物の伝記的な作品らしいけど、物語としての脚色を経て、結構切ない内容に仕上がってます。最後は恋愛モノとしてもジーンときた。だけど、やっぱりこれはストーリーよりも芸者の美しさと誇りと悲しさ、そして京都の風景の美しさを見る映画です。是非、世界中の人に見てもらって、日本にこんな文化があったことを知ってもらいたい。2時間半の長さに耐えられる人には、かなりお勧め。

好み評価:☆☆☆☆

Original Sin

poison.jpgポワゾン、原題「Original Sin」を観た。アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー主演(濃い)。邦題のセンスは巷で言われているほど悪くないと思った。舞台は19世紀末のキューバ。大富豪の主人公が、特に愛は要らないけど妻と子供は欲しいということで、身分を隠して新聞で妻を募集し、文通の末一人のアメリカ人女性と結婚することに決まった。しかしキューバにやってきたその女性は文通相手の写真とは全くの別人だった、という出だし。仰々しく成人指定、ということだったけれども、そんな大げさなものではなく、サスペンスとしてもラブストーリーとしてもいい映画でした。ジョリーがいかにもファムファタールという感じで宣伝されていたけれども、観終わった後はどちらかというと悲劇のヒロインという印象。前半の展開はありがちで、映像やキューバを再現した風景や衣装の美しさくらいが見所だけれども、後半は一気に展開のスピードが上がり引き込む。割と満足できた作品でした。

好み評価:☆☆☆

Warriors of Heaven and Earth

heavenandearth.jpg中国映画、「ヘヴン・アンド・アース」を観た。中井貴一とヴィッキー・チャオが主演で出ているというのと、なんだか壮大なお話というので気になってみてみた。中井が日本からの遣唐使で、日本へ帰るための最後の任務に赴くという設定が面白い。けど、なんかその面白い設定を活かせていないのでは、という内容。中井と、もう一人の主演俳優、姜文の演技がかなり渋くて、風景の美しさもこの映画のいいところだけど、脚本と演出が大味すぎかなぁ、とやはり思いました。細かいところがね、気になってしまうのです。中井と姜文、二人の主人公が主人公らしく描かれていない点や、二人の人間関係、まわりの人物描写の薄さなんかが気になる。ヴィッキーチャオも、非常に美しく映ってるんですが、役どころに必然性を感じない。問題のラストシーンなど、なんだかとっても惜しい映画、というのが最終的な感想。

好み評価:☆☆☆

化粧師 -KEWAISHI-

化粧師 -KEWAISHI-」を観た。
出演:椎名桔平 、菅野美穂 、池脇千鶴
監督:田中光敏

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素晴らしい。キャストを見て微妙かな、と少し思ったけれど、期待を裏切らなかった。椎名桔平の演技好きかもしれない。菅野美穂も相当微妙な役所をよくぞここまで、というくらい好演している。

展開は王道だけど、物語を引っ張るのが化粧によって女性の心を開く寡黙な化粧師(けわいし)というところが斬新で、何より映像がとても綺麗。大正の町並みと人々の衣装の色鮮やかなこと。

しかしこの物語のベースとして否応無く存在し、男である自分には奇妙に印象に残るのが、本能にも近い、女性の持つ美への憧れ。この映画を見る限り、それはほぼ普遍的な価値に思えてくる。なんなんだろうこの強い感情は。その憧れへ向かって少しだけ背中を押す化粧師。その感情を想像しながら物語を追う。ところどころ少々その心境の変化は強引じゃね?という部分もあるけど許せる範囲ではないかと。

いつのまにかこの大正の世界に引き込まれて、泣かされてしまう。

日本もいい映画あるなぁ、と思わせる一作。

ちなみに。エンドロールで知った、原作は石ノ森章太郎。長編漫画を映画化したのだった。どおりで途中強引な展開があったわけですね。

好み評価:☆☆☆☆

千年女優

千年女優。英語版は「Millenium Actress」

今敏監督作品。

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いやー感動した。

前半は正に「映画」を感じさせる娯楽作品という感じ。後半は一気にこれでもかというくらい切ない。映像と音楽が綺麗で、登場する様々な時代風景(中世、幕末、明治大正、戦前戦中戦後、現代、近未来)やその時々の衣装も美しい。スピーディーに切り替わるリアルと虚構、現在と過去の混合、と構成が面白い。
おばあちゃんになっても素敵な女性が、初恋を語るってだけで良いよね。

映画が終わる頃、もう終わっちゃうの?と名残惜しくなる。

ラストは、一瞬びっくりするけど、考えると、やっぱあれでいいのかも、と思う。

2002年にドリームワークスから世界配給もされてたみたい。
英語版オフィシャルサイト「Millenium Actress

好み評価:☆☆☆☆1/2

The Last Samurai

The Last Samurai、邦題「ラストサムライ」
トムクルーズ、渡辺謙主演。

lastsamurai.bmp

素晴らしいの一言に尽きる。
春にプレヴューでキャスティングを見たときに、あーやっちまった、と思ったが
予想を見事に裏切ったA級の一作。

(泣けるかどうかが映画の良し悪しの規準では決してないが)
映画館でボロボロと泣いてしまった映画は最近では千と千尋以来か。

トムクルーズが、未だかつてない迫力の演技を見せていた。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Saving Private Ryan

Saving Private Ryan、邦題「プライベート・ライアン」
トム・ハンクス主演。スピルバーグ監督。ライアン役はマット・デイモン。
WWIIのノルマンディー上陸作戦の壮絶な戦闘シーンから始まって、一家全滅を避けさせたい、という軍上層部の命令で、4人兄弟で3人の兄をこの戦争で失った2等兵を、前線から急遽救出しに向かう小隊の物語。1人の人間を救うために何人も死んでいく、なんとも理不尽なストーリーだが、そこで繰り広げられるドラマには素直に感動できる。戦闘シーンの演出は過剰だったと批判があったけれど、戦争を知らない僕らには、あれくらい凄絶に見せてもらったほうが戦争の悲惨さが伝わってきそうなので、必ずしも悪くはないと思った。
けど、この映画はあくまでエンターテイメントで、これを歴史資料として扱ったいつだったかのカリフォルニアの裁判官には閉口する。(戦争英雄を侮辱したことで有罪になった青年に、この映画を見ること、という判決を下した事例だったと記憶)
この映画、上映当時にアメリカの劇場でみたんだけど、周りの観客がみんなお爺さんお婆さんで、映画が終わったとたんにスタンディングオベーションが始まったのにびっくりした。特にお爺さんたちが泣きながら拍手する姿は印象的。

好み評価:☆☆☆☆

Shakespeare in Love

Shakespeare in Love、邦題「恋におちたシェイクスピア」
グウィネス・パルトロウ、ジョセフ・ファインズ主演。98年アカデミー賞作品賞。
若き日のシェイクスピアがお姫様に恋したり、お姫様は男装してシェイクスピアの劇団で役者をやっていたり、という話。
初めて観たときは飛行機の中だったんだけど、途中お姫様が男装して劇団に入る、というシーンを見逃していて、クライマックスでシェイクスピアが少年の正体が姫様だと気づくシーンまで少年と姫様が同一人物だと気づかなかったりした。作中でシェイクスピアが気づくシーンで一緒になってびっくりした。後で思い直すとかなりありえない。
しかし何度見てもいい。大のお気に入りです。

好み評価:☆☆☆☆☆

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