Cinema No. 344

July 2004

The Classic

韓国映画、「ラブストーリー」を観た。原題、「The Classic」
監督は、「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督。

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胸から絞られるように涙が出た。

まさに原題通りの、古典的な純愛物語。けど、古典的であろうと、展開がありきたりであろうと、やらしさを全く感じさせない、計算されつくした絶妙な作りは、「猟奇的な彼女」と同様、本当に素晴らしいものがある。脚本というかストーリーテリングというか、その方面だけでもこの監督は凄い。こんなに湿ったストーリーなのに、笑いを取ることもしっかり忘れてないし。こう立て続けにその手腕を見せ付けられると、次回作もはずれそうにないと思わざるを得ない。

友達の好きな人を好きになってしまったことに悩む主人公ジヘがある日開いたのは、母の初恋を綴った日記と手紙。そこから母ジュヒの初恋の物語が語られ始め、重なるように現代の娘の恋も進行していく。母も三角関係に悩んでいたが、母の場合は2人の男の間で苦しんでいた。物語のメインは母の恋と母の初恋の相手ジュナの恋なのだが、この恋と、男同士の友情がこれでもかってくらい切ない。けど、切ないだけじゃないのが、この映画のいいところ。

たとえば、いいシーンの一つに、主人公が相手の気持ちを知って、雨の中踊り出すように駆けるシーンがある。好きな人の自分に対する気持ちを知った瞬間の感動って、ホントこんな感じだよなーって思わされる、とてもいいシーン。

それから、ジュナ役の人の演技が素晴らしい。あの笑顔が焼きつくから、ストーリーの仕掛けが生きてくるんだと想う。最後はジュナの運命を思って涙しました。

悲しい話は好きじゃないけど、救われた気分にもなれるからこの映画は好きだ。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Prozac Nation

クリスティーナ・リッチ主演、「私は『うつ依存症』の女」を観た。原題、「Prozac Nation」

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クリスティーナリッチ扮するリジ−がハーヴァードへ入学し、カッコいい彼氏作ったり、音楽評論で賞を貰ったりと絶好調に見えるところから、うつ病に陥って行き、本人、親、友人、恋人等様々な人を傷つけ、関わり合いながら、鬱と向き合っていく物語。
prozacとはアメリカにある抗鬱在の名前。よく効くらしいけど日本では認可されていないらしい。

うつという病気をもっと知って貰いたい、そういうメッセージを強く感じる作品だった。クリスティーナ・リッチの演技が素晴らしい。

徐々に徐々に、そして突然それはやってくる。

好み評価:☆☆☆

Spiderman 2

スパイダーマン2」を劇場で観た。

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上映が始まり、「Marvel」のロゴが大画面に広がった時には涙が出そうなくらいわくわくした。

小さい頃にスパイダーマンのカートゥーンは見ていたけれど、それに対するわくわくではなく、アメリカに住んでいた頃、集めていたMarvel Cardsのことを思い出した。Marvelコミックのキャラクター達のトレーディングカードだ。コミックのヒーロー達のカードは何種類もあったが、その中でも「The Marvel Cards」と呼ばれていたシリーズは、高級感があって値段も高く、キャラクターの絵も非常に綺麗で凝っていた。それを子供が沢山揃えることは難しく、コレクションに「The Marvel Cards」が並ぶのはかなり誇らしいことだった。一般のカードと「The Marvel Cards」では質感が、ドラゴンボール通常版の表紙と、完全版の表紙の絵くらい違う。とにかくその頃の気持ちを少し思い出したオープニング。

引き込まれるスピード感。見たことのない格闘。アクションシーンは一級品でした。

つっこみどころの大半はこのコミックが連載されていた頃を思えば許容範囲内。それを許せれば楽しめる作品だったと思う。

ただ、ヒーローが情けなすぎるのは頂けなかった。情けない仮の姿と正義感溢れる超人とのギャップという構図は分かるのだが、情けなさの演出が過剰で、情けないほうが真の姿に見えてしまう。そして情けないシーンの後には必ず夜の街を飛び回るスパイダーマンの映像。これではストレス発散のために変身して悪人を懲らしめているようにしか見えない。主人公の演技を受け付けないのは個人的な好みの問題かもしれないが、脇役や悪役の役どころが微妙なのがストーリーに一貫したイメージを与えることができていない要因になっているように思う。

時間を忘れさせる勢いを持っている作品なので、3作目はドラマ部分に期待したいと思います。

好み評価:☆☆☆1/2

Kill BIll vol.1

クエンティン・タランティーノ監督作品、「キル・ビル vol.1」を観た。
主演:ユマ・サーマン

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これは凄い。感動的なほどのイカレバカ映画だった。もうホントバカ。このバカさに笑えるかどうかで賛否が分かれるとこなんだろう

映画マニアなら楽しめるというか、日本のC級映画マニアじゃないと分からないネタが多すぎる。その一部を紹介。(ストーリーには触れてないのでご安心を)

・まず深作欣二に捧ぐ、と出てくるところ。そこから連想するとおり任侠の世界が待っている。

・深作繋がりでは、キルビルと言えばあの音楽、と言えば多分分かる、トレーラー等にも使われていた布袋寅泰作曲の「新・仁義なき戦い」のテーマ。

・タイガーマスク等の時代のアニメを彷彿とさせるオーレンイシイ(石井お蓮?)の少女時代。しかもこれ、スタッフロールで、製作「プロダクションI.G」(押井守のイノセンスを製作したとこ)とあったからびっくり。さらにメイキング映像に出てきたんだけど、キャラクターデザインが田島昭宇(漫画、MADARAや、多重人格探偵サイコを書いてる人)というのでさらにびっくり。このこだわりようが凄い。

子連れ狼みたいにバッサリ斬って血が吹き出る。

・なんか少年ナイフを彷彿とさせるバンドが出てきた。

・劇中演歌が流れる。スタッフロールでも流れる。その「恨み節」という曲は、修羅雪姫という復讐劇のテーマ曲だったとか。見てないけど内容は知ってる。原作は漫画で、子連れ狼書いた人。あらすじを改めて見ると、オーレンの人物自体が修羅雪姫のオマージュみたいだ。

・途中物凄くタイムリーなことに「リリィシュシュ」の歌が使われていた(前日に「リリィシュシュのすべて」を観ていた)。

あと他にも色んな映画から、香港映画やメキシコ映画なんかからも取ってるらしい。

メインのターゲットであるアメリカ人の九割九分九厘が面白さの大部分を理解できないのでは。そういう自分も元ネタのほとんどを知らないわけで、その意味で全く楽しめていない部類なのかもしれないけど。

けど、単なるオマージュの切り集めというには上手すぎる繋ぎ。映像も綺麗だし、オマージュのシーンも、元ネタを知らなくても笑いを誘えるほどの極端さとバカバカしさ。

個人的にこの作品ではオーレン演じるルーシー・リューがかなり良かった。これまでのイメージからか、日本語を喋るリューを観ているだけで感動がある。しかもサーマンと比べて際立って発音上手いし。サーマンが中国やヨーロッパの剣術っぽい動きをするのに対して、リューがかなり伝統的な殺陣をやってのけていたのも感心した。
雪の上で着物のリューが刀を構えるシーンなんて美しすぎる(どうしてもこれをやりたかったんだろうな、タランティーノ・・)。ラストのシーンにはコメディ出身だったことを思わず思いださせられたけど。
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とにかくこのバカさにかなりスカッとさせてもらったので、この映画にはかなり満足しています。vol.2も楽しみ。

最後にネット上で拾った日本版キルビルポスターを。

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僕は邦題作るなら、「斬るビル」かと思ってたけど、これ↑のほうが秀逸ですな。

好み評価:☆☆☆☆

Toy Story 2

ディズニーの「トイストーリー2」を観た。

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オーソドックスなエンターテイメント。2作目の必然性を感じないけど、興行収入目的の「商品」なのだからそういうものか。普通に面白かった。

甥っ子が一作目の大ファンだったので2作目を買い、一緒に観た。

ずーっと同じ調子でピンチ、なんとかして、ピンチ、なんとかして、というのを繰り返すので少々疲れる。けど、これくらいの展開じゃないと子供は飽きてしまうんだろうな。

それにしてもCGの質感には驚かされました。

好み評価:☆☆☆

All about Lily Chou-Chou

岩井俊二監督作品、「リリィシュシュのすべて」を観た。

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田園風景が美しい田舎町。13歳の少年達。いじめ。唯一の安らぎとしての音楽、リリィシュシュ。ドビュッシー。レイプ。援助交際。沖縄の楽園「アラグスク島」。そして殺人。

繊細な13歳の心をかなり秀逸に描き出している作品だけど、観たあとはかなり暗い気分になる。ハンディーカムで撮影しているのか、手ぶれが激しいため酔ってしまうことも不愉快さを増す要因になっているんだろう。しかもこの映画長い。最後のほうは「早く終わってくれ」という気持ちでいっぱいだった。

映像は文句なしに美しい。ストーリーにこれといったカタルシスというか、安らぎを得られる要因というは無いのだが、この映像の美しさには癒される人も多いかもしれない。

個人的に、主人公の片思いの相手が主人公の手引きによってレイプされてしまうシーンのBGMにドビュッシーの「アラベスク」が使われていたことにかなりの不快感を感じた。あんなシーンで使うなんて酷い。最も好きなクラシック曲の一つなのに、これからあの曲を聴くたびにレイプシーンをイメージしてしまうことになったとしたら僕は岩井監督を恨むかもしれない。

好み評価:☆☆☆

力作ではあったけど、リリィシュシュの存在感が薄かったのが残念。

玉観音

中国映画、「玉観音」を見た。英題、「JADE GODDESS OF MERCY」

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最近中国の映画を見るのが好きです、と中国語の先生に話したら、次の授業の時に中国映画のDVD貸してくれた。しかも、少林サッカーを見てヴィッキーチャオは綺麗ですね、って話をしたので、ヴィッキーチャオ主演の最新作のDVDを持ってきてくれたのだ。嬉しかったなぁ。ありがとう、マー老師。

で、肝心の内容なのだけど、もしかして、と思っていたけど、やはり英語字幕とかはつかないわけで、中国語のセリフに、中国語の字幕。(中国では、多くの言語を話す人が混在するので、TVや映画には大抵中国語の字幕がつく。例えば広東語と北京語のように、発話を聞くと完全に違う言葉でも、字にすると全く同じなのだ。)まぁいっかーと思いそのまま鑑賞。当然細かい内容は分からないのだが、終わってみると結構分かった気がする。わりと感情移入できたし。

せっかく借りたありがたい作品だったけれど、話はちょっとつまらなかった。つまらない、というより、後味が悪すぎる・・・ 

一目ぼれをした相手が、実は昔麻薬捜査官で、過去に悲しい事件があり、一旦くっついたと思った男の元から置手紙を残して去っていく。物語は、その過去の事件の回想がメインで、最後にちょこっと元の時代に戻ってきて、過去の因縁がからんだ復習劇が繰り返される・・・というどろどろの悲劇です。話のテンポはいいんだけど、暗い。

ヴィッキーチャオが相当目の保養になったのでよかったですが。

好み評価:☆☆

Patch Adams

パッチアダムス」 ロビン・ウィリアムス主演。実話ということを意識してみるべし。

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涙が止まらない。説明不要の名作!とにかく多くの人に見てもらいたい。

「怖れや怠惰などから、人々が見ようとしないものを見るんだ。そうすることによって、新しい世界が見え始めるから。」

最高にいい映画は、大切なコトを色々と気づかせてくれる。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Finding Forrester

小説家を見つけたら、原題「Finding Forrester」を観た。
ショーンコネリー、ロバートブラウン主演。ガス・ヴァン・サント監督作品。

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ブロンクスの黒人少年と、数十年前に一度だけ名作を発表しその後文壇から消えてしまっていた小説家との友情の物語。小説家はこの黒人少年に非凡な文章の才能があることを見出して、厳しく彼を導いていく。

「コンクール出たことある?」

「一度だけな」

「勝った?」

「あたりまえだ」

「あ、そう。それって賞金とか出るやつ?」

「ビューリッツァーだ」

「・・・」

かっこよすぎる。こういうの好き。あとこのセリフも印象的。

「第一稿はハートで書け。第二稿の推敲には、頭を使え」

総評としては、鑑賞後の余韻がいい、満足度の非常に高かった作品。この監督は、「グッドウィルハンティング」の監督でもあり、なぜ似たような設定の映画を再び撮ったのかちょっと疑問だが、そんなことはどうでもよく思えるくらい爽やかな映画。(ちなみにこの映画マットデイモンが物凄いちょい役で出てくる)

あと、主人公の才能を嫉んで陥れようとする教授が、「アマデウス」でモーツァルトの才能を嫉んで陥れたサリエリと同じキャストだったのが面白い。

エンディングテーマが、「somewhere over the rainbow」なのかと思いきや、よく聞いていると、somewhere over the rainbowと「what a wonderful world」が合わさったアレンジになっていて(一方のverseの後にもう一方のverseが入る、という感じ)、不思議な感じがした。

この映画のなによりの魅力は、主演のロバートブラウンの演技!確かに見たことなかったけれど、新人だというから凄い。彼の人生をそのまま見ているように引き込まれます。こういう時には、アメリカってすげぇ国だなぁと思う。

「小説家を見つけたら」という邦題は、いい付け方だなと思いました。

好み評価:☆☆☆☆

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