Cinema No. 344

青春・家庭・人間ドラマ

海猫

森田芳光監督作品、「海猫」を見た。伊東美咲、佐藤浩市、仲村トオル主演。

1980年代の半ばの北海道、函館。ロシア人の血を受け継ぐ薫(伊東美咲)は、南茅部の漁師・邦一(佐藤浩市)に嫁いでいった。しかし、なかなか漁師の生活になじめず苦労する薫は、いつしか邦一の弟で自分を恋い慕う広次(仲村トオル)と結ばれてしまう…。-amazonのあらすじより-

umineko.jpgくらーい映画です。「失楽園」の森田監督が伊藤美咲でどのような物語を撮ったのか興味があったけど、微妙な出来、という感想。伊東美咲の演技は言われているほどまずいとは思わなかった。それよりも脚本や演出のまずさが目に付いた。冒頭の結婚直前カップルの別れシーンのリアリティの無さや、「青い目」のはずの薫の目が全く青くないこと、薫を描いてあるはずの肖像が全く似てないこと(その絵を見て薫だと気づくシーンは違和感ありまくり)、20年以上時が経ってるはずなのに両時代の人物がほとんど変わりなく見えること、など、映画であることをいちいち思い知らされて冷めるシーンが目立った。「映画なんだから」というのは完全に言い訳で、「映画であるからこそ」虚構をリアルに変えなければいけないと思う。どれも技術的に不可能なことなんてないのに、日本の映画はこの辺を軽く見すぎている気がする。B級映画の製作ではなく、一流のスタッフを集めて一流のものを作ろうとしているなら、そういうところで手を抜かないで欲しかった。プロットや映像自体は結構よかったのでそれだけにもったいない。

好み評価:☆☆

Memoirs of a Geisha

sayuri.jpgチャン・ツィイー、渡辺謙主演、ロブ・マーシャル監督作品、「Memoirs of a Geisha(邦題:Sayuri)」を見た。色々と物議をかもした作品だけど、個人的にはかなり高得点です。舞台は第二次世界大戦頃の京都、登場人物は殆ど日本人なので、ハリウッドのトップスター達をふんだんに使って集客する、という類のプロモーションが出来ない。そういうわけで、主演女優にチャン・ツィイーを置いたってのはかなり妥当なキャスティングと言える。残念ながら日本には彼女に匹敵するスター性を持った国際女優はいない(小雪や栗山千明も頑張ってはいるがスターとは言えない)。ヒーロー役のKen Watanabeはその資格有り、というわけだ。

でもそれにしたって豪華な製作陣だ。製作はスピルバーグ、監督と美術はアカデミー賞受賞経験あり(シカゴ)、劇中のバイオリンソロはイツァーク・パールマン、チェロはヨーヨー・マ。日本映画界からも、謙さんの他に役所広司、桃井かおり、工藤夕貴等が参加。小百合を妬む先輩舞妓(というか劇中では花魁にしか見えない)にはチャン・イーモウ作品でお馴染みのコン・リー、そして小百合の師匠役にかつてのボンドガール、ミシェル・ヨー。ハリウッドのトップスターは出なくとも、アジア勢的には最強の布陣である。これキャストしたのは、ラストサムライでもキャスティングを担当した奈良橋陽子という人らしいが、相当なりふり構ってない感じがして好感を持てる。コン・リーなんて、チャン・ツィイーよりちょっと年上のお姉さん舞妓という役で、実際本当に艶やかで綺麗なんで一瞬年齢を忘れさせられるが、この人40歳過ぎてるはずです。何年か前に見たチャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」では田舎のおばちゃん役をやってるが、あれだって10年以上前の映画。それがこんな妖悦な芸者さんの役ができるなんて、女優業恐ろしすぎる。でも、ミシェル・ヨーしかり、ちょっと年齢に無理があっても、大女優を持ってきたかったんだろう。メインキャストに新人を使ってないように、絶対はずしたくなかったんだろうな。主演に中国人を持ってきたおかげで中国では上映禁止になってしまったのは誤算だっただろうけど(興行的には失敗だけど、海賊版で相当流通してるので、観て貰うという観点では全く問題なし)。ただ、小百合の幼少時代の役を演じた大後寿々花。この子の演技は光ってたな。英語、ってのがきつかったけど。英語と言えば、桃井かおりの英語が何言ってるか全然わからなかった・・・字幕が必要です。舞台は日本で周りもみんな日本人で、挨拶とかは「こんにちは」なのに、なぜみんな拙い英語で話すのか違和感ありまくりで慣れるまで見辛い。カタカナ発音で「ウェアイズマイシスター!」とか叫ぶんだけど無理がありすぎ・・。それから、工藤夕貴。あまりにぶっちゃいくな役なんで(その名も"Pumpkin")、エンドロールで名前見るまで分からなかった(笑。最後にスクリーンで見たのは「ヒマラヤ杉に降る雪」だったけども、英語上手くなったなー。

sayuri2.jpg内容に関しては、非常に日本の美意識に対する愛情を感じます。アメリカ人が中国人を主演において撮った映画、というだけで嫌に思う日本人の方もいるかと思うけど、せいいっぱい日本の美しさを描こうとした印象を受ける。舞妓と花魁がごっちゃになっていたり、舞いが歌舞伎っぽかったりとか、日本人からしたら指摘したくなる細かいつっこみはいろいろとあるのだろうけど、映画としての完成度が高い。映像は、ホントにもう、初めから最後のワンシーンまで、とにかく美しい。チャン・ツィイーも、相当訓練したんだろう、まさに芸者=動く芸術という美しさです。ちょっと代わりが務まる日本人女優が思いつきません。原作は実在の人物の伝記的な作品らしいけど、物語としての脚色を経て、結構切ない内容に仕上がってます。最後は恋愛モノとしてもジーンときた。だけど、やっぱりこれはストーリーよりも芸者の美しさと誇りと悲しさ、そして京都の風景の美しさを見る映画です。是非、世界中の人に見てもらって、日本にこんな文化があったことを知ってもらいたい。2時間半の長さに耐えられる人には、かなりお勧め。

好み評価:☆☆☆☆

The Human Stain

humanstain.jpgアンソニー・ホプキンズ、二コール・キッドマン主演、ロバート・ベントン監督作品、「The Human Stain(邦題:白いカラス)」を見た。プレビューで見たときから気になっていた一作。期待通りの重厚な人間ドラマだった。見終わってから知ったのだけど、原作はピューリッツァー賞を受賞しているらしく、読んだ人に言わせるとやはり小説版のほうが厚みがある話になっているとか。でもこの映画も十分見せてくれた。ホプキンズは見ての通り白人なんだけど、劇中の設定では彼は実は黒人の家庭に生まれていて、どういうわけか彼一人だけが白い肌を持って生まれてきたということになっている。その彼の苦悩を、養父の性的虐待、夫の暴力、自らの過失による子供との死別、というこれまた大変な苦悩を背負った女性(キッドマン)との出会いと生活から描いていくというプロット。キッドマンは34歳のジャニターという役柄で、みずぼらしい格好の粗野な女性を演じている。にも関わらず、その美貌がほとんど色褪せていないのが凄い(そしてちょっとリアルじゃない)。
原題は「The Human Stain」、劇中の直訳では「人間の瑕」とされているが、邦題の「白いカラス」ってのはちょっと俗っぽいけども主人公達の苦悩を端的に表していてなかなか秀逸だと思う。

それにしても役者の演技レベルがなんて高い作品だったろう。日本の俳優もこれくらいの演技見せてくれたらもっと邦画が面白くなるのにな・

好み評価:☆☆☆

童夢奇縁

tongmeng.jpgアンディー・ラウ(劉徳華)主演の香港映画、「童夢」を見た。義理の母と暮らすのが嫌で、何かあるたびに家出をしては父に連れ戻される12歳の少年が、ある日成長を速める薬を開発した怪しい科学者と出会い、その薬を使って完全な家出を試みる。大人の姿になった少年が、普段は見れない視線で人と接し、成長していくファンタジー。大人の姿だけど中身は12歳のあどけない少年という役をあの渋いアンディー・ラウがこなす。演出も斬新ではないが結構凝っていて、映像もとても綺麗。アンディー・ラウの特殊メイクもかなりよかった。ストーリーの流れも、寓話としての王道を抑えていて好感が持てる。全体的にバランスのよく取れたファミリー映画だった。

好み評価:☆☆☆

日本でこの映画がリリースされるのか不明だけど、一応以下ネタバレの感想。

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雲のむこう、約束の場所

kumonomukou.jpg

新海誠監督作品、「雲のむこう、約束の場所」を見た。主演、吉岡秀隆、萩原聖人。

近所に住むアニメ好きの友人のお勧めということで見たら、これまた素晴らしい作品と映画監督に出会った。

舞台は少し違う歴史を辿った日本の青森。津軽海峡を境に南北に分断統治された日本。劇中ラジオから流れてくる世界情勢を伝えるニュースからは、「日米軍」「国連の査察団の受け入れを拒否する北側」などのキーワードが聞こえてくる。他に、平行宇宙の存在に触れ、それを「宇宙が見る夢」と呼んだりと、一見SFなんだかファンタジーなんだか、というような世界観だ。

だけど、描いているのは、誰もが感じたことのあるような、少年時代の憧れと喪失。少年時代に果たせなかった約束を果たしたい、そんな話。アニメという表現手段からそう感じるのかもしれないけれど、とにかく、物凄く純粋な物語だった。鑑賞後には、とても爽やかな気分になれた。
キャスティングもアニメに一般の俳優が声を当てると、声質の違いからなのか違和感を感じるものだが、声優専門の人々とは一味違う自然な演技に仕上がっていて気持ちがいい。
そしてこの映画を通して印象に残るのが、実写以上に美しい映像表現。日本の田舎って、科学が発達した未来においても、やっぱり田舎の風景は残ってるんだろうなぁと感じさせる、本当に日本的な田舎のシーンの数々。この綺麗な風景だけでも、この映画は見る価値がある。

プレビューだけでも雰囲気は掴めるので、是非その風景を見てみて欲しい。
http://www.kumonomukou.com/trailer.html

この新海誠という監督、名前は知らなかったけど存在は聞いたことがあった。結構前に、殆ど一人で良質のアニメを作って話題になった人だ(普通は100人とか200人とか関わるものらしい)。その作品、「『ほしのこえ』は、携帯メールをモチーフとした、宇宙と地上にわかたれた少年と少女の超遠距離恋愛のお話です」ってこれまたロマンチック。HPで見る限り普通に綺麗な映像の高品質な作品に見えるけど、これをマック一台で作ったというのだから本当に脱帽する。

映画とは関係ないけど、世界最高のプラネタリウムを一人で作り上げた大平貴之といい、こういう若いスーパークリエイターは本当に勇気を与えてくれる。芸術家やミュージシャン、作家等と違って、この人たちは本来では多くの資本と人手が必要と思われてきたことを一人でやってのける。一人でも世界と渡り合えるという希望というわけだ。

とにかくこの「雲のむこう、約束の場所」、まだまだ日本アニメもいけるな、と感じられた一作。監督もポスト宮崎とか言われてるそうだけど、是非独自の路線で、将来世界に日本のアニメを知らしめて行って欲しい人です。

好み評価:☆☆☆☆

Picnic

picnic.jpg岩井俊二監督作品、Picnicを観た。主演、Chara、浅野忠信。精神病患者を収容するような施設で出会ったココ、ツムジ、サトルの三人は、「塀の外に出てはいけない」と言われて、「塀の上」を歩く探検にでる。けど、ある時、「塀の上ならいいはず」ということで敷地の外に出てしまう。子供の心を持ったままの三人が外の世界へ冒険に出るファンタジー的な物語。映像の撮り方や風景の切り取り方がとても趣味に合う。誰でも撮れそうな感じがするんだけど、撮れないんだろうなぁ。

「銃を貸せ、太陽に撃ったら爆発するかも知れねぇ。」

こういうの大好きです。

好み評価:☆☆☆1/2

ナビィの恋

navienokoi.jpgナビィの恋、を観た。主演、西田尚美。舞台は沖縄のとある小さな島。都会から帰ってきた奈々子が島の風景や人々と触れ合う内にナビィおばあちゃんの若き日の恋について知るお話。ビデオのパッケージにはコメディって書いてあったけど全然コメディ的には面白くなかった。だけど、島の風景、琉球民謡、なぜか流れるケルティック調のバイオリン等がとても美しくて、観ていて癒される映画。メインテーマが特に良くて、誰の曲かとエンドロールを目を凝らして見ていれば、なんとマイケル・ナイマンが担当しているから凄い。「Rafuti」という曲らしい。要チェック。

好み評価:☆☆1/2

Goodbye Lenin

goodbyelenin.jpgドイツ映画、グッバイレーニンを観た。内容は、ドイツが東西に分かれていた時代、生粋の社会主義者の母と革命思想の息子の話。熱心な社会主義教育者であった母はある日革命運動に参加している息子の姿を見て失神。その時のショックだか頭を打ったかで、母は昏睡状態に陥る。そして母は眠り続け、その間にベルリンの壁が崩壊し、ドイツは統一、社会主義東ドイツは滅びた。そして、しばらく後に母が目覚めるが、不安定な状態で、ショックを与えれば死んでしまうと宣告される。息子は、母を守るために、寝たきりの母の部屋とそのわずか周辺だけに、東ドイツを再現させる。母に何度も統一されたドイツがばれそうになるのを、息子があの手この手で必死に取り繕うどたばた劇。

この映画の面白いところは、未だに東ドイツにいるのだと母を騙すために、ニュース番組をでっちあげるところ。映像編集マニアの友人の助けを借りながら、古いニュース映像を切り貼りして東側らしいニュース映像を母に見せる。コカコーラの看板を見られ、いぶかしむ母を騙すために、コカコーラは西側が真似した、実は昔から東側にあった社会主義の飲み物だったというニュースを作る、など。しかし、次第に新たなニュースを加えたり、ばれそうになった嘘を取り繕うのに都合のよいニュースを作り始めるうちに、ニュースの中の世の中は、まさに息子が理想とする東ドイツのあり方に変化していく。母は見事にそのニュース映像の意図したとおりの反応を示していく。しかし、これは母がぼけかけているとか、とぼけた人だから、ではない。メディアが本来持つ威力を示しているのだと思う。この映画のメッセージの一つに、世界を作り上げているのはマスメディアであるという風刺が込められている。まさにその恐ろしさを見せ付けられる思いだった。

お話自体も少しほろりとくる暖かいものだし、人に勧めたくなる映画です。

好み評価:☆☆☆☆

Fighting Tiger

afu.jpgファイティング・タイガー、原題「阿虎(アーフー)」を観た。主演、アンディー・ラウ、常盤貴子。この映画は内容よりも観た場所が思いで深い。中国は大連より北に数百キロのところにある瓦房点市万家嶺というところにある、友人の実家で、その友人の14歳の弟と二人で観賞した。
内容は、かつての香港のキックボクシングのヒーローが、あるタイ人の記者と恋に落ちるが、殺人の罪を犯してしまい投獄される。15年後、出所してタイ人記者を探しに行くが、その人はもうすでに死んでいると判明。実は娘が出来ていたとしり、その娘に会いにタイのキリスト教系の孤児院に会いに行く。その孤児院を仕切っているシスターが、なぜか日本からやってきてる常盤貴子。初めて会った娘はすっかりぐれていて、常盤貴子に見守られながら親子の絆を深め、父親として、男としての誇りを取り戻していくという話。なんだか悲しいお話。

中国の映画界や音楽界で難しいのは、中国国内での名前と、海外での通称が異なるため、異文化コミュニケーションに非常に使い辛いということだ。香港はそんなことないと思うが、本土で「アンディー・ラウ」と言っても絶対通じない。劉徳華(リウ・ダーフア)で通っているから。同じく、ジャッキー・チェンも成龍(チャン・ロン)だし、ブルース・リーでさえ中国人に通じないのは辛かった。(ブルース・リーは李小龍と書いてリー・シャオロン)
この映画でも面白いことに、役者が英語を話すシーンになると、それまでアンディー・ラウの声だったのが突然全く別人の高い声になって中国語で話し続けるという強引な事態になっていた。中国では一般的だという。いかに中国人が外来語や外国語を苦手としているというか、避けているかが伝わってきた。

好み評価:☆☆☆1/2

Y tu mama tambien

ytumamatambien.jpg「天国の口、終わりの楽園」、原題「y tu mama tambien」を観た。メキシコを舞台に、二人の少年が架空のビーチ「天国の口」を見せるから、と人妻をひと夏の旅行に連れ出すロードムービー。話自体はたいしたことないのだけど、終わり方がとってもいいので、全体の印象もかなりいい。二度見ると、二度目に涙してしまうような映画。この映画、深夜のTsutayaでばったり会った女友達に勧められて、じゃあ借りると内容もパッケージもよく確かめずに借りてきたのだけど、再生して本編が始まると冒頭からいきなり生々しいセックスシーンで始まるからビビッた。劇中も、会話のほとんどが卑猥な冗談や性の話題ばっかりなのだけど、この年頃の少年ってそうだよなぁーって感じでまったく嫌に思わなかった。(しかしこの監督がハリーポッター三作目の監督だと知った時は驚いたけれど。)ナレーションに物語と関係ない完全な第三者が使われている点や、ナレーションが挟まれるタイミング、風景や、時事問題の取り入れ方などにかなり特徴があって、撮り方も非常に面白い。観た後に残る余韻の切なさなんかは、青春から離れて久しい人にも、人生について考えることが好きな人にもたまらない類だと思う。お勧めです。

好み評価:☆☆☆1/2

Powder

powder.jpgパウダーを観た。誰かから物凄く進められたことがあって、気になっていたので借りてみた。話は、異形(アルビノで無毛)で超能力者で超頭脳の持ち主、という人から迫害されそうな要素を沢山もった青年が、傷つきながらも人々を癒していく、というファンタジー。見ながら、「フェノメノン」や「グリーンマイル」を思い出した。全体的に惜しいなぁ、という印象。テーマも設定も非常に良いんだけど、作りが雑な気がします。途中かなり感動的なエピソードが挟まれるのだけど、それに関わる人物の物語や人物が十分に描かれていないため感情移入できない。主人公パウダーの内面もそう、彼の苦悩と優しさの源がもう少し丁寧に描かれてればな、と。ストーリーがどちらかというと、超能力によって人々を驚かせるというエピソード達にシーンと時間を割きすぎたように思う。ただ、信頼や愛情、偏見や差別というものについて間違いなく深く考えさせられる。

好み評価:☆☆☆

GUNDAM Trilogy

gundamI.jpgついに観てしまった。富野喜幸監督作品、機動戦士ガンダム劇場版三部作。ガンダムは小さい頃から大好きなキャラクターで、数ある日本のロボットやメカキャラクターの中でも常に一番カッコイイと思っていた。けど、登場人物やメカ、ちょっとしたエピソードなんかは何故か知っていても、まともにシリーズを見たことはなかったのだ。シリーズがやっていたのは僕が生まれる前なので当然といえば当然だが、ガンダムや、続編のZガンダム等は再放送でたまにやっていたし、その当時既に伝説のシリーズだったので内容について全く知らないという奴も少なかった。今もそうだが、僕が小学生の頃から世はガンダム関連商品で溢れていて、当時はSDガンダムの全盛期だ。僕は武者頑駄無や騎士ガンダムで育った世代だ。本シリーズならば、その後のF91とVガンダムをリアルタイムで観ていた世代。第一作目が放映され始めてから25年、ようやく本家本元、全てのガンダム人気の源泉に触れることができた。

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに半世紀が過ぎていた。地球のまわりの巨大な人口都市は、人類の第二の故郷となり、人々は、そこで子を産み、育て、そして死んでいった。 宇宙世紀0079。地球に最も遠い宇宙都市サイド3は、ジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争に挑んできた。この1ヶ月余りの戦いで、ジオン公国と連邦軍は、総人口の半数を死に至らしめた。人々は、自らの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、8ヶ月余りが過ぎた。(第1話オープニングナレーションより)

gundamII.jpg劇場版はテレビ放映された43話を編集し、2時間強の映画三本に再構成した作品。総集編ではあるのだが、その一つ一つの映画としての完成度は単に総集編と呼べる代物ではない。この作品の何よりの魅力がその驚くほど詳細な舞台設定。引用したプロローグにもその断片が見て取れるが、そのあとに始まる本編より80年前からほぼ1年毎ほどの詳細さで舞台となっている世界の歴史が用意されているのだ。本編でも宇宙の物語ということをよく考えられた細かい設定が随所に見られ、感心させられる。スターウォーズも顔負けの細かさである。また、物語も単なるロボットヒーローモノや戦争モノを超えた、人間ドラマとして仕上がっている。主人公の側の人間達と同等かそれ以上に、敵軍の人間味溢れるエピソードや人物像が丁寧に描かれ、ストーリーにより多くの感情移入と緊張感をもたらすと同時に、戦争というものを深く考えさせられる。これまでのアニメと何が違ったのかはここに詳しい。明らかに子供向けではなく、正に今始めて見ることができてよかったと思える作品だ。

gundamIII.jpg三部作一作目を見ていた時は感心が感想の中心だったのだが、二作目を見終わる頃には完全に引き込まれていた。ヤバい!面白すぎる!と笑いがこみ上げてくるほど。三作目では感動とこの作品が終わってしまうことの寂しさの嵐だった。その後もしばらくガンダム病に冒され、ネット上で裏設定やエピソードの解説なんかを漁り余韻を楽しんだ。続編であるZガンダムの劇場版公開(2005年春、同じく総集編三部作形式)が待ち遠しい。ようやく、どうして一アニメに過ぎないこの作品が、今になってもまだ「ガンダム専門誌」が存在するほどの支持を得ているのかの理由が掴めて来た気がする。

面白かったガンダムサイト
ガンダム imperfect Web
熱血解説!ガンダムの魅力
皆さん本当にガンダムが好きなんですね。

好み評価:☆☆☆☆☆

チング

chingu.jpg韓国映画、「チング」を観た。シュリの記録を超して、それまでの興行収入記録を塗り替えた作品、ということで期待して観た。いい映画でした。いい映画だけど、公平な評価をするなら、もっともいい映画というわけではない。

話は、仲良し4人組が、小学生から中学にあがり、大人になり、生き方や関係の移り変わりなんかを経験しながら、互いの友情を強く意識しながら生きていった様を描いている。物語の「転」は4人組のうち二人が対立するヤクザグループに入ることによって起こる。ここまでで想像できると思うけど、かなり湿った話です。映像も全体的に暗い。唯一、印象的な回想シーンとして用意されている、海上の浮き輪に捕まった幼い四人が海がめと水泳選手いついて話すシーンだけが、明るく眩しく描かれている。

青春とか、成長とか、人生とか、因縁とか、そんなことを考える気分になったら、チョットお勧めです。

好み評価:☆☆☆1/2

JSA

韓国映画、「JSA」を観た。

jsa.jpg

北朝鮮と韓国を分ける38度線、南北双方の行政管轄外に置かれている特殊な区域、「共同警備区域」を舞台にした悲劇。

11発の銃声、2つの死体。現場に残っていたのは10発の弾丸、現場に居合わせた南北の兵士2人。黒澤明の「羅生門」のように証言が食い違う。そして消えた1発の弾丸の行方。サスペンスとして観ても引き込む導入。女性捜査官がお互いの証言の矛盾に気づき、真相に近づいていく。そこには、南北の運命に翻弄される悲しい友情の物語が、っていう話。

北朝鮮と韓国の間の軋轢に関してほとんど何も知らないけれど、この両国が抱える問題の深さ、悲しさを垣間見ることができるという意味だけでも、この映画は観る価値がある。「シュリ」でも南北の断裂が生んだ悲劇を描いていたけれど、シュリとは全く違うアプローチで問題を捉えようとしたこの作品では、兵役に着いている人たちにすればありえないかもしれないけれど、一般的な感覚では十分ありえそうな、感情移入の比較的容易な設定を持ってきたおかげで観るものにとってはよりリアルに感じられるのではないだろうか。

映画自体も、プロット、映像、編集、演技、全て一級だったように思う。唯一残念だったのが、英語を話すスイス人役の人物が全く演技できてなかったことか。日本映画でもよくあるけど、外国語を話す場面だと演技できてるのかどうかどうでもよくなってしまうのか、適当な役者や適当な演技で満足している部分があるように思う。他の役者の名演の中で、こういう三流の役者が混じっていると、演技じみた演技に一気に作品世界から引かされてしまう。些細なことだけど、惜しいだけに気になってしまいました。

好み評価:☆☆☆1/2

Matchstick Men

ニコラス・ケイジ主演、「マッチスティックメン」を観た。

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リドリースコット監督作品なんだけど、詐欺師の親子の交流を描く。観終わってみればワンアイディアを2時間かけて演出しただけの映画なんだけど、そのワンアイディアをよくあそこまで活かしたなと、そのへんに少し感心。でもあんま面白いとは思わなかったな。

好み評価:☆☆

Dogville

ニコール・キッドマン主演、「ドッグヴィル」を観た。

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ラース・フォン・トリアー監督の最新作。この作品については予め何も知らなかったのだけど、ダンサーインザダークの監督がキッドマンを使うとどうなるんだろうと気になって借りてみた。

噂の「ドグマ95」に則った人間ドラマだけど、これはかなり衝撃的。

まず見始めてすぐ目に飛び込んでくるのが、演劇の舞台のようなセット。「dogville」という名前の村が舞台なのだが、家々は地面にチョークで描かれているだけで、壁もドアもない。登場人物たちは、パントマイムのようにドアを開け、ドアが開く音だけがする。けど、この演劇のような舞台は、物語が進むにつれ不思議と全く気にならなくなる。次第に、これでなくては成り立たないと思わせるほどだ。

内容は古典的な悲劇のプロットを辿るが、その過程で人間という生き物がどういうものか、人間社会のmicrocosmとして描かれる。そしてそれが非常に巧妙で、まるで舞台に壁が無いことが象徴しているように、人間のダークサイドを暴露していく。

なくても全く気にならなかった余分なものが、一度当たり前になってしまうともう手放すことはできない。そして欲望はエスカレートしていく。
ある人が同じようなことをいつか言ってたな。作ってしまったものを手放せないのが人間。核兵器とかトイレとか。

そして物語はある結末に向かっていくのだが、ここでこの作品の本当の凄さに気づく。プロットを追いながら、自分がこれからの展開の方向性に対してある願望を抱くようになっていることに気づくのだ。

トリアー監督は、「dogville」の人々の醜さを見せつけることで、人間の正体を暴くことに飽き足らず、この映画では、観ている者までもそのような人間の一人なのだと、映画の中に巻き込んでしまう。そして見事に巻き込まれた時に、愕然とした。そして、結末から自分が感じてしまっているカタルシスに、さらに突き落とされるのである。

キーワードは「赦し」と「傲慢」

決して「面白い」映画ではないし、間接的な「象徴的出来事」を持ってして真実を語る映画でもない。ストレートで、シニカル。けど、観るものを登場人物に組み込んでしまう映画なんて滅多にない。役者の演技も、不愉快なほどいい。この映画のメイキングとインタビューをまとめたものだけで一つの別の映画になっているというから役者もタダではすまなかったということだろう。必見です。

ちなみにキツめで強そうな美人というイメージのキッドマンが、現在37歳と決して若くないのに、本作では幼く可愛いイメージになっているのが驚き。普段は長い天然パーマの茶色がかったブロンドの髪が、ストレートで短めの白に近い金髪になっていることもイメージを大きく変えた要因かも。こんなに変われるって、女優って凄い。

参考ブログ:
http://homepage.mac.com/hiropage/iblog/C1750046026/E1975262165/
http://www.myprofile.ne.jp/blog/archive/atsushi_009/98
http://nachu.pobox.ne.jp/silver/2004/08/dogville.html

好み評価:☆☆☆☆1/2

(ハル)

深津絵里主演、「(ハル)」を観た。

(haru).jpg

深津絵里はもともと好きな女優さんで、今でこそおもろ可愛いという印象の人だけれど、この映画の中の深津絵里は美しい!

96年の映画で、まだネットが、インターネットではなく、「パソコン通信」だった時代の話。映画関連のチャットルームで知り合った(ほし)と(ハル)が、メールによる交流を初め、メール友達ならではの距離感を保ちながら、それでいて段々とお互いの存在を大きくしていく過程を描いた物語。

映画の大部分でメールやチャットの内容をそのまま画面に載せて観客に読ませるという面白い手法をとっている。

高校野球のヘルメットのよこに常に置かれている村上春樹の「ダンスダンスダンス」が度々スクリーンに映るのが印象的。

宣伝や評判を見ているとラブストーリーとして扱われているけど、自分にはこれは友情のストーリーに見えた。友情と、コミュニケーションというコトに主眼を置いたドラマ。恋愛という要素がないわけではないが、それはメインのメッセージではない気がする。

すっきり気持ちのいいドラマ。

好み評価:☆☆☆

Mystic River

クリント・イーストウッド監督作品、「ミスティック・リバー」を観た。
主演:ショーンペン、ティムロビンス、ケビンベーコン

mysticriver.jpg

貧しい町に育った三人の幼馴染は忌まわしい事件によって引き裂かれ、25年後、殺人事件の捜査を担当する刑事と、その被害者の父親と、容疑者として再会する。
全体に、息が苦しくなるような喪失感と怒りが充満していて、終始落ち着いた映像で、物語は陰鬱に、危険な方向に転がっていく。

サスペンスっぽい展開をするけど、人間のダークサイドを描き出した人間ドラマがメインと思われる。

とんでもなく作りこまれた力作。だけど、重い。
すべてのシーンが慎重に描かれて、プロットも巧妙で観る者を引き込むし、役者さんたちの演技も素晴らしいけど、観た後の不快感からやっぱりこの映画を評価することができない。

クリント・イーストウッドが監督としてもここまで出来るってことが驚き。すでにアカデミー賞を受賞しているイーストウッドだけれども、立て続けに傑作を生み出すってのはただ事じゃない。この映画では更に驚いたことに音楽も担当していた。そっちのほうは大して印象を残しているわけじゃないけど、映画のために生まれてきたような人なんだろうなぁと恐れ戦いてしまいます。

好み評価:☆☆☆1/2

In America

ジム・シェリダン監督作品、「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」を観た。

inamerica.jpg

この映画は本当にいいですよ皆さん。

物語は監督の実際の体験を下に、監督と娘二人の三人で脚本を書いたという極めて私的な作り。だけど、それだけに丁寧に作りこまれ、強烈なメッセージが伝わってくる。

職を求めて、アイルランドからカナダを経てアメリカに不法入国した父、母、姉妹の四人家族。実はこの家族、幼い末っ子の弟を亡くしている。その家族が、貧しい暮らしの中で、心優しい隣人マテオとの触れ合いや、新たな妊娠などを経て、それぞれの傷を隠しながら立ち直ろうともがく現代の寓話。

キャストは、お父さん役の人は見たことなかったけど、お母さんはMinority Reportの預言者アガサ役だった人。子役の二人は実の姉妹で、この子達はまさに天才!この映画の魅力の半分をこの子達の演技が担っているといっていい。そしてとても可愛らしい。この可愛らしさが見る人をストーリーに引き込んでいくんでしょう。
マテオ役の人はどこかで見たな・・と思って調べたら、なんとアミスタッドであの有名な、
「ギブズ、アズ、フディー!!」
を叫んだ奴隷のリーダー役の人だった。素晴らしい演技ですよこの人。

息子の死で魂が死んでしまったという父。役者を目指すが、演技に魂が入らず、芽が出ない。神を呪い、涙も出ない。それでも、娘達のために幸せを演じ続ける父親。見ているだけで痛い。

大切な人の死。夫の目に、死んだ息子の目を見てしまい、まともに見つめられない。これはどれほどの苦しみだろうか。

常にビデオを回し続ける少女。辛い現実を虚構の世界のようにフレームに収めることで、その辛さから逃れようとしている。録画されたテープのなかには弟が生きていた頃の幸せな日々。けど、彼女の純粋な心が、半分ファンタジー、だけど半分リアルな力で、家族を守る。

そう、この物語、超常的なことは何も起こらないけど、ファンタジーなんだ。そして、ファンタジーを信じることで、傷を乗り越えていく。喪失と再生を、最後まで丁寧に描ききった傑作です。

途中、スピルバーグのE.T.のオマージュ的な演出が随所に入るんだけども、この映画を観て初めてE.T.の真相を知る。

劇中、幼い妹がE.T.の映画を観た後に、「E.T.は天国に行ったんじゃなくて、おうちに帰っただけなの!」と力説するシーンがある。これって、普通なら天国に行ったと解釈するところだよ、ってことですよね。僕もこの妹と同じようになんの疑いもなくただおうち帰っただけだと思っていた・・・これは結構ショックでした。

好み評価:☆☆☆☆1/2

化粧師 -KEWAISHI-

化粧師 -KEWAISHI-」を観た。
出演:椎名桔平 、菅野美穂 、池脇千鶴
監督:田中光敏

kewaishi.jpg

素晴らしい。キャストを見て微妙かな、と少し思ったけれど、期待を裏切らなかった。椎名桔平の演技好きかもしれない。菅野美穂も相当微妙な役所をよくぞここまで、というくらい好演している。

展開は王道だけど、物語を引っ張るのが化粧によって女性の心を開く寡黙な化粧師(けわいし)というところが斬新で、何より映像がとても綺麗。大正の町並みと人々の衣装の色鮮やかなこと。

しかしこの物語のベースとして否応無く存在し、男である自分には奇妙に印象に残るのが、本能にも近い、女性の持つ美への憧れ。この映画を見る限り、それはほぼ普遍的な価値に思えてくる。なんなんだろうこの強い感情は。その憧れへ向かって少しだけ背中を押す化粧師。その感情を想像しながら物語を追う。ところどころ少々その心境の変化は強引じゃね?という部分もあるけど許せる範囲ではないかと。

いつのまにかこの大正の世界に引き込まれて、泣かされてしまう。

日本もいい映画あるなぁ、と思わせる一作。

ちなみに。エンドロールで知った、原作は石ノ森章太郎。長編漫画を映画化したのだった。どおりで途中強引な展開があったわけですね。

好み評価:☆☆☆☆

Prozac Nation

クリスティーナ・リッチ主演、「私は『うつ依存症』の女」を観た。原題、「Prozac Nation」

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クリスティーナリッチ扮するリジ−がハーヴァードへ入学し、カッコいい彼氏作ったり、音楽評論で賞を貰ったりと絶好調に見えるところから、うつ病に陥って行き、本人、親、友人、恋人等様々な人を傷つけ、関わり合いながら、鬱と向き合っていく物語。
prozacとはアメリカにある抗鬱在の名前。よく効くらしいけど日本では認可されていないらしい。

うつという病気をもっと知って貰いたい、そういうメッセージを強く感じる作品だった。クリスティーナ・リッチの演技が素晴らしい。

徐々に徐々に、そして突然それはやってくる。

好み評価:☆☆☆

All about Lily Chou-Chou

岩井俊二監督作品、「リリィシュシュのすべて」を観た。

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田園風景が美しい田舎町。13歳の少年達。いじめ。唯一の安らぎとしての音楽、リリィシュシュ。ドビュッシー。レイプ。援助交際。沖縄の楽園「アラグスク島」。そして殺人。

繊細な13歳の心をかなり秀逸に描き出している作品だけど、観たあとはかなり暗い気分になる。ハンディーカムで撮影しているのか、手ぶれが激しいため酔ってしまうことも不愉快さを増す要因になっているんだろう。しかもこの映画長い。最後のほうは「早く終わってくれ」という気持ちでいっぱいだった。

映像は文句なしに美しい。ストーリーにこれといったカタルシスというか、安らぎを得られる要因というは無いのだが、この映像の美しさには癒される人も多いかもしれない。

個人的に、主人公の片思いの相手が主人公の手引きによってレイプされてしまうシーンのBGMにドビュッシーの「アラベスク」が使われていたことにかなりの不快感を感じた。あんなシーンで使うなんて酷い。最も好きなクラシック曲の一つなのに、これからあの曲を聴くたびにレイプシーンをイメージしてしまうことになったとしたら僕は岩井監督を恨むかもしれない。

好み評価:☆☆☆

力作ではあったけど、リリィシュシュの存在感が薄かったのが残念。

Patch Adams

パッチアダムス」 ロビン・ウィリアムス主演。実話ということを意識してみるべし。

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涙が止まらない。説明不要の名作!とにかく多くの人に見てもらいたい。

「怖れや怠惰などから、人々が見ようとしないものを見るんだ。そうすることによって、新しい世界が見え始めるから。」

最高にいい映画は、大切なコトを色々と気づかせてくれる。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Finding Forrester

小説家を見つけたら、原題「Finding Forrester」を観た。
ショーンコネリー、ロバートブラウン主演。ガス・ヴァン・サント監督作品。

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ブロンクスの黒人少年と、数十年前に一度だけ名作を発表しその後文壇から消えてしまっていた小説家との友情の物語。小説家はこの黒人少年に非凡な文章の才能があることを見出して、厳しく彼を導いていく。

「コンクール出たことある?」

「一度だけな」

「勝った?」

「あたりまえだ」

「あ、そう。それって賞金とか出るやつ?」

「ビューリッツァーだ」

「・・・」

かっこよすぎる。こういうの好き。あとこのセリフも印象的。

「第一稿はハートで書け。第二稿の推敲には、頭を使え」

総評としては、鑑賞後の余韻がいい、満足度の非常に高かった作品。この監督は、「グッドウィルハンティング」の監督でもあり、なぜ似たような設定の映画を再び撮ったのかちょっと疑問だが、そんなことはどうでもよく思えるくらい爽やかな映画。(ちなみにこの映画マットデイモンが物凄いちょい役で出てくる)

あと、主人公の才能を嫉んで陥れようとする教授が、「アマデウス」でモーツァルトの才能を嫉んで陥れたサリエリと同じキャストだったのが面白い。

エンディングテーマが、「somewhere over the rainbow」なのかと思いきや、よく聞いていると、somewhere over the rainbowと「what a wonderful world」が合わさったアレンジになっていて(一方のverseの後にもう一方のverseが入る、という感じ)、不思議な感じがした。

この映画のなによりの魅力は、主演のロバートブラウンの演技!確かに見たことなかったけれど、新人だというから凄い。彼の人生をそのまま見ているように引き込まれます。こういう時には、アメリカってすげぇ国だなぁと思う。

「小説家を見つけたら」という邦題は、いい付け方だなと思いました。

好み評価:☆☆☆☆

北京バイオリン

陳凱歌(チェンカイコ−)監督の北京バイオリンを観た。

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バイオリンの天才である少年と、その少年の成功に自らの夢を重ねる父親の物語。
よくある題材でよくある展開をする映画だけど、それを本当に綺麗にドラマとして纏め上げた、傑作。映像も綺麗で、涙を流さずには見ていられない感動作でした。

主題は父と子の絆、お金より大事なモノ、というところだろうか。
どんなに辛くても明るい父と、些細なことで揺れる少年の心の描写が絶妙。
劇中何度となくお金のやりとりがスクリーンに映るが、貧しい父親は決して受け取らない。無邪気な春少年はもらえるものは受け取ってしまうけど。

途中、陳凱歌監督自ら扮するユィ教授が弟子に「金のための演奏はするな」と叱り付けるシーンがあるが、これなんかは彼の前作品で「キリングミ−ソフトリー」という話題性だけは十分だが内容の薄い三流サスペンスハリウッド映画を撮ってしまった陳凱歌が自分自身に言ってるのでは、と思ってしまった。(映像はあの作品もとても綺麗だったけどね)

音楽映画としても「海の上のピアニスト」に匹敵するくらい気に入った。
主人公の奏でるバイオリンもとても綺麗で、主にチャイコフスキーなどのクラシックの名曲が披露されるわけだけども、中にはテレサテンの「月亮代表我的心」なんかも出てきて楽しませてくれる。

ちなみに原題は「和イ尓在一起」(あなたと一緒にいる、の意)
英題は「Together」(そのまんま。どちらもなんとなく作品の雰囲気を掴んでいる)

で、邦題が「北京バイオリン」って、なにそれって感じしない?すっごく分かり易いんだけどさ。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

フランス映画、「小さな中国のお針子」を観た。原題:Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

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監督も中国人なら、メインキャストも皆中国人で、舞台も中国だけど、雰囲気はもう完全にフランス映画。ダイ・シージェ監督の自伝的小説が原作になっているらしく、その原作からフランス語で書かれているらしい。ダイ・シージェは長いことフランスで活動している。

映画の舞台は中国の山村。文革の頃に、反革命分子の子ということで「再教育」のため山村に送り込まれた2人の青年が、そこで出会う「お針子」という村で一番美しい娘と恋に落ちるという話。ストーリーは、恋愛を語るものではなく、2人がいかにして無知な田舎の娘を禁じられた西洋文学によって目覚めさせるかということに奔走する様や、村での生活、村人との関わりをコミカルに描く。バイオリンの演奏を披露するとき、モーツァルトのソナタを奏でながら「毛沢東を想って、という曲です」なんていう具合に。

この作品で印象的なのは、ほぼ全てのシーンに登場する中国の山村の絶景と、文学に対する人々の憧れだ。設定では、この映画の舞台は、今はもう三峡ダムのために沈んでしまったエリア。三峡下りといえば、中国で観られる最も美しい景色の一つとして知られる。そんな景色の中でこのほろ苦くも綺麗な物語が進むのだから、ただボーっと眺めているだけでも飽きない。全編を通して流れるバイオリンや胡弓の調べがこの景色と相俟って本当に心地がいい。

もう一つは人々がいかに文学というモノに飢えているか、この時代の人々を動かす力に驚かされた。ここでは小説が、中世ヨーロッパの胡椒さながら、この世の秘宝のように扱われている。そして、一冊のバルザックが3人の人生を変えてしまう。知への欲求と、本の力というものを考えさせられる。

自分にとって大切な本を改めて掘り起こしてみようかな。

好み評価:☆☆☆1/2

The Last Samurai

The Last Samurai、邦題「ラストサムライ」
トムクルーズ、渡辺謙主演。

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素晴らしいの一言に尽きる。
春にプレヴューでキャスティングを見たときに、あーやっちまった、と思ったが
予想を見事に裏切ったA級の一作。

(泣けるかどうかが映画の良し悪しの規準では決してないが)
映画館でボロボロと泣いてしまった映画は最近では千と千尋以来か。

トムクルーズが、未だかつてない迫力の演技を見せていた。

好み評価:☆☆☆☆1/2

The Majestic

ジムキャリー主演、ショーシャンクやグリーンマイルを手がけたダラボン監督作品、「The Majestic」

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やっぱジムキャリーいい、すごく好きな役者だ。コメディーもいいけど、ヒューマンドラマやらせてもしっかり味を出す。

作品の印象も、暗いテーマを扱いながら、終始BGMに流れる軽快なジャズや、ジムキャリーの明るい演技で、あったかいものに仕上がってる。

ストーリーで気になる点もあるけど、見てよかった映画。

好み評価:☆☆☆1/2

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Road to Perdition

Road to Perdition、邦題「ロードトゥパーディション」
トム・ハンクス主演。

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この映画、上映当時に、年に数回しかメールしないオハイオの友人が「日本でも上映されたら必ず見ろ!」と、それだけ言うためにメールをよこしてくれてたほどなので、気になってた作品。先日のおちゃー姉さんのお勧めセレクションにも含まれていたし、借りてみた。

父子の絆を描くマフィアモノ。ハリウッドのマフィアものだけど、バイオレンスのシーンは極力抑えられていたように思う(人はばったばったと死ぬわけだけど、地味な演出だった)。BGMも終始落ち着いた音数の少ないピアノの旋律。落ち着いた映画だった。それだけに後味も落ち着いた、じんわりいい印象を残す。

それにしても心残りは、日本語吹き替え版を借りてきてしまう、とうい大失敗を犯してしまったこと。日本の声優さんもいいけどね、やっぱトムハンクス生の演技を聞きたかった。

好み評価:☆☆☆1/2

二十四の瞳

二十四の瞳
木下惠介監督。壺井栄原作。
瀬戸内海の小豆島を舞台に、一人の女教師と十二人の教え子たちの交流を描いた名作。
途中で時代が変わって、子供たちが成長した姿で出てくるのだが、どの子も面影が残っていて明らかに誰が誰の成長した姿かわかるようになっていたのには驚いた。本当に十年くらい歳月を置いて撮影したのではと一瞬思ってしまったが、兄弟姉妹での起用だったらしい。
小学生の頃も見たけど、大学に入って見直してみるとあたりまえだが相当に印象が違う。感動的。小学生の頃から印象に残っているシーンは、子供たちが調子にのって先生を落とし穴にはめて、先生が足を折ってしまうんだけど先生は何でもないよ、というように装うシーン。このシーンには今も昔も泣かされる。

今調べてみたら、この作品何気にゴールデングローブ賞とかとってる。

好み評価:☆☆☆☆1/2

Snow Falling on Cedars

Snow Falling on Cedars、邦題「ヒマラヤ杉に降る雪」
工藤夕貴がヒロインとして出演している。
あるアメリカの島で起こった事件に、無実の日系二世ミヤモトが偏見から有罪へとされていってしまう話。その二世の妻が工藤夕貴演じるハツエなのだが、この裁判を中心にミヤモトの過去や物語のキーパーソンとなるハツエの少女時代の恋人などのエピソードが織り交ぜられていく結構複雑で深い話。かなり切ない。
この映画の原作を、高校の授業で読んだのだが、主人公の名前が「Kabuo Miyamoto」になっていたのは爆笑ものだった。映画や日本語訳の小説ではしっかり「Kazuo」になっていたのもまた面白い。

好み評価:☆☆☆☆

Music of Heart

Music of Heart, 邦題「ミュージックオブハート」
メリル・ストリープ主演。
貧しい学校の音楽クラスがカーネギーホールで演奏することになる、という話。実話に基づいた話らしい。ゲスト出演なのか、イツァーク・パールマンがイツァーク・パールマンとして出てきたりする。
音楽を中心とした子供と先生のかかわりだけでなく、家族といったテーマでも非常に感動的な内容になっている。

好み評価:☆☆☆☆

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