Cinema No. 344

September 2004

Punch-drunk love

punchdrunklove.jpgアダム・サンドラー主演、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品、「パンチドランク・ラヴ」を観た。この作品、やたらと世間の評判が高いんだけど、僕はちょっと楽しめませんでした。マグノリア(同PTA監督作品)の時とほぼ全く同じ印象と感想。「なんだかなぁ。」という感じなのです。物語全体を通して覆っている空気も、マグノリアのそれと驚くほど似ている。ストーリーは分かりやすいといえば分かりやすいのだけど、この映画を作り上げる要素要素が好みに合わなかったということかな。サンドラーはいい演技するけど、あのすぐキレるキャラクターに共感はできないし、彼に限らず、登場人物がみんなどこかオカシイ。なんか変な人達の変な話、というようにどうしても一歩引いてしまうところがある。奇怪な劇を見ている感覚だ。随所に会話を阻害するように流れるチクタクいうBGMにもイライラします。効果とか演出は綺麗なんだけどね、特にパッケージにも使われているシルエットのシーン、劇中はパッケージの何倍も素晴らしいシーンなんだけど、その辺はやはり監督の力量というところなんだろうか。他に一つ気に入ったのが、マグノリアにも出演していて、パッチアダムス等にも出演していたフィリップ・シーモア・ホフマンが凄くいい味だしていたこと。この役者、脇役でしか見たことないけど、ホントいい演技する。最高です。好きになりました。

好み評価:☆☆

Y tu mama tambien

ytumamatambien.jpg「天国の口、終わりの楽園」、原題「y tu mama tambien」を観た。メキシコを舞台に、二人の少年が架空のビーチ「天国の口」を見せるから、と人妻をひと夏の旅行に連れ出すロードムービー。話自体はたいしたことないのだけど、終わり方がとってもいいので、全体の印象もかなりいい。二度見ると、二度目に涙してしまうような映画。この映画、深夜のTsutayaでばったり会った女友達に勧められて、じゃあ借りると内容もパッケージもよく確かめずに借りてきたのだけど、再生して本編が始まると冒頭からいきなり生々しいセックスシーンで始まるからビビッた。劇中も、会話のほとんどが卑猥な冗談や性の話題ばっかりなのだけど、この年頃の少年ってそうだよなぁーって感じでまったく嫌に思わなかった。(しかしこの監督がハリーポッター三作目の監督だと知った時は驚いたけれど。)ナレーションに物語と関係ない完全な第三者が使われている点や、ナレーションが挟まれるタイミング、風景や、時事問題の取り入れ方などにかなり特徴があって、撮り方も非常に面白い。観た後に残る余韻の切なさなんかは、青春から離れて久しい人にも、人生について考えることが好きな人にもたまらない類だと思う。お勧めです。

好み評価:☆☆☆1/2

Powder

powder.jpgパウダーを観た。誰かから物凄く進められたことがあって、気になっていたので借りてみた。話は、異形(アルビノで無毛)で超能力者で超頭脳の持ち主、という人から迫害されそうな要素を沢山もった青年が、傷つきながらも人々を癒していく、というファンタジー。見ながら、「フェノメノン」や「グリーンマイル」を思い出した。全体的に惜しいなぁ、という印象。テーマも設定も非常に良いんだけど、作りが雑な気がします。途中かなり感動的なエピソードが挟まれるのだけど、それに関わる人物の物語や人物が十分に描かれていないため感情移入できない。主人公パウダーの内面もそう、彼の苦悩と優しさの源がもう少し丁寧に描かれてればな、と。ストーリーがどちらかというと、超能力によって人々を驚かせるというエピソード達にシーンと時間を割きすぎたように思う。ただ、信頼や愛情、偏見や差別というものについて間違いなく深く考えさせられる。

好み評価:☆☆☆

GUNDAM Trilogy

gundamI.jpgついに観てしまった。富野喜幸監督作品、機動戦士ガンダム劇場版三部作。ガンダムは小さい頃から大好きなキャラクターで、数ある日本のロボットやメカキャラクターの中でも常に一番カッコイイと思っていた。けど、登場人物やメカ、ちょっとしたエピソードなんかは何故か知っていても、まともにシリーズを見たことはなかったのだ。シリーズがやっていたのは僕が生まれる前なので当然といえば当然だが、ガンダムや、続編のZガンダム等は再放送でたまにやっていたし、その当時既に伝説のシリーズだったので内容について全く知らないという奴も少なかった。今もそうだが、僕が小学生の頃から世はガンダム関連商品で溢れていて、当時はSDガンダムの全盛期だ。僕は武者頑駄無や騎士ガンダムで育った世代だ。本シリーズならば、その後のF91とVガンダムをリアルタイムで観ていた世代。第一作目が放映され始めてから25年、ようやく本家本元、全てのガンダム人気の源泉に触れることができた。

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに半世紀が過ぎていた。地球のまわりの巨大な人口都市は、人類の第二の故郷となり、人々は、そこで子を産み、育て、そして死んでいった。 宇宙世紀0079。地球に最も遠い宇宙都市サイド3は、ジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争に挑んできた。この1ヶ月余りの戦いで、ジオン公国と連邦軍は、総人口の半数を死に至らしめた。人々は、自らの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、8ヶ月余りが過ぎた。(第1話オープニングナレーションより)

gundamII.jpg劇場版はテレビ放映された43話を編集し、2時間強の映画三本に再構成した作品。総集編ではあるのだが、その一つ一つの映画としての完成度は単に総集編と呼べる代物ではない。この作品の何よりの魅力がその驚くほど詳細な舞台設定。引用したプロローグにもその断片が見て取れるが、そのあとに始まる本編より80年前からほぼ1年毎ほどの詳細さで舞台となっている世界の歴史が用意されているのだ。本編でも宇宙の物語ということをよく考えられた細かい設定が随所に見られ、感心させられる。スターウォーズも顔負けの細かさである。また、物語も単なるロボットヒーローモノや戦争モノを超えた、人間ドラマとして仕上がっている。主人公の側の人間達と同等かそれ以上に、敵軍の人間味溢れるエピソードや人物像が丁寧に描かれ、ストーリーにより多くの感情移入と緊張感をもたらすと同時に、戦争というものを深く考えさせられる。これまでのアニメと何が違ったのかはここに詳しい。明らかに子供向けではなく、正に今始めて見ることができてよかったと思える作品だ。

gundamIII.jpg三部作一作目を見ていた時は感心が感想の中心だったのだが、二作目を見終わる頃には完全に引き込まれていた。ヤバい!面白すぎる!と笑いがこみ上げてくるほど。三作目では感動とこの作品が終わってしまうことの寂しさの嵐だった。その後もしばらくガンダム病に冒され、ネット上で裏設定やエピソードの解説なんかを漁り余韻を楽しんだ。続編であるZガンダムの劇場版公開(2005年春、同じく総集編三部作形式)が待ち遠しい。ようやく、どうして一アニメに過ぎないこの作品が、今になってもまだ「ガンダム専門誌」が存在するほどの支持を得ているのかの理由が掴めて来た気がする。

面白かったガンダムサイト
ガンダム imperfect Web
熱血解説!ガンダムの魅力
皆さん本当にガンダムが好きなんですね。

好み評価:☆☆☆☆☆

The Village

village.jpgM.ナイト.シャマラン監督、「ヴィレッジ」を観た。ホアキン・フェニックス、ブライス・ダラス・ハワード主演。この作品は完全に宣伝の仕方を間違った。シックスセンス、サイン等を製作したシャマラン監督作品で、「あの驚きが再び・・・」みたいに言われていたが、それを期待して来た観客は肩透かしを食らうことだろう。この映画は、ホラーでもなく、サスペンスでもなく、ラブストーリーだったからだ。しかも、ホントにグッとくる、いい物語だ。もしこれが、シャマラン監督作品と知らされず、シックスセンス系だよと宣伝されずにいたら、何倍も評価は高かったように思う。ストーリーや物語の展開は正に民話と呼ぶに相応しく、そこまで斬新というわけではないのだが、映像美や脚本、演出の質の高さ、そして出演陣の全体的な演技水準の高さから本当に丁寧に作りこまれた、良い作品であるということが分かる。監督が作り出した全体の緊張感ある雰囲気の中、役者の演技が見るものを引き込んでいくのだが、特にそれを引き立てる演出が素晴らしい。前半のルシアス(ホアキン)がアイビー(ブライス)の手を取るシーンなんかは涙出そうでした。この映画のいいところは、物語の展開の核となる人間関係を非常に丁寧にバランスよく描いたために、後半中核キャストと脇役達に感情移入させることに大きく成功しているところだ。話のメイン筋だけでなく、背後に横たわるテーマや見守る人々のことにも想いを巡らせながら観ていられる。あまり評価されていない作品のようだけれども、僕はこの作品を大いに評価したい。

bryce.jpgこの映画を観て一番の収穫は、主演のBryce Dallas Howardに出会えたこと。まともに映画出演するのは初めてというが、彼女の存在がこの映画の評価を一段と高めている。この映画が気に入らなかった人も、彼女の演技には目を奪われていたはずと思う。物凄い悲壮感を漂わせたあの演技には脱帽です。とても美人というわけではないけれど、ヒロインとしてこれ以上ないキャストだったように思います。(その点がスパイダーマンのキルステン・ダンストと違うところか笑)ちなみに彼女、ロン・ハワード監督(バックドラフト、アポロ13)の娘さんらしい。
ファンになりそうです。

好み評価:☆☆☆☆

Original Sin

poison.jpgポワゾン、原題「Original Sin」を観た。アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー主演(濃い)。邦題のセンスは巷で言われているほど悪くないと思った。舞台は19世紀末のキューバ。大富豪の主人公が、特に愛は要らないけど妻と子供は欲しいということで、身分を隠して新聞で妻を募集し、文通の末一人のアメリカ人女性と結婚することに決まった。しかしキューバにやってきたその女性は文通相手の写真とは全くの別人だった、という出だし。仰々しく成人指定、ということだったけれども、そんな大げさなものではなく、サスペンスとしてもラブストーリーとしてもいい映画でした。ジョリーがいかにもファムファタールという感じで宣伝されていたけれども、観終わった後はどちらかというと悲劇のヒロインという印象。前半の展開はありがちで、映像やキューバを再現した風景や衣装の美しさくらいが見所だけれども、後半は一気に展開のスピードが上がり引き込む。割と満足できた作品でした。

好み評価:☆☆☆

少林サッカー

少林サッカーを観た。

shaolinsoccer.jpg

この映画は凄い。バカをここまで極めると、こんなに面白い映画ができるのかと心底感心した。

序盤はギャグのバカさについていけず、引いてしまうシーンが結構あったのだが、よくあるコメディーと違い、中盤から落ち着いて人間ドラマに走るのではなく、バカさをどんどんエスカレートさせていって結果として最後まで笑いのテンションを保ち続けるという、かなりパワフルな映画だった。一人でみたんだけど、文字通り抱腹絶倒しました。

とにかく彼らのサッカーの試合シーンを見るのが一番笑える。
キャプテン翼みたいなシュートフォームや、日向のタイガーショットやリベロの武田のバズーカチャンネルみたいなシュートなど、懐かしのサッカー漫画を彷彿とさせるシーンの連発も興奮を助長させる。

主演俳優が監督でもあるんだけど、天才です。なんでこんなバカなことを考え付けるのか不思議なくらい。

あと、映画の面白さとは別に、個人的に面白い発見だったのは、主人公とその直接の周りのメインキャラたちはどうやら広東語のような、とにかく中国語の授業で習うような普通語とは全く違う言葉を話していて、全く理解できないのだけれど、ヒロインのヴィッキー・チャオが話すのは普通語というか北京語というか、とにかく中国語の授業で習うものと同じ感じなんです。だから凄くよく聞き取れる。でも、劇中、キャラ同士はそれぞれの言葉で話すんです。ホントにああやって通じるのかな。でも主人公がヒロインに「キミは美人なんだから!」って話すシーンとかでは北京語使ってたな。面白い。

ちなみにこのヴィッキーチャオ、劇中は醜い子、って役で出てくるのでわかりにくいんだけど、メイキングやインタビューの映像を見ると、映画の中との差にびっくりするくらい可愛かった。話す中国語はとても聞き取り易く、使う文章もとてもシンプルなので何度も聞いてしまいました。

ヴィッキー・チャオ、もしくは、趙薇(Chou Wei)
zhao_wei.jpg

好み評価:☆☆☆☆

Terminator 3

ターミネーター3を観た。

t3.jpg

だめ。B級もいいとこ。

ターミネーターに再び続編が出る、というのがニュースとして出た時点ではかなり騒がれたけど、上映されてからはそんなに騒がれていたようには思えなかったので、そんなに期待もしていませんでしたが。

2はお気に入りトップ10に入るほどの佳作だったし、1作目も典型的なB級映画という感じだけど斬新な世界観があったのに、この3はひどい。脚本が特にまずいわけだけど、アクションが派手、という点以外に何もない。ターミネーターが迫ってくる怖さもいまいちだし、何より、このストーリーの必要性が全く分からない。2で完結していても全く違和感ないし、もし続きがあるにしても3の後の時代をやるならともかく、なぜこの舞台設定のエピソードを追加するのかが一切分からない。それほど蛇足。

泣かせようとしてるところでも泣けないし(そもそもキャラに感情移入できる要素がゼロ)、全く何がしたいのかわかりません。この監督のほかの映画も観たけれど、ああ、こういう感じが好きなのね、というのは分かるけど、だからなに、という感じ。

一通りけなしたけど、55歳過ぎてもこの役ができるシュワルツネッガーはホントにすげぇと思った。

好み評価:☆

リメンバー・ミー

リメンバーミー」、原題「同感」 
韓国映画が最近好きな理由の一つに、韓国の女の子が韓国語で話す時の感じというか、韓国語の音というか、イントネーションというか、なんかそういうのがいいんです。しかしなんか巷でもドラマの影響かなんか知らないけど韓国ブームなようで。これに乗っかってまだ日本未公開の名作が沢山ビデオ屋に並ぶといいなぁ。少ないんだよなぁ、韓国映画スペース・・

ditto.jpg

ケースの裏面にあるあらすじやプレビューを見る限り、ラブストーリーのようなんだが・・・ラブストーリーではない気が・・・。でもべたべたなラブストーリーにしなかったおかげでいい話に仕上がってたように思う。1979年と2000年をアマチュア無線機が繋ぐっていう、結構ありそうなネタだけど、それを軸にしっとりとした人間ドラマがよくできてる。前半ストーリーが転がり出すまで長いけど。全編に流れるピアノ曲と、時々流れるクラシックの使われ方が好印象。主演俳優ユ・ジテの演技が特に良い!

やっぱりはずれない韓国映画

(ちょいネタばれかな)
印象的なシーンは過去にいるソウン(ヒロイン)が、未来のイン(ユ・ジテ)に未来の様子を聞いて、インが実に楽しそうにそれに答えるシーン。中でも印象的な質問が、基本的な質問を一通り終えた後、それじゃあ、と一番肝心のことを聴くように声を落として、「統一は・・?」と尋ねるシーン。韓国の人々がいかに長い間南北の統一を願っているのかが少し伝わってくきて、少し感動した。他にも未来の様子を語るシーンがあるけど、こういう風に過去の人に未来がどう変わったかを教えたりしたいなぁといつも思っていたので楽しかった。

好み評価:☆☆☆☆

以下さらにちょっとネタばれ

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チング

chingu.jpg韓国映画、「チング」を観た。シュリの記録を超して、それまでの興行収入記録を塗り替えた作品、ということで期待して観た。いい映画でした。いい映画だけど、公平な評価をするなら、もっともいい映画というわけではない。

話は、仲良し4人組が、小学生から中学にあがり、大人になり、生き方や関係の移り変わりなんかを経験しながら、互いの友情を強く意識しながら生きていった様を描いている。物語の「転」は4人組のうち二人が対立するヤクザグループに入ることによって起こる。ここまでで想像できると思うけど、かなり湿った話です。映像も全体的に暗い。唯一、印象的な回想シーンとして用意されている、海上の浮き輪に捕まった幼い四人が海がめと水泳選手いついて話すシーンだけが、明るく眩しく描かれている。

青春とか、成長とか、人生とか、因縁とか、そんなことを考える気分になったら、チョットお勧めです。

好み評価:☆☆☆1/2

Warriors of Heaven and Earth

heavenandearth.jpg中国映画、「ヘヴン・アンド・アース」を観た。中井貴一とヴィッキー・チャオが主演で出ているというのと、なんだか壮大なお話というので気になってみてみた。中井が日本からの遣唐使で、日本へ帰るための最後の任務に赴くという設定が面白い。けど、なんかその面白い設定を活かせていないのでは、という内容。中井と、もう一人の主演俳優、姜文の演技がかなり渋くて、風景の美しさもこの映画のいいところだけど、脚本と演出が大味すぎかなぁ、とやはり思いました。細かいところがね、気になってしまうのです。中井と姜文、二人の主人公が主人公らしく描かれていない点や、二人の人間関係、まわりの人物描写の薄さなんかが気になる。ヴィッキーチャオも、非常に美しく映ってるんですが、役どころに必然性を感じない。問題のラストシーンなど、なんだかとっても惜しい映画、というのが最終的な感想。

好み評価:☆☆☆

american pie

americanpie.jpgやっと見た、という感じ。
みんなでわいわい見たかったんだけど、ようやくそういう機会に恵まれました
「アメリカン・パイ」 
かなり笑わせてもらいました。

好み評価:☆☆☆1/2

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