Cinema No. 344

September 2005

雲のむこう、約束の場所

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新海誠監督作品、「雲のむこう、約束の場所」を見た。主演、吉岡秀隆、萩原聖人。

近所に住むアニメ好きの友人のお勧めということで見たら、これまた素晴らしい作品と映画監督に出会った。

舞台は少し違う歴史を辿った日本の青森。津軽海峡を境に南北に分断統治された日本。劇中ラジオから流れてくる世界情勢を伝えるニュースからは、「日米軍」「国連の査察団の受け入れを拒否する北側」などのキーワードが聞こえてくる。他に、平行宇宙の存在に触れ、それを「宇宙が見る夢」と呼んだりと、一見SFなんだかファンタジーなんだか、というような世界観だ。

だけど、描いているのは、誰もが感じたことのあるような、少年時代の憧れと喪失。少年時代に果たせなかった約束を果たしたい、そんな話。アニメという表現手段からそう感じるのかもしれないけれど、とにかく、物凄く純粋な物語だった。鑑賞後には、とても爽やかな気分になれた。
キャスティングもアニメに一般の俳優が声を当てると、声質の違いからなのか違和感を感じるものだが、声優専門の人々とは一味違う自然な演技に仕上がっていて気持ちがいい。
そしてこの映画を通して印象に残るのが、実写以上に美しい映像表現。日本の田舎って、科学が発達した未来においても、やっぱり田舎の風景は残ってるんだろうなぁと感じさせる、本当に日本的な田舎のシーンの数々。この綺麗な風景だけでも、この映画は見る価値がある。

プレビューだけでも雰囲気は掴めるので、是非その風景を見てみて欲しい。
http://www.kumonomukou.com/trailer.html

この新海誠という監督、名前は知らなかったけど存在は聞いたことがあった。結構前に、殆ど一人で良質のアニメを作って話題になった人だ(普通は100人とか200人とか関わるものらしい)。その作品、「『ほしのこえ』は、携帯メールをモチーフとした、宇宙と地上にわかたれた少年と少女の超遠距離恋愛のお話です」ってこれまたロマンチック。HPで見る限り普通に綺麗な映像の高品質な作品に見えるけど、これをマック一台で作ったというのだから本当に脱帽する。

映画とは関係ないけど、世界最高のプラネタリウムを一人で作り上げた大平貴之といい、こういう若いスーパークリエイターは本当に勇気を与えてくれる。芸術家やミュージシャン、作家等と違って、この人たちは本来では多くの資本と人手が必要と思われてきたことを一人でやってのける。一人でも世界と渡り合えるという希望というわけだ。

とにかくこの「雲のむこう、約束の場所」、まだまだ日本アニメもいけるな、と感じられた一作。監督もポスト宮崎とか言われてるそうだけど、是非独自の路線で、将来世界に日本のアニメを知らしめて行って欲しい人です。

好み評価:☆☆☆☆

Star Wars New Trilogy

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スターウォーズ新三部作。面倒なのでまとめて。

自分はどうもスターウォーズシリーズに対して厳しい評価をしてしまう。昔からのファンというわけではないので、多分、普通に客観的な評価をしているだけなんだと思う。

映像技術の発達で、旧三部作よりも見ていて飽きないが、演出というか、盛り上げるところを盛り上げるということが良く出来ていない気がする。例えば、エピソード1でのアナキン・スカイウォーカーとオビワン・ケノービの出会いのシーン。この二人、後に物凄い因縁で絡み合う二人で、スターウォーズを知ってる人ならこの二人の因縁を誰でも知っている。ファンなら身を乗り出して「おおー出会った!」と思うはずのシーンなんだが、「やぁ」みたいな挨拶だけであっさり流れてしまう。相当がくっとする。他にも、全体的に盛り上がったシーンを殆ど思い出せない。エピソード1はクライマックスはただのチェイスだし、2は子供だましな展開をする戦争シーン。3になってようやく物語として面白さが出てきたように思う。実際3は非常に面白かった。それでも、クライマックスの決闘シーンは、もう少し盛り上げようがあったのではないかと思う。

どうも最近のハリウッドの映画って、大雑把なストーリーと大金がかかってそうな世界のつくりやアクションばかりで、迫力のあるカメラワークやサウンド、そして「間」の使用ってものが全然作りこまれていない気がする。演出の人のセンスの問題か。監督のセンスが相当古いのは明らかだし。とにかくそういった細かい工夫が観客に迫力を伝えるのに、スターウォーズはリアルな未来都市の描写や巨大な宇宙船、怪しい音を立てるライトセイバーなんかがその迫力を生み出すと思っている。日本のマンガを読んでいるほうがよっぽど迫力を感じる。この点優れた映画は、と思い起こすと、マトリックス第一作目を思いついたが、これも監督が日本のアニメやマンガに影響を受けて作った作品なので僕の基準に偏りがあるんだろうか。

エピソード3は良い出来だったし、全てのストーリーが繋がった気持ちよさがあった。ドラクエ3みたいな。今までの謎を埋めるためだけのような作品でもあったけど、スターウォーズを映画でだけ見てる人は、見ないわけにはいかない作品だった。技術的にはこれまでにない完成度の高さだったし、アメリカの伝統的な娯楽作品という意味では佳作だったかな、と。

好み評価:☆☆☆1/2

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