Cinema No. 344

文藝

Finding Forrester

小説家を見つけたら、原題「Finding Forrester」を観た。
ショーンコネリー、ロバートブラウン主演。ガス・ヴァン・サント監督作品。

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ブロンクスの黒人少年と、数十年前に一度だけ名作を発表しその後文壇から消えてしまっていた小説家との友情の物語。小説家はこの黒人少年に非凡な文章の才能があることを見出して、厳しく彼を導いていく。

「コンクール出たことある?」

「一度だけな」

「勝った?」

「あたりまえだ」

「あ、そう。それって賞金とか出るやつ?」

「ビューリッツァーだ」

「・・・」

かっこよすぎる。こういうの好き。あとこのセリフも印象的。

「第一稿はハートで書け。第二稿の推敲には、頭を使え」

総評としては、鑑賞後の余韻がいい、満足度の非常に高かった作品。この監督は、「グッドウィルハンティング」の監督でもあり、なぜ似たような設定の映画を再び撮ったのかちょっと疑問だが、そんなことはどうでもよく思えるくらい爽やかな映画。(ちなみにこの映画マットデイモンが物凄いちょい役で出てくる)

あと、主人公の才能を嫉んで陥れようとする教授が、「アマデウス」でモーツァルトの才能を嫉んで陥れたサリエリと同じキャストだったのが面白い。

エンディングテーマが、「somewhere over the rainbow」なのかと思いきや、よく聞いていると、somewhere over the rainbowと「what a wonderful world」が合わさったアレンジになっていて(一方のverseの後にもう一方のverseが入る、という感じ)、不思議な感じがした。

この映画のなによりの魅力は、主演のロバートブラウンの演技!確かに見たことなかったけれど、新人だというから凄い。彼の人生をそのまま見ているように引き込まれます。こういう時には、アメリカってすげぇ国だなぁと思う。

「小説家を見つけたら」という邦題は、いい付け方だなと思いました。

好み評価:☆☆☆☆

Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

フランス映画、「小さな中国のお針子」を観た。原題:Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise

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監督も中国人なら、メインキャストも皆中国人で、舞台も中国だけど、雰囲気はもう完全にフランス映画。ダイ・シージェ監督の自伝的小説が原作になっているらしく、その原作からフランス語で書かれているらしい。ダイ・シージェは長いことフランスで活動している。

映画の舞台は中国の山村。文革の頃に、反革命分子の子ということで「再教育」のため山村に送り込まれた2人の青年が、そこで出会う「お針子」という村で一番美しい娘と恋に落ちるという話。ストーリーは、恋愛を語るものではなく、2人がいかにして無知な田舎の娘を禁じられた西洋文学によって目覚めさせるかということに奔走する様や、村での生活、村人との関わりをコミカルに描く。バイオリンの演奏を披露するとき、モーツァルトのソナタを奏でながら「毛沢東を想って、という曲です」なんていう具合に。

この作品で印象的なのは、ほぼ全てのシーンに登場する中国の山村の絶景と、文学に対する人々の憧れだ。設定では、この映画の舞台は、今はもう三峡ダムのために沈んでしまったエリア。三峡下りといえば、中国で観られる最も美しい景色の一つとして知られる。そんな景色の中でこのほろ苦くも綺麗な物語が進むのだから、ただボーっと眺めているだけでも飽きない。全編を通して流れるバイオリンや胡弓の調べがこの景色と相俟って本当に心地がいい。

もう一つは人々がいかに文学というモノに飢えているか、この時代の人々を動かす力に驚かされた。ここでは小説が、中世ヨーロッパの胡椒さながら、この世の秘宝のように扱われている。そして、一冊のバルザックが3人の人生を変えてしまう。知への欲求と、本の力というものを考えさせられる。

自分にとって大切な本を改めて掘り起こしてみようかな。

好み評価:☆☆☆1/2

二十四の瞳

二十四の瞳
木下惠介監督。壺井栄原作。
瀬戸内海の小豆島を舞台に、一人の女教師と十二人の教え子たちの交流を描いた名作。
途中で時代が変わって、子供たちが成長した姿で出てくるのだが、どの子も面影が残っていて明らかに誰が誰の成長した姿かわかるようになっていたのには驚いた。本当に十年くらい歳月を置いて撮影したのではと一瞬思ってしまったが、兄弟姉妹での起用だったらしい。
小学生の頃も見たけど、大学に入って見直してみるとあたりまえだが相当に印象が違う。感動的。小学生の頃から印象に残っているシーンは、子供たちが調子にのって先生を落とし穴にはめて、先生が足を折ってしまうんだけど先生は何でもないよ、というように装うシーン。このシーンには今も昔も泣かされる。

今調べてみたら、この作品何気にゴールデングローブ賞とかとってる。

好み評価:☆☆☆☆1/2

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