11月24日、空手の全日本大会があった。
一年間、全てはこの日のための努力。
僕ら4年生にとっては最後の大会であり、選手たちには、その4年間の集大成となる。
今年の慶應はこの十数年で最も練習し、もっとも強くなったと言われていた。
3回戦に控える近畿大学との試合に勝つことは現実味を帯びていた。
しかし結果は、想像よりもはるかに厳しかった。
一回戦、
「大会規定の黒帯を、チーム全員が所持していないため、失格とする。」
慶應は、戦わずして負けた。
慶應の黒帯は、審査団体を兼ねる慶應のOB会から贈られる。
通常の空手会の初段は、慶應では茶帯の実力である。それほど慶應で初段を
とることは厳しく、だからこそ、それは逆に誇りにもなった。
チームプライドの象徴でもあったはずだ。
その誇りがこんな形で裏目に出るとは、考えられなかった。
いままで指摘を受けたことはなかった。指摘を受けている人も見たことはなかった。
しかしルールはルール。抗議は通らなかった。
呆然として控え室に戻った選手と、僕らサポートにまわっていた選手を集めて、
コーチは涙を浮かべながら、
「四年、すまん」
と手をついて謝った。別にコーチや監督のせいだとは誰も思っていなかったが、
その瞬間、ただ呆然としていただけのみんなの目から一斉に涙がこぼれた。
泣くのは、優勝の嬉し涙か、やりきって及ばないときの悔し涙だと思っていたけど、
これは何の涙なんだと思っていた。
僕は、今まで4年間この日だけのためにひたすら打ち込んできた同期の選手とは違うから、
自分が泣くわけにはいかないと思って必死でこらえていたけれど、
稽古中は鬼のように厳しくドライでどんなに負けても勝っても感情を表さない
主将のH薗が下を向いて顔をごしごしと拭っているのを見たとき、どうしようもなく
泣けてしまった。
どうあがいてもやりなおせない、次もない、報われない。
あんなに苦しんで頑張ってきた彼らに、なんらかの結果を出させて欲しかった。
ふと、コーチのコトバが頭をよぎる。
「運命は、勇者の味方をする。」
Posted by 344 at November 26, 2003 11:17 AM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit
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