Log No. 344

October 2005

October 31, 2005

The Crow

crow.jpg今回は、ブランドン・リー主演「The Crow」について。クロウは94年の作品であり、バットマンのようにアメコミの超人気作品が映画化されたものだ。なぜか日本での知名度がイマイチなのだが、当時アメリカで中学生だった僕は、友達と一緒に当たり前のようにこの作品に夢中になった。子供っぽさがいやになり、「ダークな感じ」がたまらなくカッコよく思える、ちょっと擦れたい年頃だった。物語はハロウィーン前日、結婚を翌日に控えたエリック(ブランドン・リー)が恋人もろとも無残に殺され、一年後、墓の下から不死身の復讐鬼となって蘇る、というアクション悲劇(ホラーではない)。全体的に黒を基調とした映像で、ただの復讐アクションで終わらない見事な感情の演出、nine inch nailsやstone temple pilotsといったオルタナティブロックをBGMに使用し、"It can't rain all the time", "I say You move and you're dead!""And I say I'm dead. And I move...","This is not a good day for the bad guys." ・・・など愛情や皮肉がたっぷりの多くの名台詞を残した、とにかく当時としては最高にスタイリッシュな作品だった。

主演のブランドン・リーは、ブルース・リーの実の息子で、父とは違う独自の路線で成功できる実力を持っていたように思える。少なくとも本作品での演技は素晴らしいと思う。しかし、ブランドンにとって、このクロウが遺作となってしまう。撮影中、小道具のはずだった拳銃に実弾が混じっており、本番中、打たれるシーンで本当に死んでしまったのだ。そのため、この映画は一部代役や当時最先端の技術だったCGによる加工で完成されており、そのことも話題になった。そして、劇中エリックが結婚前日に死んでしまうように、ブランドン本人もまた、映画の撮影終了後に結婚式を控えていた。この事件の詳細については以下のリンク参照。

"From Triumph to Tragedy"

だけど僕は初めて見たとき、彼があのブルース・リーの息子だということも、彼がそんな事故でもうこの世にいないということも知らなかった。その恐ろしくも悲しげな姿とめちゃくちゃな強さがただただカッコよかった。彼が死んでいると知った時は本当に愕然としたのを覚えている。

ちなみに彼に魅せられて以来、中学高校と僕のハロウィーンの仮装は決まってクロウだった。いつまでたってもクロウは僕のハロウィーンのシンボルだった。今年もあるハロウィーンパーティに呼ばれた際に、実に6年ぶりの仮装だったけれども僕は特に考えることなくこのクロウメイクで臨んでみた。だけど、その場にいた誰もこのクロウを知らなかったんだ。「怖いピエロだね」とか言われて。やっぱりアメリカの外じゃ知名度低いんだなぁと痛感。それでもっとみんなにこの名作を知ってほしいと思い、普段は「最近見た映画」しか取り上げないんだけど、そんなわけで今回は特別に懐かしの映画を取り上げてみました。一押しの傑作映画です。

October 26, 2005

大連ビジネス。(あるアニメ制作会社の場合)

友人のY嬢が、政府の外資誘致部門からアニメ産業集積地管理部門へ転属したので、そこへ見学も兼ねて遊びに行った。

大連市は、日本企業等の生産工場の集積地区である開発区や、全国で五つある国家ソフトウェア輸出基地の一つに指定されているソフトウェアパークと言った、重点的にある産業を支援する政策で、それぞれの産業の成長を牽引している。現在ソフトウェアパークの第二期のプロジェクトエリアが建設中らしいが、ソフト開発、BPO(business process outsourcing)産業に続いて大連市が支援を開始した産業が、「アニメ・ゲーム」産業である。ハイテク区内にあるこの国家アニメ産業基地には、アニメ制作会社、ゲーム制作会社、CG制作会社の他に、それらの会社へ就職できる人材を輩出する専門学校も入っている。日本ではアニメ・ゲーム業界は下積み時代を辛い給与条件で過ごさねばならないらしいが、こちらではこれらは高給な仕事のようである。お昼時に見学に行ったので、若い人たちがぞろぞろと仕事場から出てくるところだった。

Y嬢によるとまだこの集積地に企業が入り始めて間もないらしいが、Y嬢の日本でのホームステイ先のお父さんがアニメ制作会社を経営しており、その人もこの集積地に合弁企業を立ち上げたという。大手商社での中国ビジネス経験豊富な先輩が中国という市場を「惨憺たる屍の山」と評する様に、大連でも多くの日本企業が失敗している。僕が大連に来て始めに籍を置いた会社も解散の憂き目にあっているし、僕が大連に来るきっかけとなった方の会社も、先月で撤退を余儀無くされている。そんな中アニメ制作という成功例をあまり聞かない分野での進出とあって非常に興味を持った。たまたまその経営者の方が大連に出張中だというので、Y嬢に紹介してもらい、会って頂けることになった。

有限会社ハルフィルムメーカー
春田克典氏

フラマホテルのロビーで合流し、四川料理屋へ。こちらから面会をお願いしておいてご馳走になってしまい恐縮だったが、食事の間の2時間、たっぷりお話を聞くことができた。驚くべきことに、彼にとって今回の合弁は初めてではなく、もうかれこれ14年ほど、大連でビジネスおを行なってきていたらしい。中小企業が、大連で14年間存続する。しかも、成功しているが故の新展開として、新たに合弁企業を立ち上げるわけだ。そして最も驚嘆に値するのが、「日本から仕事を振ったことは一度も無い」という事実。つまり、コストカットを目的に中国に進出しているのではなく、14年前から、純粋に中国向けの中国オリジナルアニメ作品を作り、売上を上げることを目的に行なわれているビジネスだというのである。

この方の説明によると、「確かに中国に日本アニメのファンはいるが、それはそういったものが中国に無かったから日本のアニメを見ているに過ぎない。中国人には、もっとみたいアニメがあるかもしれない。それを中国で、中国人のためにつくってこそ、中国でのアニメの発展がある」そうだ。そして、地元の有力な放送局と組み、実際に成果を上げている。実に頭が下がる発想である。中国側スタッフに対する愛情も感じることができた。実際にこの方の経営者としての先見性は広く認められているようで、日本の経済産業省や、フランスの文化庁等も、この方に協力を仰いでいるとか。日本のアニメ業界は慢性的な制作費の低迷の問題等で非常に苦しい現状にあるらしいが、それも彼曰く「はじめからターゲットを世界50カ国にすれば、市場規模は20倍、今の5倍程度の予算を取り付けることなど容易い」ということで、彼は実際に世界相手に十分な制作費で制作を行なっているという。小さな会社でも、大きなことをできるという希望を体現している。また、他にも、原作モノではなくオリジナル作品を多く成功させることで、製作者達に権利料等で収益を還元できるようにする、など、業界構造の問題等にも具体的な方策で取り組んでいる、まさに経営者だと感じた。

物腰も柔らかく、僕のような若造相手にも説教のようなことをすることなく、僕の意見や質問にも丁寧に応えてくださった、爽やかな方だった。次回に会えるのは何ヶ月か先になりそうだが、またお会いして、いろいろと吸収したい。

「モノやアイデアはコピーできても、その発想力をコピーすることはできない。発想力そのものが財産であるコンテンツビジネスに、コピーを恐れる必要はない。」 - 春田氏

WEBアニメスタイル;春田氏インタビュー
バンビジュ、ハルフィルム 欧州企業と共同制作(10/17)
アニメに憧れる中国の若者達
日本のアニメ制作現場の窮状

October 20, 2005

朝鮮族

ジャッキー・チェン、キム・ヒソン主演映画の「神話」という映画が今上映中。
その主題歌も、最近ヒットしていてよく街中で耳にする。これが悲しげでいい歌なんだ。
今日も通勤のバスに備え付けのモニター画面にプロモーションビデオが流れていたので、歌を聴きながら歌詞を追っていた。初めてじっくり聞いたんだが、AメロBメロに相当する部分を男性が、さびは女性が歌う構成になっている。しかも、さびの歌詞は、どうも字幕と合っていない。「サラン〜」なんとかと聞こえたり、語尾に「〜ヨ」とかついてる。どうやら韓国語のようだ。面白い。(字幕は中国語)
サビだけ韓国語の中国の曲。しかもヒットしている。こういう曲はほとんど無いらしいが、日本でも英語との組み合わせだけでなく、他の言葉との組み合わせがもっとあってもいいよなぁと思った。
ちなみにこの「神話」という映画、ジャッキー・チェンが韓国女優のキム・ヒソンやインド女優のMallika Sherawatと共演した歴史物大作。古代韓半島から秦の始皇帝の後宮に入るためにやってきた姫とそれを守る将軍の物語らしい。ジャッキー・チェンはその将軍と現代の考古学者の一人二役、彼にしては珍しく「ドラマ」だ。キム・ヒソンもMallika Sherawatも激美しくてびびる

神話(The Myth)を取り上げてたブログ

で、そんな中国語韓国語ミックスがヒットしてしまう中国には、朝鮮族という民族が200万人弱ほど住んでいる。ご存知の人も多いと思うけど、中国は多民族国家で、漢民族の他に55の少数民族からなる。

中国の少数民族

普通日本人が思い描く中国人像は、漢族のもので、他にもおよそ漢族とは似ても似つかない「中国人」も沢山いるのだ。イスラムの衣装を纏う民族もあるし、金髪碧眼の民族だっている。一部不本意と思っている民族もあるだろうが、みんな一応「中国人」である。

僕の事務所で働いてくれている3人の人も、漢族1人、朝鮮族が2人である。今回の神話の主題歌についても彼らに聞いた。うちの事務所は、日本語と中国語と朝鮮語が飛び交うにぎやかな職場なのです。

朝鮮族は、距離的な問題なのか、彼らの多くが通う朝鮮人学校では日本語を早くから教えるところが多いらしい。従って、日本語人材というと少数民族であるはずの朝鮮族が結構な割合をしめているようだ。実際彼らは基本的に朝鮮語と中国語のバイリンガルで、語学に対する素養が高いのか日本語もとっても上手だ。

そんな彼らと3人でご飯を食べる機会があった(漢族の子が欠勤した)。で、何気なーく共通の話題をと思い、朝鮮族はいつから中国にいるの〜と聞いてみたんだ。すると、比較的最近らしく、彼らの家系の場合この6,70年くらいらしい。つまり、日本でいう在日朝鮮人、アメリカでいう日系2世3世、世界の華僑、そんな感じらしい。中国はそれをちゃんと少数民族と位置付けて社会的な立場も明確になっているというわけだ。最近もまた「日本は単一民族国家」とか閣僚の方が発言されていたりしたが、この辺は日本も見習うべきなのかも。

その流れで、今度は「じゃあそもそもなんで中国に来たんだ?」と聞いた。そしたら、「戦時中に日本から逃げてきたんですよ」と、めっちゃこちらを気遣ってくれてる感じの口調で言う。日本帝国主義の圧力の結果、今彼らがここで僕の仕事を手伝ってくれている。なんか自分の認識不足というか勉強不足を恥じました。

ちょこっとだけ調べると、実際は18世紀半ばくらいから朝鮮半島からの移住は始まったらしいのだが、やはり最近の大きな影響はというと、日本帝国主義が最初に来るのだろう。実際に彼女らの祖先の場合はそうらしい。おじいちゃんは北朝鮮、おばあちゃんは韓国系、とか言っていた(当時はまだ分断されてないし)。

過去のいろんな出来事を経て、今こうして友好的に仕事ができていることが、なんかとてつもなく凄いことのように思えてきた。

小さいところで、日中日朝の親善に努めてまいります。

(勉強不足な部分が多々あるので、このテキスト中間違いや認識違い等があるかもしれません。もし気づいた人いたらご指摘願います。)

October 17, 2005

真夜中の五分前

mayonaka.jpeg本多孝好著、「真夜中の五分前 Side-A」を読んだ。ちょっと時間短縮のためAmazon.co.jpからあらすじを拝借。

----- 小さな広告代理店に勤める僕は、大学生の頃に恋人・水穂を交通事故で失い、以来きちんとした恋愛が出来ないでいる。死んだ彼女は、常に時計を五分遅らせる癖があり、それに慣れていた僕は、今もなんとなく五分遅れの時計を使っていた。最近別れた彼女から、「あなたは五分ぶん狂っている」と言われたように、僕は社会や他人と、少しだけずれて生きているようだ。
 そんな折り、一卵性双生児の片割れ「かすみ」と出会う。「かすみ」と「ゆかり」は、子供の頃、親を騙すためによく入れ替わって遊んでいた。しかし、それを続けるうち、互いに互いの区別がつかなくなってしまったという。
 かすみは、双子であるが故の悩みと失恋の痛手を抱えてていることを、僕に打ち明ける。
 そんな「かすみ」を支えているうち、お互いの欠落した穴を埋めあうように、僕とかすみは次第に親密になっていく――。-----

ちょっとこのあらすじ、ネタバレが過ぎる気がするんだけど、ストーリーよりも文章が面白いのでいいのかもしれない。そう、この作品、プロットでもうわ、っと驚く部分が数箇所あるんだけど、それよりも独特の文体で、非常に読ませる。たまーに妙に文章や登場人物で遊んでいる感があって、それがまた笑わせる。全体的にコメディ色なんてまったくなくて、始終シリアスな空気というか、なんだか澱んだ雰囲気を感じさせる話なのに。登場人物の会話がリアルなのかもしれない。主人公は結構暗い男だけど、ウィットというものを解する男だ。こいつの台詞がいちいち気が利いてて面白かった。最後も結構感動的でした。

読み終わって、ネット上で他の人はどう評価しているのかサーフしてみたら、なんと対になる「Side-B」があるという。そういえば「Side-A」って書いてある。気にもとめてなかった。これを貸してくれた人は「Side-B」持ってるだろうか・・・
続きというより、裏話、のような感じと言ってる人もいたので、売り方として、「冷静と情熱のあいだ」のようなものなんだろうか。こういう売り方に特徴がある作品は、プレゼントとかにし易いかも。僕の「冷静と情熱のあいだ」も友人(shunrin)からのプレゼントだし。

これ、凄く影響を受けたとか泣いたとか、そういうインパクトは無いんだけど、凄く楽しめた作品だったんです。だから次が早く読みたい。

小泉さんが靖国を参拝したその時大連では

小泉総理大臣靖国を参拝。
http://www.asahi.com/politics/update/1017/005.html

これを受けて、在中国日本国大使館からこんなお知らせがあったらしい。
(緊急)反日デモに関するご注意

要は小泉首相の靖国参拝を受けて国内で反発が起こってデモに発展するかもしれないから気をつけましょう、という内容。大連はとても平和で、五月四日等のデモが起こりやすい日にもほぼ何事もなかったくらいなのであまり心配していないんだけど、一応過去に日本企業に勤める中国人の友人から、日本企業に勤めているという理由でからまれたという話を聞いたことがあったので、従業員にもこの知らせを読んで聞かせた。

「今朝、小泉総理大臣が靖国神社を参拝しました」と言ったら、従業員一同(3人)、「はぁ?!」という顔。親日的で、それなりに日本文化に対して理解がある彼らでも、やはり反感を覚える。

僕はやはり、この問題は「誤解」が元になっていて、その誤解を丁寧な説明で解かなければならないと思っている。そして、周辺国の理解を得て、堂々と国のために戦った人々を参って欲しいものです。

一時的に緊張しそうな日中韓関係だけど、これからの日本政府の外交努力に期待。

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