Log No. 344

May 2006

May 29, 2006

Da Vince Code

davincicode_movie.jpgトム・ハンクス、オドレイ・トトゥ主演、「Da Vince Code」を観た。この映画、巷で叩かれているほど悪くないです。むしろ、素晴らしいとさえ思った。かなり原作に忠実に描かれていて、ストーリーの都合上省かれたエピソード等以外は、エンディングまで原作の描写そのままに描かれている。難点は、その上映時間の都合上、物語を早く進めるために、トムハンクス演じるラングトンがかなりありえない速度で謎を次々と解明していく様。ほとんど迷わないし、間違えもしない。原作のラングトンよりIQが3倍くらい高そうだ。とにかくとんとん拍子で物語が展開していく。自分は原作を読んでいるので元々謎解き部分には期待していないからかそこまで気にはならなかったけど、このストーリーに初めて触れる人には味気なさ過ぎるのではないか。そして、謎の解明に至るまでの思考がかなり省略されてもいるので、原作を読んでいない人にはほとんどついていけないんじゃないかとも思う。プロット自体はそんなにドラマチックではないので、予備知識の無い人には退屈かもしれない。特に、物語の背景として核の部分にあたる「聖杯伝説」は、一般常識として既に観客は知っているものとして扱われているので、この伝説に明るくなかったら結構厳しいと思う(これはネタばれではないはず・・)。中国人の友人と観に行ったのだが、この伝承は中国ではあまり一般的ではないらしく、やはりそこは謎解きの盛り上がりを共有できなかった。

最低限の予備知識としてあったらより楽しめると思った事柄を、追記に。(人によってはネタばれと感じる方もいるかもしれないので念のため。ダ・ヴィンチコードの醍醐味である薀蓄を楽しみたいと思う方はどうぞ)

でもね、そんなことよりも、僕は小説でもそうだったんですが、ラストのシーンにホントに感動したんです。映画版のエンディングは、僕が小説を読んだ際にまさにイメージしたとおりに演出されていて、結末も謎解きも全て知っていたにも関わらず、じわーーっと来てしまった。エンディングはダ・ヴィンチコードの中でもおそらく最もフィクションな部分の一つだろうけど、それでもその瞬間のラングドンの想いに想いを馳せると感動せずにはいられません。原作を読まずに映画を観た人で、ラストを「はぁ?」と思った人は、小説のエピローグだけでも読んでみて!

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May 20, 2006

能楽堂デビュー

帰国中、兼ねてより一度見てみたかった「能」を鑑賞する機会を得た。

こんなウェブサイトで予習してから行った。
能の誘い

行ったのは、渋谷区松涛の住宅街にある「観世能楽堂」
観世能楽堂ウェブページ

当日券での観劇のため開演時間より1時間早く会場へ赴く。この日の演目は年間でも特に席代が高かったらしく、一人8400円した。

kanze.jpg今回見られた演目は以下の三つ。
・能 「敦盛」   関根 祥人
・狂言「文荷」   野村 萬
・能 「隅田川」  梅若 万三郎

今回初めて知ったのだけど、「能」というのは幽霊との対話がとても多いらしく、この「敦盛」も平家物語の英雄である「敦盛」の霊が登場する。ちなみに織田信長がよく口にしたという「人間五十年〜」という文句は「敦盛」の台詞らしいが、あれは能ではなく「幸若舞」という芸能の演目である「敦盛」らしい。

今回能を見て、まず思ったのが、「現代の一般的な感覚では、これはエンターテイニングではない」ということ。かなり、相当、真剣に、眠かった。周りを見回しても、寝てる人が大量にいた。事前予習のサイトにも「眠くなったら寝てもいいです」とか書いてあるし。

台詞回しはお経のような独特の口調なんだけど、慣れてくるとそれが非常に単調に聞こえてくる。古語なので台本に目を通しながらでないと聞き取れない。異様に台詞回しもゆっくりなので、台本を見ていて言うことが分かってると、永遠に話が進まないように感じられて眠くなるのだ。歌や踊りのような、盛り上がるようなイベントも少ない。「敦盛」ではクライマックスに非常に見ごたえと迫力のある素晴らしい舞があって、あれには興奮したけれど。「隅田川」ではそのようなパフォーマンスは一切無かった。

狂言の「文荷」は、とても分かりやすいコメディーでとても楽しめた。能とは打って変わって登場人物の表情が豊かになって、台詞も口語だからなのか途端に聞き取りやすい。昔も今も笑うところは同じだったんだなぁと不思議な感慨があった。「敦盛」のクライマックスに続き、この狂言で完全に目が覚めたのか、「隅田川」はしっかりと最後まで集中して見ることができた。(と言ってもやはりそんなに「面白い」というところまでは思えなかった)

というわけで、能は自分には非常に眠い芸術だった。ただ、その眠気たるや、普段感じることができないほどに甘美な眠気で、もしかしたら周りで爆睡していた年配の方々はそのために能楽堂に足を運んでいるのかも・・・なんて冗談ではなく思ったりした。もうちょっと能が分かるようになったらもっと楽しめるのかもしれないなと思いつつも、やはり何年かに一回見られればいいやととりあえず思ってしまうのでした。

海猫

森田芳光監督作品、「海猫」を見た。伊東美咲、佐藤浩市、仲村トオル主演。

1980年代の半ばの北海道、函館。ロシア人の血を受け継ぐ薫(伊東美咲)は、南茅部の漁師・邦一(佐藤浩市)に嫁いでいった。しかし、なかなか漁師の生活になじめず苦労する薫は、いつしか邦一の弟で自分を恋い慕う広次(仲村トオル)と結ばれてしまう…。-amazonのあらすじより-

umineko.jpgくらーい映画です。「失楽園」の森田監督が伊藤美咲でどのような物語を撮ったのか興味があったけど、微妙な出来、という感想。伊東美咲の演技は言われているほどまずいとは思わなかった。それよりも脚本や演出のまずさが目に付いた。冒頭の結婚直前カップルの別れシーンのリアリティの無さや、「青い目」のはずの薫の目が全く青くないこと、薫を描いてあるはずの肖像が全く似てないこと(その絵を見て薫だと気づくシーンは違和感ありまくり)、20年以上時が経ってるはずなのに両時代の人物がほとんど変わりなく見えること、など、映画であることをいちいち思い知らされて冷めるシーンが目立った。「映画なんだから」というのは完全に言い訳で、「映画であるからこそ」虚構をリアルに変えなければいけないと思う。どれも技術的に不可能なことなんてないのに、日本の映画はこの辺を軽く見すぎている気がする。B級映画の製作ではなく、一流のスタッフを集めて一流のものを作ろうとしているなら、そういうところで手を抜かないで欲しかった。プロットや映像自体は結構よかったのでそれだけにもったいない。

May 14, 2006

セカンド・ショット

川島誠著、「セカンドショット」を読んだ。

電話がなっている。君からだ。だけど、ぼくは、受話器をとることができない。いまのぼくには、君と話をする資格なんてない。だって、ぼくは…。あわい初恋が衝撃的なラストを迎える幻の名作「電話がなっている」や、バスケ少年の中学最後の試合を爽快に描いた表題作、スペインを旅する青年の悲しみをつづった書き下ろし作品を含む、文庫オリジナル短篇集。少年という存在の気持ちよさも、やさしさと残酷さも、あまりにも繊細な心の痛みも、のぞきみえる官能すらも―思春期の少年がもつすべての素直な感情がちりばめられた、みずみずしいナイン・ストーリーズ。

secondshot.jpg以前「800」というこの著者の作品を読んで非常に良かったので、続いて彼の出している短編集に手を出してみた。これもまたいい作品集で、特に表題作の「セカンドショット」は秀逸。「電話がなっている」という作品は、最近ここまで後味の悪い話は無かった、というくらいインパクトがあった。星新一あたりがこういう作品を書いていてもそこまで思わなかったかもしれないけど、爽やかな中学生の物語集の中にこの作品が挟まれていたからその衝撃度が断然違ったものになっていた気がする。とにかく全体的にレベルの高い小説集だったように思う。中学時代にこれを読んでいたら、なんか下手に大きく影響を受けてしまっていたかもと思うと面白い。今読んでこそ面白い類の話だとは思うけどね。

ダ・ヴィンチ・コード

davincicode.jpg
ダン・ブラウン著、「ダ・ヴィンチ・コード」を読んだ。内容に関しては説明不要かな。ストーリの展開そのものは至って平凡なんだけど、随所にちりばめられている薀蓄が面白くて仕方がない。ラストも、僕は大好きでした。ジーンと来てしばらくその「事実」に思いを馳せて立ち尽くしてしまいました(立って読んでいた)。クリプテックスが欲しい。

May 12, 2006

RealCoffee the 舞城映画。

舞城王太郎関連でネットサーフしていたら、とんでもないものを発見した。

RealCoffee Entertainmentウェブサイト

「リアルコーヒー・エンターテイメントは、日本と日本人の文化発信促進のため、才能あるクリエイターを集め、育て、世界に通用する映像娯楽作品を作っていきます。どこよりも多く、どこよりも確かに。」 -Realcoffee宣言より-

realcoffee.JPGこれは、舞城王太郎擁するクリエイター団体「Realcoffee」が、世界に向けて発信する日本発の「本気のエンターテイメント」を企画し、それの実現のために製作会社やクリエイター達に呼びかけるという趣旨のサイト。舞城王太郎が、自作のプロットや絵コンテをウェブ上で企画書として発表し、これを面白いと思ったら映像化実現のために手伝ってくれ、という感じ。キーワードは「REALIZE THIS!!」。

溢れる創造力が小説だけに収まらないのか、すでに多くの作品のプロットがアップされている。時間が無い人も、イメージ映像は軽くて短いのでそれだけでも見ていって欲しい。
モーニング誌とのタイアップ企画、「リアルモーニングコーヒー」

個人的に、未来予見者友の会999シリーズフロートボーイチェリーパパがツボ。イメージ映像は予告編の形式を取っているのだがこれだけでかなり面白い。それがどんなストーリーに膨らむのか想像するだけで楽しい。(イメージ映像は音量がかなり出るので仕事中の人は注意!でも音は必須。)

さらに面白いのが、各プロットの「企画書」というドキュメント内で、REALCOFFEEが監督、脚本、出演者なんかに色々注文をつけているところ。「脚本:米ドラマ○○を独自の視点できっちり凌駕してください」とか「監督:野球を真面目に描くからこそこの映画は強度を持つんですよ?」とか「制作費:物語のスペクタルをリアルに描くために十分な額をご用意下さい」とか。自分達の打ち出すコンセプトこそ最高だという自信に満ちつつ、関わる全ての人にも最高のアウトプットとクオリティを求めるストイックさを感じさせる。

これだけ日本のアイデンティティの確立に熱く動いている人の存在を知るだけで刺激になる。本当のクリエイティビティがここで生まれそうな気にさせてくれる。勇気の出るウェブサイトだ。

May 11, 2006

世界は密室でできている

舞城王太郎著、「世界は密室でできている」を読んだ。

十五歳の僕と十四歳にして名探偵のルンババは、家も隣の親友同士。中三の修学旅行で東京へ行った僕らは、風変わりな姉妹と知り合った。僕らの冒険はそこから始まる。地元の高校に進学し大学受験―そんな十代の折々に待ち受ける密室殺人事件の数々に、ルンババと僕は立ち向かう。

sekaiwamissitsu.jpg舞城ワールド2作目。今回はエンターテイメントまっすぐの爽快な青春モノ。密室事件が何度か起こって名探偵ルンババ12が解決するんだけど、これはあくまで話のアクセントでしかない様子。随所に繰り広げられる主人公二人のばかばかしいやり取りとかが非常に笑える。個人的に赤ん坊の泣き声が「フギャーイギッヒ」なのがツボ。で、プロットの大部分を占める事件たちはあまりにも狂っていて読者にトリックを予想することはほぼ不可能に近い。で、著者もそれをわかっているのかほとんどひっぱらずにルンババ12にあっさりそれを解かせてサクサク話を進める。結局、全ては冒頭とエンディングに凝縮されている主人公二人の愛と友情の物語だった。旅行に行くバスの中で、同行した友人達がみんな寝てしまったのでその間に読んでいたのだが、クライマックスでは高速を走るバスの騒音とみんないびきの中、一人感動に鼻をすすっていた。

短時間で楽しめるエンターテイメントをお求めの方にはとってもお勧めです。

May 09, 2006

帰連

[]

大連に戻ってきました。

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