Log No. 344

富士登山

日本最高峰、富士に登った。奥出研の有志9人で。
皆登山は素人で、道具などをそろえる準備段階から全てが新鮮で楽しかった。

準備を完全に万端としてしまうと、なぜか物足りないような気がして、最低限危険な目に合わない、人に迷惑をかけない程度に「なめて」かかろうと思った。軽装備にはなったが、結局それなりに準備はよかったように思う。
キーアイテムは、zip lock詰めの着替え、取り外しが簡単なペットボトルホルダー、Timberlandのブーツ、アバクロのシャツ、Crunch、MAGLIGHT、そして焼酎「神の河」

この日は五合目まで車で乗り入れ、須走り口から頂上を目指した。
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須走り口はかなりゆっくり登山を楽しむ人向けのコースらしく、長い。けど7合目くらいまでは斜面もなだらかなので景色を楽しみながら体力的にも余裕を持って登れたのでいいコースだったと思う。

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後列左から、はぎぃ俊ペーターZukkyさとる、自分。
前列左から、はたやんあつのぶnorinoriおゆう

海抜3000メートルを超えたあたりから、軽い頭痛が始まる。ゆっくりと歩き、深く呼吸をしながら歩く。

下の写真で、対角線を結ぶように真ん中に斜めに走る線を境に明暗が分かれているが、これが富士の影だ。東京から観れば、夕陽が富士に沈もうとしているところだろう。
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霞がかかった山々を下に見下ろし、空の色が段々と変わっていく時間、目の前の斜面を除く全方向に、幽玄な風景が広がる。
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7合目を越えたあたりから、風がかなりの強さで吹きつけ、冬のような寒さになってくる。その日、薄手のTシャツの上にアバクロの厚手の長袖シャツを着ていたのだが、このアバクロが意外にも優秀で、風を全く通さなかった。周りの登山客の中にはスキー場のような格好をしてる人も見かけるなか、8合目で仮眠を取りに宿に入るまでこの2枚で行けた。

9時頃に8合目江戸屋に入る。この頃にはもう辺りは完全に闇に包まれて、ライトが無ければ一歩進むのにも勇気がいる。斜面に対して後を向くと、眼下には遥か地平線の向こうまで、どこかの町の明かりが見える。こんなに細かい夜景も初めてだった。休憩ポイントで空を見上げると、天の川が見えた。天の川を見たのは高校1年の頃のFrost Valley以来。

江戸屋ではぎゅうぎゅう詰めになってほとんど雑魚寝状態で仮眠。3−4時間眠れる時間はあったはずなのだが、全く眠れず。

午前2時過ぎに出発。ここからは斜面もいよいよ急で、風は厳しく進もうとする体を止められるほど。足を一歩踏み外せば死ねる岩場。ただ、ここまでは翌日が平日なこともありほとんど他の登山客を見ることがなかったのだが、ここから様々な登山口の利用者が合流するらしく、信じられないことに地上3千数百メートルの地で歩行者による渋滞に巻き込まれることになった。休みの日はもっと混むという。富士を眺めるなら分かるけど、てっぺんまで行ってみようという自分には酔狂とも思える発想にここまで多くの人が辿りついているという事実が驚きだった。
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仮眠を終えた頃には7合目くらいに感じていた頭痛も引いていたので、もう薄い空気に慣れてきて、大丈夫になったかな、と思ってペースを上げてしまったのが油断だった。一緒にハイペースで登った俊ぺーたーと共に高山病にかかる。激しい頭痛と吐き気。俊ペーターは吐いてしまったみたいだ。自分はそこまでは酷くなかったのだが、俊ペーターと一緒に休んだほうがいいかなと思い始めた時、あつのぶが頑張ってゆっくりでいいから進んだほうがいい、と励まされて、進むことにした。あそこで休んでいたら、俊ペーターと共にリタイアしていたかもしれない。俊ペーターは自分が進んだことで、あきらめずに進もうと思ってくれたらしく、少々休んだあとに気合で頂上まで登った。

高山病は予想していたよりも手ごわく、体力的にはメンバー中最も余裕がある部類に入るはずだったにも関わらず、山頂が酷く遠く感じた。
途中、強い風が吹くたびにヨット選手であるハギーが「今の風速18m」とか呟いているのがおかしくて気が紛れた。

やっと山頂につく頃には、寒さで辛いのか高山病が辛いのか分からなくなっていた。けど達成感の強さからか自然と気分はよくなり、400円の缶コーヒーを自販機で買って、清々しい気分でご来光の瞬間を待った。

そして朝日に照らされる。心なしかあったまる。
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この写真を撮ってもらうまでに、何組もの登山客の記念写真を撮って差し上げた。ご来光の感動に浸っていたかったが、寒さを紛らす何かも欲しかったので進んで撮影役を買って出た。
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いい天候に恵まれて本当に良かった。山の神様に感謝。公約の奉納演武もこそこそと打つ。そして持参した焼酎「神の河」を一人啜る。温まる。

その後、火口を見て周り、下山。

こんな道を、滑りながら下る。おり始めると頭痛も引き、気温も段々と上がっていったので元気が出てくる。けどこの頃からなぜか喉と胸が痛み出す。周りの人は誰もそんな症状出ていないので少し心配になった。翌日になってもこの痛みは引かず、よくよく症状なんかを考えるとどうも風邪みたいだった。山小屋でかかったかな。
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いくら滑っても滑っても、一向に下界の景色が近づかない。この4時間ばかりの下りのほうが精神的にきつかった。
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やっとの思いで出発地点だった五合目にたどり着き、行きにも通り過ぎた小さな社に無事に終えられたことの感謝と報告をし、山を降りた。

結局全員が完走し、誰も怪我することなく帰ることができた。しかも、全員で成し遂げた、という感慨が残る。道中普段のケチな彼らからは考えられないくらい、お互いの装備や食料を分け合って協力し、助け合って困難をクリアしてきたように思う。チームボンドを固めるのに、こういった経験というのはかなり有効だなと感じた。

しかし富士はもうしばらくはいいや、とそんな気持ち。

余談だけど、帰って一週間ほどした頃深夜の「プロジェクトX」の再放送で、富士山頂にレーダーの設置工事をした人達のドキュメントを放映していた。(しかも今知ったけどこれってプロジェクトX記念すべき第一回なんだね)
あんな極限の地に、機材を持って登る。しかも冬に!今のように登山のための整備も底までされていなかっただろうに、想像するだけでも凄まじい。簡単に死ねる。そして極限の頂上で何週間も激しい肉体労働をする。信じられない。富士の凄まじさを改めて感じさせるドキュメントでした。

下山すると、富士を見る事も辛かったという彼らほどではないだろうけど、やっぱり富士はしばらくいいや。

写真を分けてくれたはぎぃとさとる、どうもありがとう。

Posted by 344 at July 30, 2004 12:23 AM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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