Log No. 344

M's work at his university.

デザイン言語ワークショップJという授業で、オリジナルフォントの制作を行っている。

その制作過程の記録。

モチーフを探す。

もともと日本の伝統だとか風情だとか歴史だとかが好きなので、
漢字のようにメリハリのある格好のいいフォントを作ってやろうと考えていた。
しかし、少し調べるとその手のフォントは数期前の授業ですでに作られた方が
いたようなので、もう少し考えることにした。

もう一つの自分の好きな要素、「宗教」を加えてみる。

宗教っぽい文字、ということで最初に思い浮かんだのは、密教系の文字や
サンスクリット文字、もしくは梵字の類であった。

梵字の例
siddamsmp.gif

梵字は記号として眺めていても格好がいい。
しかしリサーチを続けていると、思わぬ文字に出会う。

日本の「神代文字」である。神道でいう初代神武天皇以前の神の世の文字。

神代文字の一種である出雲文字
izumoS.jpg

神代文字とは、漢字渡来以前に日本に元々から存在している超古代文字のことらしい。
漢字以前、しかもどうやら日本書紀や古事記に記されているような神話の時代から
伝わる文字だとか。これは、設定を聞くだけでいかにもロマンを感じさせる。これは
カッコいい題材になるぞ、と思い調べを進めていくと、どうやらことはそう単純な話では
なかったようだった。なんでも、現在の国語学の世界では「漢字以前に日本人は
文字を持たなかったとされており、しかも神代文字は神道の信者らがほんの数百年前
に偽造したという論拠が数多くある」と、偽モノであるという結論がだされている。
これを読んで、逆にこの怪しさがいいな、と梵字よりもフォントにするには味気ない
形をしているが、制作するオリジナルフォントのモチーフに決定した。

さて、神代文字と言っても数十種類ある。どの文字にしようかと文献を漁っていると
なんとも興味深い文献にあたった。「ホツマツタヱを読み解く」という本だが、これに
よると「神代文字とホツマ文字とは決定的に違う。前者は数百年前の神道の
関係者が自らの宗教の正当性のために偽造し、神社などのもっともな場所に
隠したものを後の考古学者が発見した、中身のない真の偽物だが、後者は
『ホツマツタヱ』という古事記以前の古文書に使われている文字で、その内容は
11万字に及ぶ五七調の大叙事詩で、優れた詩的感覚と漢字文書にはない
歴史記述が多く見られる正当な文字である」というものだった。これには、まだ
決定的と言える否定論が出ていないようで、もしかしたら、という気にさせる
一冊だった。一学生で素人である自分にこの真偽を議論するつもりは毛頭
ないが、「ホツマツタヱ」にある五七調の大和言葉の美しさと、語られている
壮大な日本立国のストーリーに多いに感動を覚えたので、この書物とコトバには
それ自体に充分な魅力があるな、と感じた。

よって、「ホツマ文字」を今回のプロジェクトのモチーフに決定した。

「ホツマツタヱ」に使用されている「ホツマ文字」
H0.jpg

ホツマ文字は、幾何学的な要素をあわせた文様をしており、母音と子音の要素を合体させて
音を作る。ハングル文字のような発想である。

ホツマの英語版を作るのは至難の業になりそうだが、古代日本の神秘的な感じが伝わる
作品にしていきたい。

Posted by miyoshi at October 29, 2003 10:11 PM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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