貫井徳郎著、「慟哭」を読んだ。成田空港で表紙買いした。
そのちょっと前に北村薫の作品を読んでいて、その人が帯の紹介文を書いてていて目にとまった、というだけの理由だけど (勘違い。僕が読んだのは「高村薫」さんの作品だった。勘違いしたまま購入したのですが、とにかくこういう経緯)。連続殺人事件を追う刑事と、連続殺人犯の対決を描く本格ミステリー長編。記者会見での捜査情報公開に対する葛藤、エリート刑事の孤独とプレッシャー、仕事により崩壊する家庭、そして新興宗教。面白いテーマが沢山ちりばめられているが、中でも新鮮だったのが、マスコミと警察の情報公開に関わる問題の難しさの描写が細かかったことだ。やっぱり警察ってのは大変な職業だと改めて思い直せます。帯にも書いてあるが、まさに「仰天」のラストは圧巻でした。文章が渋くてなかなか読み応えがあった。ホントに、たった一つの「しかけ」だけの小説で、それがちょっと物足りないけど、そのワンアイディアを上手く活かしきった良作。
これは、友人等に勧める際にも、絶対に「ネタバレ厳禁」の類の本だ。トリックをほのめかすだけでもいけない。しかしこの作品、驚いたことに、amazon.co.jp他多数のオンライン書店の内容紹介で、その作中唯一にして最大の「しかけ」とも言うべきトリックが、完全にネタバレされてしまっている。「MARC」データベースとやらからの引用らしいが、これは酷い。はっきり言ってこの400ページを超えるテキスト量は、最後にその事実が読者に明らかにされ、思わず空を見上げてしまうほどに驚かすためだけの材料と言っても過言ではないはず。それを読む前に明かしてしまったら、驚かすためのような小説に驚けなくなるので、はっきり言って400ページ読むのが無駄になる。ミステリーというジャンルにおいて、あまりにも致命的なミスである。
アマゾンと言えば世界最大級のオンラインショップだ。その影響力を考えると、著者への損害は甚大だろう。これだけの驚きをもたらせる文章力と構成力を持っているのに、だいなしだ。なにより、この作品を楽しみに購入ページを訪れた読者に対してあまりにも酷い仕打ち。アマゾンへ指摘メールを送ってみた。
Posted by 344 at November 30, 2005 07:49 PM | コメント (4) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit
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