Log No. 344

上海ベイビー

衛慧(Wei Hui)著、「上海ベイビー」(原題:上海宝貝」)を読んだ。中国では発禁処分になると有名になるとかで、この作品もおそらくそれが知名度を上げた原動力だったんだろうけど、中国人の知り合いも大抵は知っている有名な作品のようだ。

クールな新人作家、衛慧が発表した本書は中国本土ですでに大ブレイク中の小説。不機嫌で短気で驚くほどみだらな筆致により、セックスにおぼれながら愛を模索する1人の美しい女流作家を描いた新感覚の作品で、大胆な性描写のため中国政府から発禁処分を受けたいわくつきの話題作だ。そのきわどさはヘンリー・ミラーの『Tropic of Cancer』(邦題『北回帰線』)に引けをとらず、衝撃度は『Trainspotting』(邦題『トレインスポッティング』)に負けていない。「魔都」上海の先端風俗の中、どんどん過激な情事にはまっていく主人公が飛びはね、わめき、手加減なしに全力疾走する姿を描いた本書は、アジアにおける新世代の台頭を表現した作品でもある。-amazon.co.jpの商品説明より抜粋

shanghaibaobei.jpgこの紹介文はちょっと閉口ものだけど、読んでみると意外に引き込まれる。ストーリーはほぼ無いに等しい、「過剰に自己投影されている」とされる著者の創作にあたる苦悩を描いた私小説的内容で、面白いことは無いはずなんだけど、とにかく文章がかなり新鮮。日本人にはまず思いつけないだろう表現がいたるところにあって、こんな表現があるんだと感心しっぱなしだった。本当に綺麗な描写が盛りだくさんで、たまに狙いすぎな表現が鼻につくけど(特にラスト)、全体的にかなり文章を味わう感性を刺激される。外国語作品の日本語訳なのに、日本語の可能性を広げられた気分だった。(今ちょっと本が手元にないので引用できないのが残念)

主人公は自己愛の強いかなり不安定な人物で、共感するのは男の僕にはかなり難しいんだけども、これは性差コンシャスな女性に物凄く受けそうな気がする。友人の何人かにはかなり強くお勧めしたい。スタイリッシュな文体もうけそうだ。享楽主義な人にもそれを軽蔑する人にもお勧めだと思います。

Posted by 344 at July 09, 2006 12:53 AM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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