Log No. 344

李歐

高村薫著、「李歐」を読んだ。

惚れたって言えよ―。美貌の殺し屋は言った。その名は李欧。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。しかし、二人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。(「BOOK」データベースより)
liou.jpg男同士の運命の出会いを丁寧に描いた良作。これは面白い。もはや友情と呼べるレベルではないお互いへの執着。かといって性愛があるわけではないのだが、一つの約束のためにお互いを想い続ける様はやはり独特の妖しさがある。美しく破天荒で全てを思うがままに可能にする李歐に対して、主人公の吉田はあまりにも平凡な男。物語は彼の視点でのみ語られるので、プロットはいたって退屈なものだ。李歐の派手な活躍は、噂話で聞こえてくるだけなのだ。だけど、そんな吉田に、李歐ほどの男が固執しているということが、読み手にも変な高揚感を与えるんだと思う。クライマックス、約束の地で運命がもう一度出会うシーンは壮観。

ちなみにこの高村薫という作家、ちょっと前に少し話題になった女流作家なのだが、たびたび文庫化する際に大幅な改訂をするらしい。この作品も、「わが手に拳銃を」という作品を下書きに、ほぼ別の作品と言っていいほど書き直し、事実タイトルも変えて別の作品として出版した、というものらしい。読んだ人に言わせると、「わが手に拳銃を」を読んでからのほうが「李歐」を楽しめた、というからちょっと残念。他にも直木賞受賞作品さえも大幅に改訂して出版するなど、かなりのこだわりへの徹底振りを見せている。そういうスタンスは、なかなか好感がもてる。

Posted by 344 at December 01, 2005 03:07 PM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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