Log No. 344

オーデュボンの祈り

伊坂幸太郎著、「オーデュボンの祈り」を読んだ。

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。 -「BOOK」データベースより

audubon.jpg奇抜な作品だ。リアリティの無い登場人物達もそうだが、連続殺人事件の最初の犠牲者が「カカシ」ってのがなんとも。しかもこのカカシ、面白いことに、それまでは島の「名探偵役」だった人物(?)。この島で起きる事件は、すべてこのカカシに聞けば解決してもらえていた。ミステリーにおける最重要人物である「名探偵」たるカカシが、物語開始そうそうに舞台から姿を消してしまう、という半ばアンチミステリーの様相を呈している。作中に、「名探偵は誰のために存在するか知ってる?読者のためよ」っていうような台詞も登場する。そういった物語の中の「機能」としての「名探偵」がその役割に気づいてしまったら、果たしてどう思うだろうか、というアンチテーゼも提示しているような、そんな作品。落ちがちょっとありがちで、全体的に凄く面白い、というわけではないんだけど、ちょっと懐かしい勧善懲悪なノリのようなものもあって読んで損はしなかった。

あと、作中に出てくる「オーデュボン」という人物名だが、これはアメリカに実在した鳥学者らしく、彼が愛したという「リョコウバト」という鳩の存在に驚いた。20世紀初頭に人間が乱獲により絶滅させてしまった鳥らしいのだが、超大群で飛ぶらしく、その数は数億とも数十億とも言われていて(ちょっとうそ臭いけど)、リョコウバトが頭上を横断すると辺りがしばらく暗くなったほど、と言われていたそうだ。そんな壮観な光景、一度でいいから、見てみたかった。

wikipedia-リョコウバト

Posted by 344 at December 04, 2005 01:21 PM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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