島本理生著、「ナラタージュ」を読んだ。
壊れるまでに張りつめた気持ち。そらすこともできない二十歳の恋。
大学二年の春、片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。泉はときめくと同時に、卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す。今、最も注目を集めている野間文芸新人賞作家・初の書き下ろし長編。-amazon.co.jpから引用-

読み出しは、ははぁー、淡々とした綺麗な文章を書くねぇ、と思った。(著者83年生まれ)
ちょっと読み進めたあたりでは、会話が心なしかぎこちないし、文章もあんま上手くねぇな、と思った。
半分以上過ぎたあたりでは、凝った構成してるなぁ、と感心。
終盤に差し掛かると、抜群に文章の切れが冴えてるように思えてくる。
クライマックスでは、せ、切ねぇーーっ!!と悶えた。
最後の1ページで、あぁ・・もう終わりかぁ、そっかそっかぁ、と感慨にふけっていた。
で、ラスト一行で、泣いてしまいました。
思い返してみれば細部の描写が生き生きと甦って来る。力のある作品だった。心が疲れてる時は恋愛小説なんか気軽で良い、と思っていたのだけど、これは読後感の重さが、あんまり気軽な作品ではなかった。もちろんこれは褒め言葉。ここまで読書自体の楽しみ以外の感情を揺さぶられたのは久しぶり。おそらく、特別な人と一人でも出会ったことのある人なら、まともにダメージをくらって暫く立てなくなるんだろう。過去に特別と思える大切な出会いを経験したことのある人全てにお勧めの良作ですね。
島本理生。以前高校生で芥川賞にノミネートされていて話題になっていたので名前だけは知っていた。その後ももう一度ノミネートはされていたみたいだけど受賞は逃しているみたいだ。まぁでももうこの人が力のある作家だということは分かったので、芥川賞作家にならなくとも、彼女の他の作品は手にとっていくでしょう。
Posted by 344 at January 16, 2006 11:54 PM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit
この記事に対するコメント