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Amebic

amebic.jpg金原ひとみ著、「Amebic」を読んだ。ストーリーはわりとどうでもいい作品なのであらすじは割愛。デビュー作で芥川賞を取った作家の第3作目。どこかで、小説家の真価は3作目で問われる、と読んだことがある。デビュー作は原体験やそれまでの貯金的なものを全て吐き出すようなもので、2作目は「1作目とは違う挑戦作」を書くことで、その人の残りのセンスが試される。そうなると、大抵の場合そこまででネタが切れ、3作目こそ作家として初めてまっさらな実力が試される、というような話だったと思う。金原氏の、その3作目。結構期待して読んだ。読み終わった後に、著者のインタビュー等を読んだが、本人曰く、「完璧だ、奇跡だ」だそうだ。ストーリー的にはなんてことないので評判はイマイチだが、個人的には共感、というか、言いたいことのなんとなく分かるような分かりたいような、そんな印象の作品なので、気に入った。特に、「皮膚も触覚も脳も思考も、全て分裂して自分自身が疎外され、隔離され、断絶されている感覚って、分からない?」 この感覚が非常によく分かる。説明しづらいが、似たような感覚に襲われる(まさに襲われるような感覚)ことが、稀にだけど確かにある。主人公は、なかなかいないようでよくいる、眺めている分には小気味いいほどの性格の悪さなんだけども、インタビューを読んで知ったところ、ほとんど著者本人の投影のような主人公だそうなので苦笑してしまった(作中の主人公はよくモデルに間違えられたりもする)。

また、珍しいな、と思ったのが、この小説、やたらと排泄のシーンが目立つことだ。小便や大便の用をトイレで済ますシーンが度々描かれる。生活を描く小説でも、なかなか描かれないシーン、だけども必ずあるはずのシーンなので、おっ、と思った。

短くて読みやすいけど、読了の満足感が得られるかは微妙なのでお勧め度としては「可もなく不可もなく」というところでしょうか。

Posted by 344 at March 15, 2006 12:21 PM | コメント (0) | トラックバック (1) | Clip!! | Edit

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» AMEBICで爆笑

とある後輩は、金原ひとみを爆笑しながら読むんだそうな。 「AMEBIC」に至ってはあるあるネタ満載で抱腹絶倒らしい。 彼女の作品はむしろそういった「あるある」か...
Tracked by: こぶろぐ at March 16, 2006 03:15 AM


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