Log No. 344

パレード

吉田修一著、「パレード」を読んだ。

都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。-「BOOK」データベースより-

parade.jpg以前読んだ「パークライフ」が良かったので、彼の別の作品を手に取ってみた。彼の文体は何故か僕にとってとっても読みやすい。文章を読む、ということはそれなりに能動的な行動なので、作品によってはかなり疲れたりするし、そうでなくとも一定の体力というか、脳力というか、とにかく労力を要する。けど、彼の作品はほぼノーストレスで、スっと入ってくる。このパレードも、導入はごく普通の大学生の日常をリアルに描いていて、その親近感からかやはり非常に読みやすい。物語は章を追うごとに、5人暮らしする男女5人のそれぞれへ視点が移っていく。視点は移るが、時間軸が一つまっすぐに続いているので、前章の続きを別の人物の視点で語っていく、という構成。そして、そうやって5人全員の主観が語られていくなかで、その人間関係の微妙さと、絶妙な距離感を浮き彫りにしていくのが実に巧い。5人はそれぞれどこか病んでいるんだけども、本人達はそれに気付かない、というかその苦悩を無視するかのようでいる。描写は極めてリアルであるけども、登場人物はどこか異常で、一見非日常的。でも、現実の人間達も、こうやって苦悩や病理と折り合って生きているのかもしれないと思えてくる、そういうリアルさがこの小説にはある。読んでいる途中は、なかなかにほのぼのとした感覚で読んでいたけども、読了後に残るのは、当初は予想もし得なかったある種の不快感と、恐ろしさ。全く良く出来た小説だと思った。

Posted by 344 at February 14, 2006 11:28 AM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

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