Log No. 344

コンセント

田口ランディ著、「コンセント」を読んだ。

ある日、アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いで以来、朝倉ユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになった。兄はなぜ引きこもり、生きることをやめたのか。そして自分は狂ってしまったのか。悩んだ末に、ユキはかつての指導教授であるカウンセラーのもとを訪ねるが…。彗星のごとく出現し、各界に衝撃を与えた小説デビュー作。 -「BOOK」データベースより-
concent.jpg医学生の友人との会話中だったか、どこかの本だったか、病気というのは「普通と違う状態」ということで悪いとは限らないとか、「脈絡なく意味不明なことを言ったりやったりする人を狂っていると言うけど、それはその人の思考経路や脈絡を捉えることができていないだけで、本当はその人にはその人の論理や脈絡がある」という話を聞いたことがある。この小説は、そういう一見精神を病んでいたと思っていた人の謎を解き明かしながら、さらに一歩進んでシャーマニズムというスピリチュアルな世界にまでつっこんだ挑戦的な作品だ。作中に紹介されていたが、WHOにおける健康の定義によっても「スピリチュアルに健康であること」が明記されているというのは興味深い
僕は元々オカルト的な話が好きじゃない。超常的なことを信じないというのではなく、僕自身が反証しきれないのでどちらかというと信じているほうだが、相手が反証できないことにつけこみ相手を不安に陥れ、それによって自分が優位に立とうするという心理を、オカルトで生きている人やそれを日常的に人に話す人たちに感じてしまうからだ。あらゆるオカルト話にそう感じるわけではないが、そういう用法が多いと感じている。この小説は、そういった嫌悪感を抱かせない「オカルト」な話だった。この作品でいう超常展開とは、本物のシャーマンの存在と、狂ってしまうということはシャーマンに近づく過程であるということ。実際、精神科医が何年もかけて治療にあたる心の病をシャーマンというか、霊能者というか、そう自称する人々が10分とかで癒してしまう例はいくらでもあるそうだ。元々「疑似科学」自体には非常にロマンを掻き立てられるので、本当は大好きなのかもしれない、オカルト。

また、この作品を受けてのチェインリーディングとして、真木悠介(見田宗介)著「気流の鳴る音」を読むことを自分に課すことにした。

・「人間の体って、死なないんですよ。・・・人間の体って、固体として変化し続けるんです。ほっておけば、硬直して血が流れ出して、腐って、蛆がわいて、どんどん変化していく。そして、微生物に分解され自然へと還っていく。放置された死体は生きて、変化していくんです・・・」

Posted by 344 at February 26, 2006 10:07 PM | コメント (0) | トラックバック (0) | Clip!! | Edit

この記事に対するコメント


コメントを投稿する










名前やメールアドレスを保存しますか?








この記事のトラックバックURL


この記事に対するトラックバック



Made with dreamweaverMade with fireworksPowered by Movable Type 2.661Powered by Wandering Wind