Log No. 344

黄昏の岸、暁の天

小野不由美著、「黄昏の岸、暁の天(そら)」を読んだ。

登極から半年、疾風の勢いで戴国を整える泰王驍宗は、反乱鎮圧に赴き、未だ戻らず。そして、弑逆の知らせに衝撃を受けた台輔泰麒は、忽然と姿を消した!虚海のなかに孤立し、冬には極寒の地となる戴はいま、王と麒麟を失くし、災厄と妖魔が蹂躙する処。人は身も心も凍てついていく。もはや、自らを救うことも叶わぬ国と民―。将軍李斎は景王陽子に会うため、天を翔る!待望のシリーズ、満を持して登場。-「BOOK」データベースより

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NHKでアニメ化されているものを見て世界観に惹かれ、何人もの読書仲間に原作を読むことを勧められてようやく手にとった一冊。ファンタジーが今年のマイブームとなったきっかけでもあります。

東洋中世風ファンタジー、十二国記。現代の東京からこの異世界に迷い込んだ女子高生が、その世界の不思議な条理のために、王にされてしまうというお話のシリーズ。よく練られた世界観の設定があって、それを軸に様々な物語が構築されていく。所謂設定モノ、というやつだろう。

そして所謂ティーン向け小説。難しい言葉沢山出てくるけども、会話のテンポや展開なんかはマンガ的です。マンガが大好きな僕としては、こういうジャンルも割りとイケるようです。

・国の数は十二。
・それぞれの国には一匹ずつ麒麟が産まれ、その麒麟が天の意思を代行して王を選ぶ。
・王に選ばれた人間は永遠の寿命を得るが、王が道を失う(悪政を敷く)と麒麟が病気になり、麒麟が死ぬと王も死ぬ。
・王を失った国は天変地異と魔物で溢れ、国土は荒れる。
・次の麒麟が生まれ、その麒麟が王を見つけるまでは、誰も王として立つことはできない。
・十二の国は互いの国を侵攻してはならず、国際戦争は起こらない。
・王が善く国を治める限り、その国の繁栄は何百年でも続く。
・人は、それぞれの町に一本ずつ生えている特別な木に実る、木の実から産まれる。
・人間の寿命は、普通の世界と同じ限られたものだが、政府の高官になったり、仙人に仕える身になると、「仙籍」と呼ばれる戸籍に登録され、やはり不老となる。
・この「仙籍」は戸籍のようなものなので、除籍すれば普通の人間に戻る。

などなど、細かい設定には列挙の暇がない。これだけ細かい設定を世界に与えて、十二の国に様々な事情を持たせてあるのだから、いくらでも物語が書けそうだ。だけども、著者の小野不由美は、そのごく一部の物語を書いてしまって力尽きたかのように、シリーズを物語の途中で止めてしまっているようだ。この世界観はたまらなく魅力的なだけに本当に惜しい。

この「黄昏の岸、暁の天」も、壮大な物語のワンシーンでしかないのだが、この物語で触れられた複線も回収される見通しが立っていなさそうだ。物語としては完結しているのだけども、やはりここで語られていない真実がどうしても気になってしまうのが読者の心情というものでしょう・・・

本作単体だけで評価してもあまり意味ないとは思うけど、このタイトルだけに限って言えば、あまり優れた一作とは思えなかった。何しろ導入から物語後半まで、ほとんど話が進まない。主人公は同じような葛藤と回想を繰り返すだけで、事態は終盤まで何も進展しない。重要人物であるはずの麒麟も、その麒麟の物語だけで別のタイトルで描かれているからか、本作ではほとんど語られず、この一作を読んだだけではまず麒麟さんに感情移入ができない。そしてとにかく盛り上がりどころが無かった。いくつかあったとすれば、たまに目に付く登場人物によるながーい「お説教」くらい。あれを小気味いい啖呵と捉えるか説教と捉えるかが感性の別れ目なんだろうか・・・。物語や話の構成はよーく練られているんだけども、どうにも人間同士のやり取り、つまりドラマ部分に幼稚な雰囲気を感じてしまうのが気になって仕方なかった。冒頭にも書いたけど、「所謂ティーン向け」ということをやたら意識させられる小説だった。

なんか凄くけなしているような文章になってしまったけど、全体のお話としてはとても好きなんです、十二国記。いずれにしろやっぱりこの作品は「十二国記」という大きな作品の一章として楽しむべきだと思いました。だとしたらやっぱりこの「続き」もどうしても必要だと思うんだけどね・・・

Posted by 344 at August 18, 2006 04:23 PM | コメント (0) | トラックバック (2) | Clip!! | Edit

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