フーベルト・ザウパー監督作品、「ダーウィンの悪夢」を観た。
アフリカのヴィクトリア湖。かつてそこでは多様な生物が棲む「生態系の宝庫」だった。しかし半世紀ほど前に放流された外来魚ナイルパーチが、他の魚を駆逐していく。それと同時に湖畔では、ナイルパーチの一大漁業産業が発展。加工された魚は、毎日のように飛行機でヨーロッパへ運ばれていく。それは湖畔に住む人々に、大きな影響を与え始める…。-goo映画の解説文より-

印象的なのは、さんざん町の惨状(弓矢で魚の研究所を警護する男、売春によってエイズが蔓延し若くして皆死んでいく村、蛆のわいた魚のアラしか食べることができない近隣住民)を見せたあとに、「ビジネスは上手くいっています(笑顔)」という国外のビジネスマン達の台詞。
気になる点も多かった。やたら、情報が不確かなのだ。「そういううわさを聞いた」「~~と言ってるのをテレビで見た」「~~と新聞に書かれていた」なんてのをインタビューの結果として流す。観ている側としては、それが正しいのかどうかは分からないけども、それを事実として受け取るしかない。しかし重大な事実にも関わらず、それが正しいのかの検証はこの作品では省略されているために、なんだかもやもやしたものが鑑賞後に残るのだ。おそらく真実に近いものを見せているのだろうけども、この作品を根拠に誰かを糾弾することは難しい。もしかしたらそれを狙ったのかもしれないけど。(告発モノだとしたら危険すぎる内容なのかもしれない、と)
ナイルパーチという魚について少し検索してみた。日本では「白すずき」という名前でスーパーに並ぶらしい。または単に「白身魚」と。マックのフィレオフィッシュなどもこのナイルパーチを多く使っているとか。
よく、ブランドモノの模造品やPCソフトの海賊版、売春などにお金を出すことは、そのまま組織犯罪を資金的に援助することだ、だからそれらを買った人々も同罪だ、という論がある。これは真実だと思う。では、マックでフィレオフィッシュを食べることはどうなのか。スーパーで晩御飯のおかずを買うときに、ちょっと値がはる出所が確かな食品と、そんなに味は変わらないけど安い「白身魚」。僕なら後者を買ってしまいそうだ。そして知らずにアフリカの売春、エイズ蔓延、武器密輸に加担する。そういうことなんだろうか。そういうことなんだと思う。どこかで黒くなったはずの鎖は、僕らの手元に届く頃には再び白く塗られている。
生活の中に、どれだけこのようなことが溢れているんだろうか。「安い」という価値は大抵こういった構造の上に成り立ってる気になってきてしまう。今更なのかも知れないけど、きっと僕らの生活はもうこういう黒い鎖から逃れられないところにいるみたいだ。誰かを食い物にしながら生きる、など自然の法則といえばそれまでだが、それに無自覚ではいたくないなと思う。世界の仕組みとして組み込まれているほどの悪(僕はやはり悪だと思う)のサイズに、立ち向かう術を今は思いつけないのだけど、せめて無自覚ではいたくないと思う。
追記:あとでさらに調べたところ、マックのフィレオフィッシュがナイルパーチ使ってるかは確実な情報とは言えないので、言いたいことのモデルとして読んでください。多くのレストランで使われていることは確かなようです。
Posted by 344 at January 19, 2007 08:36 PM | コメント (0) | トラックバック (9) | Clip!! | Edit
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